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1 病院に行け。


「身体の調子が悪くなったら病院に行こう。」

 そんな、誰でも知ってる当り前を遂行しなかった結果、苦しみを長引かせ周りに迷惑をかけてしまった。



 お酒は毎日飲んでいた。

 くそみたいな人生だ酒くらい好きに飲ませろと。金がいくらでもあるわけじゃないから、できるだけ効率のよい酒を探し、いろいろ試してみたけれど、最後に辿り着いたのはやっぱりスト〇ンぐゼロ。

 安くて、美味くて、どこにでもある。

 スト〇ンぐゼロは酒の神様がくれた安酒の最終形態だ。


 常酒(冷蔵庫に常にストックし、常に飲む酒。)をスト〇ングゼロに決めてしばらくたった頃、外の世界が変わり始めた事に気づいた。スーパーやコンビニでお酒売り場が縮少しだしたのだ。棚の数、商品の種類、スーパーマーケットが模様替えする度に少しづつ減ってゆく。

 ストロング酎ハイというジャンルは今後、大いに盛り上がっていくはずだったのに、コロナ下の宅飲み特需は、コロナ後にも人々の些細な習慣として残っていくはずだったのに、なぜだか、酎ハイだけでなく酒コーナー全体が縮小している。


 経済産業省のレポートでもこの傾向は顕著だ。


 SNSや掲示板等であんなに賑わっていた、宅飲みコミュニティも風前の灯。

 みんなどこ行った?答えはすぐに分かった。


 病院か墓の中。。



 人生の変化は急にやってきて取り返しのつかなくなる。


 俺は生涯、酒を飲めなくなった。



 初めにお腹が痛くなったのは5月頃


 それまでは腹痛なんてウンコすれば治ると信じていたのに、人生で初めての便意を伴わない腹痛で、それがずっと続く。


 調子の悪い俺を見て、周りの人は「病院行け」と言う。


 病院には行きたくなかった。


 仕方なく、納豆とかヨーグルトとかバナナとか食べてみたけど、ちっともよくならない。

 そのうち、あまりにお腹が痛いから食欲が無くなってきたので、ゼリーだけを食べるようにしたら、空腹タイプの痛みに変わった。。

 痛みの種類が変わったので、さもありなんとか思いつつ食パンを食べたら空腹タイプの痛みが引いた。腹痛が治ったとぬか喜びしてたら、また、もとの痛みが戻ってきて、ガッカリした。、


 そういえば、inゼリー系の飲むゼリーをこのとき始めて利用した。ずっと興味はあったけど、未知のものに対する恐怖で利用していなかったんだと思う。

 はじめは食べきるのに10分ほどかかったが、いまでは30秒くらいで飲み切る。公式が謳っている10秒にはほど遠いけど、いつか辿り着く目標として楽しみだ。



 6月くらいまで騙し騙し暮らしていたけれど、痛みのピーク時に、呼吸ができなくなる症状がでて、仕方なく病院に行くことにした。


 家の近くの内科に電話してみる。

 電話越しに症状などを説明すると、外来時間外だが診てくれることになった。

 ただ、他の業務の合間をぬって診察するため、下手したら診るまで、6時間!?くらいかかるかもしれないとのこと。


 家から7分くらいの病院まで歩いて行った。歩くのもツラいから車にしようかとも考えたけど、歩くのもつらいほどの腹痛で運転するの危ないだろうと諦めた。


 とはいえ、前日まで痛みを我慢しながら普通に車を運転していたわけで、一度、高速道路上で痛みに我慢できなくなって路肩(非難帯?)に停めてしまったこともある。これはとても危険な行為なので、この一件だけ見ても病が正常な判断力を奪うってことがよくわかると思う。


 病院について、電話で予約した旨を伝え、看護師による簡単な問診が終わると、先生の体が空くまで待合室で待機となった。

 20人くらい座れるそこそこサイズの空間だけど、次々ひとが入れ替わる。この時間帯は健康診断をメインで営業しているようで、一人づつ呼ばれて先生の問診を受けているようだけど、一人一人の時間がやけに短く、人々の健康さえもベルトコンベアーで運ばれていくのかと考えたりした。


 お腹の痛みが酷かったので、ストレッチャー的なもので横になりたかったが、はじめて来た場所で、あまり無様な姿はさらけ出せないなと、長椅子と背の間に鞄を半分だけ挟んで重心は片足に寄せて置く姿勢で耐えた。

 いろいろと試した結果、この姿勢が腹の一番痛くない姿勢だと思えた。


 思いのほか30分くらいで先生に呼ばれた。

 俺は、ここでも、電話でも「お腹が痛いんです。」と言っていたけど、本当に隠し事なくそのままなんだけど、大の大人が「お腹が痛いんです」ってバカみたいだよね。


「miyaさんー。入ってください」

「はい。」

「こんにちわ。」

「こんにちわ、この度はよろしくお願いいたします。」


「えーと。お腹が痛い?」←問診書みながら。

「はい。とても。。」


「どこ?」

「こことか。」


「ここは?」

「痛いです。」


「じゃぁCT撮ろっか。」


 CTルームに移動するのもお腹痛かったから、コロコロのついた担架的なものに乗りたかったけど、無様はさらけ出したくないと、気合で歩いた。

 俺はだいたい全ての病院的単語が怖いのだけど、CTスキャンはその厳つい見た目以外は全く怖くなかった。寝ている間に終わった。

 それから、一時間まって、また先生に呼ばれた。


「CT見たけど、腫瘍的なものあるね。」

「はい。痛いです。」

「ここじゃ、解らないから大きい病院紹介するね。」

「はい。お願いします。」


 俺はこの病院に電話をする前に、お腹が痛い中、近くの病院の中で出来るだけ大きいところを探して、webで所属医師の情報も見て、病院のHPにデカデカと「消化器系に自信あり」とあったから、ここを選んだんだが?とは言えなかった。。


「じゃ、紹介状だけ書いておくから、自分で電話してね。」

「はい。」

「お大事にー。」


 一応、痛み止めと胃液を抑える薬は出してもらえた。


 薬を飲むと痛みを感じなくなったので。治ったと思い、しばらく電話はしなかった。

 


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