第一章 24話 俺が止める
ひと段落ついて、ジンはあることを思い出す。
「そう言えばショウ帰ってこないね」
「あ、たしかにそうだな」
「ショウのことだから、たぶんどこかで道草食ってるんだな」
そんな話をしていると、また地面が揺れた。
さすがに三度目。もう驚かない、と思っていた。
今回は、揺れが収まらない。
「──なんだァ?」
そして白い泥のようなものが、津波の如く城の方向へ集まってゆく。
「だれか、誰か助けて!」
そう叫ぶ声が、うっすら聞こえた。
見ると、泥の津波に飲まれそうになっている蟲人が一人。
助けようか迷いそうになるが、その必要はなかった。
「ああ、ああ。なんだよこれ!」
蟲人の身体が、どろどろにとけて、白い泥になって、飲まれて、それがまた、押し寄せる。
そして、もう目の前まで泥は迫ってきている。
「ディオニス! 逃げよう!」
「いや、いい。お前もうちょっと近くに寄れ」
ジンを近くに引っ張って、そのまま。彼らは白い泥に飲まれた。
それと同時に──
「──解放」
ディオニスの声が響いた。
大量のエネルギーが、ディオニスの身体から放たれる。
そのときに発生した衝撃波が、泥を押しのけた。
「あ、ありがとう」
どうやら津波は大きいのが一波来ていただけで、それより後は大きい波はなかった。
だがその被害はすさまじく、波が通過した土地はもうズタボロになった。
自然と調和したあの美しい街並みは、かけらもなくなっている。
──そして、津波の行く先、城はと言うと、
「ハハハ、やっべえなありゃ」
大きく崩れ、その根元からは、巨木と同じサイズほどの、巨大な蟲人が起き上がっていた。
そして、驚くことはもう一つ。
「あァ? なんか飛んできてねェか?」
白く、丸い何かがこっちへ落ちてくる。それもすごい速度で、だ。
それは、ジンらの近くへと落ちた。
衝撃波とともに、クレーターが出来上がり、砂埃も立ち込める。
「げほっ、何?」
手で砂埃を払い、目がようやく聞いてくるとそこには……
「──ぁ、ぅぇぇ」
頭から、棒人間が突き刺さっていた。
「ショウ!?」
カブを収穫する要領で、棒人間を土から引っこ抜く。
「ぷはっ、あ、ジンとディオニス。久しぶり」
「久しぶり、じゃねェよ。なんだよ、あのデケェはよ」
「あれは……多分……魔王ローリィだ」
「あれが!?」
あの華憐な少女の姿からは想像できないほど、今は刺々しく、そしてどこか哀しい。
その巨人は現在、腕を振り回し、津波に巻き込まれなかった建造物を破壊している。
「クハハ、いやはや凄まじいな」
「レーグさん!」
「見晴らしがよくなったおかげで貴様らを見つけられたわ」
向こうから、レーグが歩いてきた。なんとかここで集結できる形となる。
「レーグさんッ、その腕!?」
ディオニスはレーグの右腕を見て震える。どうやらその衝撃は、巨大化したローリィをみたときを超えるらしく、分かりやすく恐怖していた。
「そうそう、ちょいと鎧を壊されてしまってな」
肩から先からは、美しい肌が露出していた。
ショウは「無事でよかったね」としか思わなかったが、ジンは違和感を覚える。
(鎧だけ壊される……? そんなこと、ありうるのか?)
そんな疑問は置き去りにして、レーグはショウに問いかける。
「──さぁショウ、どうするんだ?」
レーグは一体どこまで見えているんだろうか。ここで自分にそれを聞くということは、いまショウが頼まれて行動していることを知っているということ。
そして、レーグは行動の主導権をショウに委ねている。
「ローリィを、止める」
「ほぅ」
「空から見てた感じ……たぶん、ローリィの本体はあれの心臓あたりにいる。だからまずはそこに入り込む」
「ふむ、それはどうやって」
「……そりゃもう、ドカーンと」
具体的な手段を聞かれると弱ってしまう。
あの巨人の心臓なんて中々高い位置にあるし、それにあの装甲は生半可な攻撃で貫けるものではない。
「大砲でもあればなぁ……」
ボソッとショウは呟く。
「僕、やろうか?」
返事を待っていたわけではないが、答えたのはジンだった。
「やるって、何を?」
「大砲」
「え、できるの……か。ジンだもんな」
変身するにしても、その機構を再現できるのかと思ったが、彼ならば……
ただ、大砲が用意できて、あの装甲に穴があけられたとしても、そこに入り込まなくては意味がない。
……どうする? 思いつけ、新しいアイデア。思い出せ、これまでの記憶で使えそうなものを。
「あ~、じゃあ良いこと思いついた!」
ショウはポンと手を叩く。
「む? なんだなんだ」
期待に声のトーンをあげて、レーグはショウに聞いた。
「ど、どうよ。これ」
「クハハ、面白いではないか」
「少し無茶な気もするけど……それでいこうか」
全員の了承を得て、指針は決まった。
「見てろよ、ニツクダ。俺がローリィを止めて見せるから」
それでは、始めよう──蟲国最後の闘いを。
こっから1日1話投稿になるかも。
ごめんね。2章整えててストックがもう底をつきそうです。
読んでくれてる人に感謝。




