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カナとリサ  作者: レン
6/10

6話 初練習

今日はいよいよリサちゃんに剣を教えて貰える

山の中でリサちゃんに初めて会ってから、ずっと教えて貰いたいと思っていたから、昨日からずっとそわそわしていた


朝起きてから、久しぶりに学校に行きたくないと思った。このまま山に行って剣を教えて貰えたらどれだけいいだろうと思ってしまう。リサちゃんは学校に行くだろうから、私だけ山に行っても仕方ないし、大人しく学校には行くけど


授業もいつもより集中できない。休み時間もボーっとしていて、友達に何回も話しかけられてようやく気付くということもあった

学校が終わると、委員会がある。リサちゃんは委員会に入ってないらしいから、いつもリサちゃんの方が山に着くのが早い

ああ、何で委員会に入っちゃったんだろう

そんな後悔をしながら作業を進める。いつも委員会が終わってからも、友達と少し話してから帰るのに、今日は我先にと、誰よりも早く帰った

いぶかし気な顔をする友達を背に家に急いで帰る。カバンを置いて、かごを背負って、また私は家を飛び出す。そのまま真っすぐ、山に向かって駆けだした


いつもの場所に着くと、もうリサちゃんは練習をしていた

それを、いつもよりも真剣に見る

いつの日か私も、あんな風に舞える時が来るのかもしれない。そんな想像をしながら、その光景を目に焼き付けようとする


しばらくすると、リサちゃんの動きが止まった

ふーっと少し長い息を吐いた。これで練習は終わりみたいだ

私はいつもの様にタオルを持ってリサちゃんの元に向かう


「お疲れ様!」


私がそう言うと、リサが普通にこっちを向いた。今までは驚きながら振り返っていたのに

密かにリサちゃんを驚かせるのを楽しみにしていたのに残念

そう思いながらタオルを渡す


「はい、今日は練習もう終わり?」

「うん、そのつもり」

「じゃあじゃあ、私に教えてくれる?」


思わず前のめりに話してしまう。そんな私を見て、リサちゃんが苦笑して、少し我に返る


「うん、やろう」


だけど、リサちゃん返事を聞くとすぐに、私のテンションは最高潮に達した


「うん!」


やっと教えて貰えるんだ。そう思うとじっとしてなんていられない

そわそわしている私に、リサちゃんが剣を渡してくれた。リサちゃんが普段使ってるやつ

初めて握る。見よう見真似でその剣を握って、構えてみる

えへへ、何かかっこよくなれたような気がする


そうやってニヤニヤしていると、少しリサちゃんに握り方と構え方を直された


「うん、構え方はそんな感じ。じゃあ、こんな感じで、上から下に剣を振ってみて」


リサちゃんに言われた通り、剣をただ上から下に振ってみる


「重い?」

「ううん、たぶん大丈夫だよ」

「そっか、じゃあ何回か振ってみて」


また剣を上から下に振り下ろす。何回も、そして少しずつ、リサちゃんに振り方を直してもらう


「肩甲骨を意識して、大きく振りかぶってみて」

「打つ瞬間以外は、体とか腕にあんまり力入れないほうが良いよ」


そんなアドバイスを貰う。そしてその通りに何回か振ると、リサちゃんが満足そうな顔をした


「うん、そんな感じで良いと思う。じゃあそれを、あと100回くらいやってみようか」

「100!?」


え、20回くらいしか振ってないのに、もう私少し腕が重いんだけど

これをあと100回もやるの?

聞き間違えかと思ったけど、驚く私を見て、リサちゃんが不思議そうな顔をしている

その顔で、あ、本気で言ってたんだなってことを察する


「ちょっと多かった?50回くらいにしとく?」

「うん、それでお願い」


私の顔で察してくれたリサちゃんのおかげで半分になった。これでもやれるかどうか少し怪しいけど、リサちゃんに追いつくためだから、頑張ろう



「はあ、はあ...」


そしてその数分後、私は息を切らして、地面に仰向けに寝っ転がっていた

腕がとにかく痛い。もう今日は腕上がらない。もう何も持てない


そんなことを思いながら倒れ込んでいると、リサちゃんが心配そうな、不思議そうな、そんな顔で私の顔を覗き込んできた


「あれ、もう疲れちゃったの?」


ぐぬぬ...

他の子に言われたら煽られてるのかなって思うけど、リサちゃんに限ってそれはないと思う


「もう無理ー」


ちょっと大げさに、私が動けないことを察して欲しくてそう言うと、リサちゃんが笑った


「そっか、ちょっとカナには回数が多すぎたかもね」


わかってくれたリサちゃんにほっとする

これを毎日やるのはさすがに体がもたない


「じゃあ、今から足運びの練習しよっか」

「え?」


え、聴き間違えだよね


「腕は動かなくても、足は動くでしょ?」


何でもないことの様に言い放つリサちゃん。今だけは、リサちゃんが悪魔に見えた




「ぜえ、ぜえ、ぜえ...」


何とか足運びの練習を終えた

もう全身が重くて、一歩も動けない

リサちゃんは優しそうな顔してるのに、練習内容は鬼の様に厳しかった


「大丈夫?」


さっきよりも苦しんでる私を見て、結構本気で心配してそうなリサちゃん


「ごめん、やり過ぎたよね」


そう言って、リサちゃんは眉を下げる


「そんなことないよ」


私は反射的にそう言った

そして言った後で、ちゃんとその言葉は正しいと思う


確かにきつかった。普段使わない筋肉まで使ったし、もう立ちたくないくらいにはくたくただ。思ったより華やかな練習じゃなくて、地味だった。きっとリサちゃんに追いつくにはこれを何回も繰り返しやらないといけないんだろうなって思うと、気が遠くなる

それでも...


「すっごく楽しかったよ!」


リサちゃんの教え方は丁寧でわかりやすかったし、私の動きが少しづつリサちゃんに近づけているような気がした。きっとこれを続ければ、あのリサちゃんの様な動きが出来るようになるって思えた。そう思えば、ちょっとくらいのきつさはなんてことない


そんな私の思いが伝わったのか、リサちゃんがホッとしたような表情をした

あんまり表情が動かなくて、口数も少ないから、冷たいって思われがちなリサちゃんだけど、本当は凄く優しい。短い付き合いだけど、それくらいのことは知ってた


「よかった」


リサちゃんはそう言うと、私たちから少し離れたところにある木陰に歩いて行った。そこにはリサちゃんの荷物が置いてある。さっきまで気が付かなかったけど、いつもと違って、かごが置いてあった


「それ」

「うん。今日からは私も山菜取ろうかと思って。今日も行くでしょ?」


リサちゃんが恥ずかしそうに目を逸らしながら言う

その言葉を聞いて、口角が自然に上がっていくのを感じる

私と過ごす時間を楽しんでくれてるのかな。そう思って嬉しくなる

一歩も動ける気がしなかった体が動き出す


「うん!」


そう言って私は、リサちゃんと一緒にかごを持って歩き出した

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