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一次元転生  作者: K省略
第一章 蟲国編
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プロローグ

「分岐したレールの上に、『親友』。もう一方に『家族』がいたとします。向こうからは高速でトロッコが! そして君の目の前にはトロッコの行くレールを変えることのできるレバーがあります。助けられるのは片方だけ。君はどちらを助けますか?」


 涼しげな朝日が、歩道の高校生を包むように照らす。

 質問した青年は期待と不安が入り混じったような表情で、背の高いほうの青年の顔をのぞき込んだ。


「えっと、ええ? 決められねえや。そんなの」


「そんなの駄目だよ! どっちか決めないと!」


 迷う青年を急かすのは、かわいらしい女子。

 どうやら青年たちと親しい間柄にあるようである。


「はぁ、何とかして、もう自分を犠牲にしてでも助けることってできねぇの?」

「駄目だよそれじゃ。君もろともトロッコに轢かれて終わりかもしれないよ?」

「じゃあいよいよ決めらんないや。ほら……信号、青になったぞ」


 青年は逃げるかのように、視線を信号のほうへやる。


「ほんとだ!」


 ハッと顔をあげて、彼女は速足で横断歩道を渡り始める。

 二人の青年は少し後ろから、歩いて追いつこうとした。


 ──だから気づいた。視界の右端から、途轍もない速度でトラックが迫っていることに。


「「──ッ!」」


 二人の青年は走った。彼女の背中へ手を伸ばした。逃げるなどという考えは頭には無かった。

 ──走る、走る、走る。薄く引き伸ばされたようにも思える横断歩道を走る。

 ──ようやく届いた爪で、中指で、手首で。光もつまめそうな力で精一杯に押し出す。


 手と崩れる背中が最後に見えて。

 

 騒がしい衝突、巨大な音。


 ──美花は助かったのだろうか


 レールはもう、分かっている。


 

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― 新着の感想 ―
引き込まれるプロローグですね。
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