表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/57

1.『それぞれの帰還』part 10.

「こうやって、お前にメガラニカの名所を見せることができるとはな……」



 ベアトゥス様は、私の手をしっかり握りながら、高い建物のてっぺんを見上げる。


 ここは、思春期の勇者様が通った学校だ。


 全寮制で、メガラニカ中から貴族の男の子達が集められるらしい。


 石造りの校舎は、細部に細かい装飾が施されて、すごく……ヨーロッパっぽいです……これぞギムナジウム感……


 そんでもって、メガラニカの婦女子は、学校には通わず家庭教師をつけられるんだって。


 でも、そんなことができるのは、ごく一部の貴族だけらしい。


 だから平民の子は識字率が激低い。


 うーむ……魔国の教育係としては、なんかモヤモヤしちゃうね……



「ベアトゥス様の行ってた学校も見れたし、私はもう十分満足しました!」


「そうか……じつは俺も、これ以上は案内する場所がないと思っていたのだ」


「もう一度、ご実家に行きます?」


「何でだよ、もういいだろ……」


「では、霊園に行きましょう。ご両親にご挨拶したいですし」


「……そうだな」



 私たちは、手を繋いだまま、丘の上の霊園に向かった。


 小さなベアトゥスお坊っちゃまが見ていた白い花に埋もれて、ウルジェイお義父様とお義母様は眠っていた。


 お二人の墓石を見つけ、私たちは市場で買った花を供える。


 しばらく立ち尽くしていると、勇者様が繋いだ私の手にキスを落として言った。



「精霊女王のプレゼントがなければ、今俺はお前とこうしていなかったかもしれんな……」


「ふふ……ベリル様に感謝ですね」



 それから、私たちは二人で魔道具インペルフェットのボタンを押したのだった。





◇◆◇・・・◇◆◇・・・◇◆◇





「つまり、卵が先か鶏が先かって話なんですよコレは。はい、あーん♡」


「むぐ……それで、俺はお前のことが、はじめから気になっていたのか」


「ふぇ? はじめから? ……ま、まぁ……そういうことじゃないでしょうか……?」



 結局、私たちの関係は偶然の産物かもしれないし、運命の賜物かもしれない。


 王城の部屋はそのまま使っていいらしいので、別宅的にキープさせてもらって、私たちは王都に新居を買って住んでいる。


 大通りから少し入った閑静な住宅街って感じのところに、お取り潰しになった貴族邸が安く売り出されていたので、思わず買ってしまった。


 見た目はお化け屋敷みたいな感じで古いけど、いかにも洋館って感じで手入れし甲斐のある家だ。


 今になって考えてみると、なんだか勇者様の実家にも似ていて、いろいろと感慨深い。



「とにかくですね。やっぱり一度、ベリル様にお礼をお伝えしたほうがいいんじゃないかと思うんですけど……」


「今回ばかりは反対できぬな……ほら、食え」


「はむ……もむ、ですから、やっぱりまた湖畔の道に行くしかないかもしれません……」


「あの精霊女王、あの湖畔の森になにかあるのか? まるで森の精霊だな……」



 ベアトゥス様のご希望で、お坊っちゃまの夕食ごっこに付き合わされてしまったんだけど……


 この日のイチャイチャが、またさらにベリル様を遠ざけることになった……と、エンヘドゥアンナさんに聞かされるのは、また後日のことである。





◇◆◇・・・◇◆◇・・・◇◆◇





「まあ! 勇者様のご実家に!?」


「あら……私も執事やお祖父様に会いたかったわ……」


「ふむ……かこにゆけるまどうぐか……」



 裏庭のガゼボで定例の女子会を開くと、公爵夫人やメガラニカ妃のヒュパティアさんが、興味津々で魔道具インペルフェットについて聞いて来た。


 妖精王女のアイテールちゃんは、チョコレートで口の周りをベッタベタにしながら考え込んでいる。


 今のところ、魔道具のチューニングは動かしてないので、行こうと思えばまた過去のメガラニカに行けるはずだ。


 でもベリル様からいただいた魔道具を、そうポンポンとほかの人に貸していいものかどうかわからないので、精霊女王様に確認してからヒュパティアさんに……と思ってるんだよね。


 そんで、うまく調整ができればホムンクルス姫にも……と思うけど、余計なお世話かな?


 今の公爵様と仲良くできてるんなら、過去の王子になんて会いたくないか……


 便利な魔道具って、某猫型ロボット漫画だと絶対トラブルの元になるよね……


 やっぱ又貸しはしないほうがいいかな?



「お? どう? ミドちゃん、楽しんでくれた? ん?」


「あ、ベリル様! 先日はありがとうございました! 夫も大変感謝しておりました……」


「うぇ、いいよアイツのことは……」



 どこからともなく精霊女王のベリル様が現れたので、私はすかさずお礼の言葉を伝える。


 神出鬼没のベリル様は、気まぐれにパッと消えてしまうので、用があるときは後回しにしないほうがいいのだ。



「ところで、あの魔道具ってほかの方にお貸ししても良いものなのでしょうか?」


「うーん……俺としてはあんまり推奨できないなぁ……っていうのはさァ……最悪の場合、ミドちゃんは帰還魔法で帰れるはずだけど、ほかの子はそうじゃないじゃん? 行方不明になっても良いんなら勝手にすればいいけどさ」



 ベリル様の話を聞いて、一同は青ざめる。



「やっぱり……難しいですわね……」


「そうね……まあ、お祖父様には無理に会わなくてもいいかもしれないわ……」


「ししょう! きょういくがかりどののきかんまほうは、()()()をも()()()……ということでしょうか?」



 アイテールちゃんだけは、なぜか前のめりになって質問をしていた。



「たぶんね。ミドちゃんの帰還魔法は、短時間だと元の座標位置に戻るだけなんだけど、大きく時間移動をしたときは()()()()()()()()()()()()()()はずだ」


「え……でも、()()ってことは、確実じゃないんですよね……?」



 微妙に嫌な流れになって来たような気がして、私は警戒心がMAXになる。


 試しにやってみようとか……絶対言わないでよね!?



「いや、帰還魔法がそもそも『そういうもの』なのさ。ただ、ミドちゃんは何かと変わってるから、俺の知ってる法則通りかは……ちょっとわかんないんだよね」


「えぇ……」



 私が不安な顔になったのがよっぽど面白かったのか、ベリル様はニヤニヤしながら話を続ける。



「そんなに心配しなくても大丈夫だって! いざってときは俺が探してあげるから! な!!」


「やっぱりこの魔道具……お返ししてもよろしいでしょうか……?」



 私は、精霊女王様の『新婚のプレゼント』を、強引に返却して()()()()()()のだった。


 どうしても借りたい人は、自己責任でベリル様から借りてくれ!!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