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3.『火山の巨人イオスパイデ』part 20.

「え!? なんでここから!?」


「ここが、この城で一番高いからな」


「ラハール頑張る! ミーちゃん、ベアちゃん、行くよ!」


「おう!」

「ぎゃー!」



 高所恐怖症に理解のない異世界の特殊キャラたちに、否応なく王城の屋根まで連行された私は、ベアトゥス様に抱えられて逃げることもできず垂直落下する。


 お尻がゾワっとして、それが背中に伝わり、そのまま頭から魂が引き抜かれそうな感覚になると、一瞬あとにフワッと重力を感じて、気がつけばラハールちゃんの大きな羽の上に居た。


 風を切って進むラハールちゃんの羽は、透明で蝉みたいに硬い。一番上の羽は、飛行機の翼みたいな感じで、水平に開いてほとんど動かない。


 恐る恐る見下ろすと、その下にも何枚か羽があって、ブンブンと蜂のように羽ばたいていた。



「すごく早くする?」



 私に余裕があることに気づいたのか、ラハールちゃんが軽く振り向いて言った。



「え、いや、ちょっ……」

「おう! 頼んだ!!」



 私の返事を待たずに、ベアトゥス様の言葉で満面の笑みを浮かべたラハールちゃんは、「行くよー!」と言ったかと思うと、急にスピードアップした。


 いやマジで、これは竜車の比ではない。


 叫ぶ暇もなく風圧とGが掛かって、私の顔と髪はトンデモないことになる。


 すると、あんまりブサイクで哀れに思ったのか、勇者様が私の頭を自分のほうに向けて抱き寄せてくれた。


 今度は大胸筋の圧で、違う意味で私の息が止まりそうになる。



「まったく、しょうがない奴だな……早く結界を張れ。ラハールの顔にも張ってやるとよい」



 言われたとおりに物理防御結界を張ると、風が来なくなって快適に座れるようになった。


 ラハールちゃんの顔にも結界を張ると、「なんか見やすくなったー!」と喜んでいる。


 超スピードで飛行移動ができるくせに、ちょっとツラいな……なんて思ってるのかと考えると、何だかカワイイ。


 でも、それを助言してくれた勇者様も、少なからずそう感じてるってことだよね……?


 いつも平気な顔をしてるけど、ちょっと目が乾くなとか、息が吸いにくいなとか思ってたのか……?


 ベアトゥス様って……すんごくカワイイな!!


 強者には強者なりの苦労があるんだね、やっぱ。


 そんなことを思っているうちに、ラハール航空002便は火山地帯に到着した。





◇◆◇・・・◇◆◇・・・◇◆◇





「……確か、この辺でしたよね……?」


「ああ、だが落ちるのは無理ではないか? お前も言ってたろ」



 火山地帯に降り立って、マーヤークさんモドキが居た場所を探していると、見覚えのある地形にたどり着いた。


 ベアトゥス様は、相手の魔力だか気を探って、その存在を確認することができるらしいけど、今は何も感じないという。


 ラハールちゃんも特に縁とかは感じてないらしく、マーヤークさんモドキのことも、そんな人居たねぇくらいの感覚なんだって。


 こりゃダメだ……やはり軽い気持ちで来てはいけなかったか……


 なんとなくだけど、マーヤークさんモドキのヤーちゃんは、溶岩洞の天井部分に結界を張っていて、呼び込みたい相手だけを落としてたんじゃないかと思う。


 あのとき、どうして私たちが落とされたのかは判らないけど、ヤーちゃんに招待されないとあの場所にはたどり着けないのかもしれない。


 私が少し落ち込んでいると、勇者様は面倒だと言って、その辺の地面を力尽くで割ろうとしはじめた。



「結界があるのだとすれば、全力で殴っても割れんかもなぁ」


「ちょ……待ってください! 一応それは仮説であって……!」


『……やめておけ、契約違反になるぞ……』



 ベアトゥス様が思いっきり拳を振り上げると、どこからともなく声がした。


 もしかしたら、ヤーちゃん……?


