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3.『火山の巨人イオスパイデ』part 23.

「マーヤークさん、大丈夫ですか!?」


「ミドヴェルト様、タウオン様! お手を(わずら)わせてしまい、申し訳ございません!」



 仕事中はいつも飄々としているマーヤークさんが、何やら苦しそうに顔を歪めている。


 戦闘とかでボロボロになっても、なぜか薄笑いとか浮かべてる悪魔なのに……


 こりゃかなり限界きてるね。


 私は、フワフワちゃんをラハールちゃんに預け、ベアトゥス様に事前確認を取る。



「必要になれば、マーヤークさんに生命力を譲渡します! 反対しないでくださいね!」


「仕方あるまい、俺はお前を止めはしない!」


「サンキュー、ベアちゃん! だから好き!!」



 思わず脳内のセリフが口に出てしまったけど、ラハールちゃんが「私もベアちゃんとミーちゃん好き!」と乗ってくれたので、なんか失礼な呼び方しちゃったが、これはミーちゃんの言葉として流してもらおう。



「あ、おう……」



 勇者ベアちゃんは、急に赤面してモゴモゴしていたが、別に怒ってはいないみたいだったのでヨシ!


 私はスマホ魔法を常時発動状態にしながら、画面に出た指示どおりに結界を張っていく。


 青髪&ヤーちゃんのコンビは、何やらすごく的確なコメントをくれるけど、これって前から想定済みだったってこと……?



「ベアトゥス様は、ラハールちゃんと一緒に周辺地域の避難誘導をお願いします! 場所は、西側の沢から麓の温泉街まで! 逃げ遅れた人が居ないか確認してください!」


「任せろ!」


「頑張る!」



 ベアちゃんもラハちゃんも、機動力のあるコンビなので適材適所だろう。


 王子殿下は素早く地面に降りて、火山のおじさんを呼ぶ態勢に入った。


 勇者様はあっという間に駆け降りて行って、ラハールちゃんは山腹から上空へと飛んだ。


 キラキラした羽が噴煙の中で小さな光を放つ。


 やっぱりあの子は、ただの少女じゃないんだよな……


 付き合いが浅いのにも関わらず、なんだか私は子離れのできない親みたいな気分。


 まだまだお世話させてほしい……


 そんでもってベアトゥス様は、たぶん溶岩に落ちても死なないだろうから、二次災害だけ起こさないように気をつけてほしい。


 しばらくすると、スマホから勇者様の合図が聞こえた。


 避難完了である。



「マーヤークさん、準備できました!」


「ムー!!」


「申し訳ございません、私はここまでです!」



 ちょっと目をそらしていた間に、悪魔執事はすっかり子供化していた。


 パワーがギュンギュン削られていってるらしい。


 どんどん若返る黒髪紅顔(こうがん)の美少年が、下唇を噛みながら、火山の巨大な噴火エネルギーを押さえている。


 こっちはこっちで超カワイイんですが!!



「結界を解いて、一旦、私のペンダントに入ってください!」


「はい、失礼いたします……」



 ふらりと身を翻しながら、子供マーヤークさんは私のほうに駆け寄ってきた。

 

 それと同時に、これまで結界で押さえつけられていた噴火の圧力が、ボンッ! と、一気に解放される。



「イオスパイデさん!!」



 私が叫ぶと、こんな状況でも間延びしちゃってる溶岩巨人の声が、ぼんやりと地の底から響いてきた。



「おぉーっし! まぁーかせろぉー!」


「ムー! ムー! ムー!」



 火山の岩肌を器用にぴょんぴょん飛び跳ねる王子殿下が、私の足元に擦り寄ってきた。



「フワフワちゃんは危ないから、私の頭の上に!」


「ムー!」



 念のため、自分の周囲にも丸い結界を張って、私は不測の事態に備えた。


 フワフワヘルメットが私の頭部をやんわりと守ってくれてるけど、今はマーヤークさんの代わりに、私が王子殿下を護衛する任に就かなければならない。


 突沸する溶岩から距離をとっていると、頭上でビチャッと音がして、結界に粘度の高い液体がかかる。


 あっ……ぶねぇ……!


 え、これだけ離れても、あの蕩けた熱々の溶岩飛んでくんの……!?


