第一章 1.5話 おちゃめ天使
二人が去った直後の、天界のお話。
「いや……しかし天使様。かなり大胆なことをなされましたね」
「何がよ?」
小屋の中、テーブルの上にはティーカップが一つ。そして、紅茶を用意する女と、椅子に座る女が一人ずつ。
「いや……あの男に与えた力のことです」
「ん……あぁ。あの無礼な奴でしょ。ふふ、我ながらいいアイデアだわ。あんな奴には、『失敗作』がお似合いよ」
そう言って、天使は今入れたばかりの紅茶を一口含む。
しかしサジャは首を捻って──
「ん? いや……天使様はついに勝ちにいかれたんですよね」
「え? ……あぁ。もちろん負けるつもりはないわ。確かに、無礼者には『失敗作』を与えたけど、もう一人は過去最高レベルにまで仕上げたもの」
いまいち話がかみ合わない。サジャが「んん?」とまた、疑問に喉を鳴らす。
「ちょっと待ってください! 天使様が無礼者に持たせたのは『華』ですよね?」
「あははっ……サジャったら馬鹿ねぇ。あたしの『エネルギー』をあいつに渡すなんて、そんなことするわけないじゃない」
ここで、賢いサジャは恐ろしい事実に気づき、青ざめ震える。
確かに、男が持って行ったのは『華』だった。天使の神々しきあの御力を、サジャは見間違えるはずがない。
「て、てて、天使様……あの男が持って行ったのは『華』ですよ。分かってますよ、ね?」
天使は、カップを口のそばまで近づけて──
「分かってるわよそんなこと。あいつに持たせたのが『華』なん、て、こと」
自分で言ってようやく気付いたのか、天使の手からカップが崩れ落ちる。
しかし、天使が丸い目で見ているのは、青ざめたサジャ。
熱いはずの紅茶がきれいな足にかかるが、そんなことはどうでもいい。天使の口がわなわなと震えて、ようやく出てきたのは──
「はぇえ?」
──誰かを貶めるというのは、それ相応の危険が伴うものである──
おちゃめさんだねぇ
『エネルギー』『器』等の用語は後々でてくるのでご心配なく!