 と思ったけど、この声は……



「え? ロンゲラップさんですか……?」


「チッ、あいつかよ……」



 つまらなそうな顔で腕を下ろす勇者様に駆け寄ると、私はラハールちゃんを呼び寄せた。


 またバラバラに落とされたら嫌だもんね。


 私たちが固まって落とされる準備をしていると、目の前の地面からスウッ……と半透明の青髪悪魔大先生が浮かび上がってきた。



『意外と早かったな、その虫の翼が運んだか……』



 お出かけモードのロンゲラップさんは、青髪が隠れるほどのフードを被って、なんだかいつもと雰囲気が違う。


 これはコレでまたレアな……


 私がちょっとトキめいているのに目ざとく気付いたベアトゥス様は、少し不機嫌な様子で私の肩を抱き寄せる。


 すみません、浮気じゃなくて()()()なんです、許してください……


 ごまかすつもりはないけど、私もラハールちゃんの手をしっかり握って、3人の連帯感をアピールしてみた。


 すると、半透明のロンゲラップさんは急に大きくなって、その後ろからマーヤークさんモドキのヤーちゃんが姿を現した。



『おや、お客さんかな? 珍しい……なんだ、君たちか』


「こんにちは、またお邪魔して済みません」


『いや、歓迎しよう。今回は私が目的では無さそうだが』



 ヤーちゃんがそう言うと、足元の地面が崩れて私たちを飲み込んだ。



「ひゃっ……!!」



 わかっていても悲鳴が漏れてしまう。


 勇者様とラハールちゃんを離さないようにつかむと、私は思わず目を閉じた。





◇◆◇・・・◇◆◇・・・◇◆◇





「おい、しっかりしろ……!」



 ほっぺをピタピタ叩かれて、私は自分が気を失っていたことにやっと気付いた。


 なんか思いっきり動き回っていた気がしたけど、それは夢の中の冒険だったみたい。



「あれ……? ベアトゥス様……?」


「ミーちゃん、だいじょうぶ?」


「ラハールちゃん……? はっ! 私寝てました!?」


「寝ていたと言うか……まあ気絶していたな」



 2人の後ろから、青髪悪魔のロンゲラップさんが顔を出す。


 ホッと短いため息をついた勇者様が、私を抱き起こしてくれた。



「良かった、頭を打ったのかと思ったぞ……」


「すみません、高いところが苦手で……」



 周囲を見渡すと、前に落ちた地下神殿と似たような雰囲気の場所にいるようだ。


 上を見ると、まあまあ高いところに、ぽっかりと白い穴が空いている。


 あの高さから落ちたのか……


 落ちるってわかっていても、なんかフッと意識が無くなることってあるんだね。


 ラハールちゃんに乗ってるときは、高いところから垂直落下しても大丈夫だったのになぁ……


 やっぱ、足元に何もないと踏ん張れないというか、臨死体験みたいな気分になっちゃうのか?


 そんなことを考えていると、マーヤークさんモドキのヤーちゃんが、水差しとタオルを持ってきてくれた。



「おや、久しぶりに看病の真似事ができると思ったら、もう目覚めてしまったのか?」


()()()()って……」


「我が片割れ殿は、よく寝込んでいたものでね。私がこうやって世話をしていたものさ」



 言いながら、ヤーちゃんは緩めに絞ったビチャビチャのタオルを私の額に乗せる。



「つめた……!」



 地下水の温度なのか、水はかなりの低温で、冷たい(しずく)が私のうなじまで流れ伝って枕に染み込んだ。


 ……ん? 枕?


 砂の上じゃないの……?



「あれ? ここって……?」


「私の部屋だよ。ちなみに君が寝ているのは私の寝台だ」


「あ、そうだったんですね……ご迷惑をおかけして、どうも済みません」


「迷惑をかけられているのはこっちだろ。イチイチ落下させる以外の方法はないのか!」



 文句を言いながら私に水を飲ませようとするベアトゥス様が、額のタオルを取り外して固めに絞り直してくれた。


 私はもう大丈夫なんだけど、夫に言い出せなくてされるがままになっているうちに、自然と部屋の様子が掴めてくる。


 部屋といっても、だだっ広い地下神殿の一角に、なんとなく家具が置いてあるだけ。


 私が寝ているベッドと、なにか紙がたくさん置いてあるテーブル、そしてソファって感じの落ち着かない場所だった。





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