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一次元転生  作者: K省略
第二章 聖戦編
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第二章 2話 円陣

「はい、ついたわよぉ」


 新王ローズが、到着を告げる。

 馬車を降りると、そこはだだっ広い草原。気になるような障害物は特にない。

 時刻としては恐らく午後三時ぐらいだろうか。かなり長い間馬車に揺られていた。

 全員がこの地に揃い、あたりを見回す。


 ──そのとき、だった。

 シャボン玉の膜のようなものが、空を覆っていく。


「あらぁ。“向こう”はもう揃ってるのねぇ」

 ローズがそう漏らす。向こう、というのはきっと今回の敵──眷属のことだろう。


「──お!?」

 ショウの立っていたあたりの地面が、もこっと盛り上がる。

 現れたるは、大きな結晶体。


「な、なにこれ」

 ……なにこれ、と聞いたのはこの一連の流れ。

 なぜ結界のようなものが自分たちを囲い、謎の物体が現れたのか。


「あー……今回はこのパターンねぇ」

「この、パターン?」


「えーっとね。両陣営にこの大きな結晶が一つずつ配置されてるわぁ。君たち使徒陣営は、眷属陣営の結晶を壊せば、今回の『聖戦』は勝利ね。逆もまた叱り、先に壊されれば君たちの負けよぉ」


 いわゆる、フラッグ戦と言うやつだろう。

 でも分からないのはそこじゃない。もっと、こう……


【なんか、ゲームみたいだね】

「そう、なんでそんなルールみたいなのがあるんだ?」


 もっと力と力のぶつかり合いというか、単純なモノをイメージしていた。

 どうしてこんなゲームチックな戦いなのだろうか。


「ん? 知らないわよぉ。そんなの神に聞いてみないと。まぁもう死んじゃったけど」

「……か、み?」

「かつて神が神秘のエネルギーにより創った闘争系統──『戦場』だ」


 レーグが空を仰ぐ。「美しいだろう?」とつぶやいて続ける。


「この空間では『闘い』を飽くまで楽しむことができるのだ。ほうら、あの神秘的なエネルギーの障壁をみよ。あれによって邪魔者が入ってくるものも、臆病者が逃げることもない。なんと素晴らしいッ!」

 ゾクリと、奇妙なものが背筋を走った。

 レーグの言動に、なにか恐ろしいものを感じてしまった。


「──さぁ、『聖戦』はもう始まっている。作戦会議をしようではないか」


 近くで太鼓がなったと錯覚してしまうほど、低い声が腹まで響いた。

 朝のようなしょぼくれたレーグの姿はもうここにはない。

 使徒陣営についた、ただの魔王。


 魔王第二柱──『灰塵』のレーグだ。


*****************


「──うむ。まぁ作戦といっても難しいことはしない」


 レーグはそう言った。本当かよと思ったが、その作戦は本当に簡単で、ショウにも理解できた。

 どうやらこのエネルギーの障壁は大きな球状になっているらしい。

 そして、中心から対称的な位置に各陣営の結晶が配置されている。

 こちらの作戦はいたって単純で、円の中心を突っ切るグループ、右からグループ、左からグループ、守備グループに分けようというもの。

 相手の人数が分からない以上、なるべく対応しやすいようにこちらも散らばろうという意識からこのような役割となった。


 そしてショウは──


「俺、真ん中、走る」

 一直線に、敵陣へと向かう役。

 レーグは右回り、ローリィは左回り、ジンとディオニスは結晶の防衛といったように割り振られた。


「──それでは、行こうか」

 レーグがすぐに出発しようとする。だが、ショウは一旦それを「あ、待って」と止めて──


「──その前に、円陣組もうぜ」

「えんじん?」


 ローリィが聞きなれない単語に首をかしげる。


「──肩を組み円になって、士気を高める儀式であろう?」

 説明は、レーグがした。


「ああ、それ。やろうぜ」

 そうショウが言ったのは、もちろん闘いの前にみんなの顔を見ておきたいというのもあったけれど、本音は……怖かったから。


 闘うのは、怖い。

 ──これまでの聖戦で、使徒は眷属に1勝4敗という結果だ。そして、今ショウとジン以外の使徒がいないということは、聖戦でもう命を亡くしているということなのだろう。

 自分も先人たちのようになるかもしれない。それは、死ぬのはもう、嫌だ。

 だから闘いの前に、みんなに励ましてほしいと思った。その恐怖が、少しでも和らぐように。……戦闘前からこんな調子でいいのか。いや、良くないのは分かっている。けれど、一歩踏み出す勇気が欲しかった。


「うむ。やろうか」

 レーグが承諾する。正直意外だったので、ショウは驚いた。


「吾輩も円陣は嫌いじゃない」

 黒い鎧はガシャンと音を立て、腕を広げる。右腕は肌が露出しているのが、少し面白い。


「では、オレも失礼します」

 ディオニスも顔色を変えることなく、レーグの横についた。


 ジンも今は人型で、ディオニスに次いで肩を組む。

 背の高さが違うのでローリィは無理に背伸びをして、ジンの背に手を回す。ジンはローリィに届くように肩を下に下げた。

 そして、言い出しっぺの棒人間も、そこに入る。この五人で、円は完成する。

 それぞれ身長がバラバラなため綺麗な円とは言えないけれど、顔はよく見える。


 ……まだこの世界に来て実質二日。正直、この魔王たちのことは分からないことの方が多い。だから、これから知っていきたい。これから知っていくために、今日を乗り越えよう。


 震える手のひらを、レーグの背において落ち着かせる。

 スゥと一息吸って、声を張る。


「──ディオニスッッッ!!!」


「んぁ!? なんだァ!?」


 まさか自分に来るとは思ってはなかったディオニスはわかりやすく取り乱している。


「今日の夜ご飯はなんだ?」

「は、ハンバーグ」

「……よし」


 一人、一人、全員の顔を見て。


「今夜、五人で一緒に食べようぜ」

 どうしてか、棒人間がにっこり笑っているのが分かる。


「んじゃ、いくぞ……」

 もう一度、息を大きく吸って──



「「「絶対に勝つぞぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」



 世界を揺らすほどの声量で、吠えた。



 相手がどれほど強かろうが関係ない。

 今回は、使徒が勝つだけだ。


*****************


 そこは、使徒の結晶の、中心を挟んで反対側。

 もう一つの、眷属陣営の結晶。

 

 こちらはご丁寧に、結晶のあたりに簡易的なテントを張っている。内部にはテーブルと、作戦計画に使用されたであろう地図。

 そして、六つの人影。

 ……話し声が聞こえる。


「うん! 作戦は以上だ!!」

 はきはきとした清らかな声が、テントによく響く。


「左右はただ防衛するだけでいい。私と、この二人が真ん中を進み、結晶を破壊する!」

「単純明快だねー」


そこにあるのは、慢心ではなく、自信。本来ならば、五人で真ん中から攻めれば問題はない。もう使徒は人数が少ないはずだ。簡単に制圧できるだろう。

 だが、そうはしない。決して油断はしない。

 たとえ単純な作戦であっても、堅実に。


「さあ、恐れる必要はない。いつも通りいこう!」


 いつも通りでいい。

 なぜなら、眷属には、彼女がいるから。


 

 ──『月光』のライダが。


ほんまにごめんなさい。

投稿頻度の加速度が負。最近少し忙しくて……

応援もいただいてるので頑張らなくては!

二日に一回投稿を心掛けてはいるので、引き続き読んで頂けたら幸いです。

遅れて申し訳ない!

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