 噴石に注意すればいいのかと思ってたよ……まあどっちみち結界で弾くからいいけど……


 イオスパイデさんは、青髪悪魔のロンゲラップ博士とマーヤークさんモドキのヤーちゃんが計画したルートに向かって、ゆっくりと溶岩を押し流していく。


 それに先立って、クルクルと風を巻き込みながら火砕流のようなものが下りていった。


 本来なら透明で見えないはずの火砕流の動きがわかるのは、ここが温泉地帯で、そこかしこに水蒸気が上がっているからだ。


 通常状態であれば垂直に上がっていく湯気が、急に変な方向に曲がるのでわかりやすい。


 あのスピードでは、どんな動物も逃げられないだろう。


 勇者様とラハールちゃんが避難誘導してくれてるから、人的被害は出ないと思うけど、野生動物たちまではカバーしきれない。


 前回のコウモリちゃんたちみたいなことにならないといいけど……


 心配しながら見ていると、元から野生動物が少ないのか、逃げる生き物の影はないみたい。


 まあ、山頂は岩だらけで食べ物とかなさそうな感じだし、普通の野生動物はこんなとこに棲みついたりしないのかもね。


 ただ、中腹から下にいくと、わりといい感じの森とかがあって、いろんな動物が居そうではある。


 スピロさんのお話によれば、意外と火山地帯で生きてる生物は多いらしいけど、野生の勘で逃げてくれることを祈るしかない。


 今のところ溶岩の流れは順調だ。


 でも噴煙が結構上がっちゃっているので、あたり一面は火山灰で真っ白。


 またあの『ぐるりん結界で噴煙戻し』作戦をしなければならないだろう。


 一応の計画としては、ある程度マグマの圧力を逃してから、様子を見て噴煙を戻す感じになるらしい。


 今はとりあえず、溶岩の流れをコントロールするに留めるのがベストとのこと。


 マーヤークさんモドキのヤーちゃんは、ずっと火山の研究をしてたのかな?


 ここでしかできない仕事みたいなことを言っていたけど、すごく的確に指示出ししてくれるので、ロンゲラップさんがわざわざ会いに来るのも頷けるレベル。


 なんだかんだ言って、研究オタク同士、意気投合しちゃってるのかもしんない。


 私としては、マーちゃん&ヤーちゃんに仲良くしてほしいんだけど、ヤーちゃんは、ロンちゃんとばっかり仲良くしてて微妙だ。


 もちろん、ロンゲラップさんがみんなと仲良くしてくれるのも嬉しいんだけど!


 冷静に考えると、あの青髪悪魔大先生は、赤髪悪魔のエニウェトクさんともつるんでたし、基本、誰とでも仲良いな。


 でも、笑って話をするような雰囲気はなくて、仲良いと言っていいのかはよくわからない。


 敵対してないだけ、ともいう……


 お医者さんみたいな立ち位置でもあるから、みんなに頼りにされてるってことかな?


 そんなことを考えながら、溶岩の流れを見張っていると、急に遠くから破裂音が聞こえた。



どぉおおぉぉ……ん……!!



 振り返ると、火山の町方面でもなく、温泉街方面でもない、全然関係ない遠くの山から噴煙が上がっている。


 目を凝らして見ると、チラチラと赤い溶岩も噴き上がっているようだった。



「な、なんで!?」



 私が驚いて棒立ちになっていると、こっちの火山で溶岩をせっせと押し流していたイオスパイデさんが、なんだか情けない声を上げた。



「すまねぇー! ()()()()()()()()()が崩れちまったぁー!」


「わかりました! そちらの対応も考えます!」



 慌ててスマホ魔法の画面を確認すると、ロンゲラップさんのメモが、書いては消し書いては消しの繰り返しで、ごちゃついている。


 しまいには、「ちょっと待て」という指示が短く書かれ、わしゃわしゃとメモが掻き消されていった。


 ……消せるんだ、あのメモ……


 謎の機能に感動して、ちょっと冷静になった私は、ベアトゥス様に電話してみる。



『どうした?』


「あ、ベアトゥス様! 今の音、聞きました!?」


『また噴火か?』


「まったく別の山から噴煙が上がりました!」


『何!?』


「様子を見に行きたいので、ラハールちゃんと一緒に、ここまで上がってきてもらえませんか?」


『わかった、待ってろ!』



 会話を終えてから、私は嫌なことに気づいてしまった。


 さっき噴火した山の、その先のほうの山からも、なんか煙出てるっぽくない……?





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