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2.『コリオリちからに逆らうな!』part 4.

「なるほど、つまりミドヴェルトさんは、この者たちの言葉がわかるのですね?」



 騒いでいた植物系魔物さんを落ち着かせて、植物研究所の皆さんを集めると、ゴッドヴァシュランズオルムご夫妻は私に聞き取り調査をはじめた。


 研究所の皆さんは、興味津々で私の供述を待っている……うう……注目されるの怖いよ……



「えっと……その……」



 言葉が出てこなくなってしまった私の背中を軽く叩いて、キシュテムさんが応援してくれる。



「落ち着いて、ミドヴェルト。誰も怒ってないから、ね?」


「は、はい……その、ちょっと不思議な声ですけど、普通の言葉として聞こえます」



 おお……という低めのざわめきが聞こえて、代表者っぽいプロジェクトリーダーさんが一歩前に出てきた。



「私は、この植物たちの研究をしている、スピロ・ラリティーと申します。もしよろしければ、通訳として、2〜3日ほど研究に付き合ってはいただけませんでしょうか……?」


「え……っと……?」



 この植物研究所に来たのは、松の木を探すためだけど、滞在期間はどのぐらいの予定だったんだろう……?


 勝手に答えて、皆さんにご迷惑をかけるのもアレだし……と思いながらいろいろ把握してそうなマーヤークさんを見ると、執事悪魔は薄笑いを浮かべて目を閉じている。おい、こっち見ろやゴラァ!!


 えーどうしたらいいのよー?


 受けて良いってこと??


 なんとなく面白そうだから受けちゃうよ?


 などと思いながら、今度はキシュテムさんの顔を見てみたが、伝説の悪魔はキュピン☆とかわい子ぶってダブルいいねをぶちかますのみ。こいつ……たぶん何もわかってないな……?



「……まあ、2〜3日程度なら良いですよね?」



 あまりにも周囲が無反応だったので、私はあえて言葉にしてみる。



「問題ございません。ミドヴェルト様のお心のままに」



 マーヤークさんが許可してくれたので、私は植物研究所で短期アルバイトをすることになった。





◇◆◇・・・◇◆◇・・・◇◆◇





「えーと……今日から通訳として皆さんのお話を聞かせていただくことになりました、私の名前はミドヴェルトです。よろしくお願いします」



 植物系の魔物さんたちは、私が自分たちの言葉を理解していると知るや否や、堰を切ったように話しかけてきた。



「私たちの子供を取り返してくれたことには感謝する」

「あなた、私たちの言ってることがわかるの?」

「何でこんなところに連れてきたんだ、元の場所に返してくれ!」

「すみません、水が欲しいのですが……」

「ねえねえ、どうして言葉がわかるの? もしかして仲間?」

「絶対に許さないぞ!! あいつらにそう言っとけ!」



 これ、アレだな……幽霊見える系の人がよくこんなふうになってるやつだな……


 まあ、私も現実世界の外国旅行で日本人に会ったら、うっかり話しかけてしまうかもしれない。国内だとしても、同じ作品を好きな人と出会ったら、なんか早口で喋っちゃうかもしれない。


 話が通じそうってなると、一気に押し寄せるよね……ご意見・お問合せや苦情が。


 私は、殺到する植物系魔物さんたちを一列に並ばせて、順番に話を聞いていくことにする。


 話が長くなったら困るので、おひとり様5分以内の制限付きだ。


 一応、特別研究員のスピロさんとその助手の方が付いてくださってるけど……念のため、会話は録音させていただきますので、スマホ魔法を発動……これで準備ヨシっと!


 植物研究所の庭は、話をしたいという植物系魔物さんたちの長蛇の列で、何だか植木祭りのようになった。



「はい、それでは、お名前からどうぞ」


「ヒピビルヒです。我らアジュガ族は毒の使い手で谷を守ってきた。今回は遅れをとったが、こんなところからは一刻も早く出ていきたい」


「な、なるほど……少々お待ちください?」



 私は、初っ端からトラブルの匂いを感じつつも、スピロさんたちに通訳をする。


 というか私自身、魔国語と植物語の違いなんかわかってないんだけど……ちゃんと通訳できてるのかなぁ?


 半信半疑ながらも話し終えると、うんうんと傾聴してくれたスピロさんは満足そうに答えた。



「わかりました! 彼らは()()()()()というのですね。毒が攻撃手段であると……しかし残念ながら、()()()()()()()()()のです」


「え!? ど、どういうことですか?」


「近隣にある火山の噴火により、一帯の森は焼けてしまいまして。今現在も谷には溶岩が流れている状況で、彼らは保護という形で植物研究所に配送されました」


「え……」



 私たちのやり取りを見ながら、ヒピビルヒさんは不安そうな顔をする。


 ど、どうしよう……急に故郷がなくなったとか、言えるか……?


 でも、自然災害だし……仕方ないよね。


 とはいえ、私では責任持てないので、念のためスピロさんに確認をとってみる。



「あの、そのことをお伝えしてもいいんですか?」


「ええ、どうぞ。変にごまかすよりは、諦めもつくでしょうし」



 そ、そんなもんなのか……?


 まあ、魔国は現代日本と違って、そこまで繊細な感じはないしな……


 私は、ヒピビルヒさんに今聞いた話をお伝えした。



「なん……だと……?」



 ちょっと強気の顔だったヒピビルヒさんは、もう谷に帰れないと知って、すっかり(しお)れてしまった。


 植物系魔物だけあって、本当に文字どおり萎れている。



「だ、大丈夫ですか? とりあえず、お水を飲んで、そちらでお休みください」



 スピロさんの助手の方に支えられて、ヒピビルヒさんは日当たりの良い場所で放心していた。やっぱ植物だから、日陰より日向がいいんだね……


 まさか、アジュガ族が棲んでた谷が、噴火で消滅しちゃっていたとは。


 私たちの話を聞いていたほかの植物系魔物さんたちは、前後の仲間たちと何事かざわざわと言葉を交わし、動揺を見せながらも列は乱さない。


 そんなに言いたいことが溜まっているのか……?



「えーでは……次の方、どうぞ。お名前は?」



 私は、その後およそ8時間も植物系魔物の皆さまのお話を通訳し続けたのだった。





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