さかさま洞窟
みのりさんは今疑問ばかりが浮かんでいるだろうし四天王の不安もあるだろう。
「みのりさん、たくさん話すことがあるのでみんなでご飯を作ろう!」
「はい! ・・ご飯ですか? あ、分かりました!」
「わーい!何つくるの!」
ふふふ、ただ話すのって苦手だから。マルシカクちゃんの時みたいに歩きながらとか単純に寝ようとしながらとかオススメだよ。今回は料理しながら、食べながらしよう。長い話になりますからね…、みのりさんは何でも受け入れてそういうものだとしちゃいそうだけどね。
「ハンバーグと人参スティックにする予定だけど、マルシカクちゃんが苦手な物は?」
「ピーマンは苦いからきらいかな、でも食べるよ」
そっかぁマルシカクちゃんはピーマン苦手かぁ、かわいい♡
「私も嫌いだから出したくないな♪ 食べたくないの」
「ふふ、おねえちゃんもきらいなんだね、でも食べないとダメだよ?」
マルシカクちゃんはえらいね、普通嫌いなら残すのにね
「うーん、食べさせてくれたら食べるかな?」
「わかった!マルシカクがおてつだいするね」
「うん!」
そのためなら苦手だろうと出さないとね!
「みのりさんは苦手な物は?」
「ほへぇ…いいですねぇ…」
ぼぉーっとしてるから無視します、お話もあるからすぐに戻ってきてね?
料理器具はこちらに(今)置きました料理台に備え付けられています!
材料は『おいしいお肉』『卵』『ミルク』以上です
超不安ですがゲームを信じます、材料これだけでいいんです!
MPを注ぎます、使う道具に触れると出来るようで、本来行う工程で1使うそうです。説明だとちょっと分からなかったからやってみてのお楽しみです。
「マルシカクちゃんとみのりさんは人参の皮剥いてくれる?」
「はーい!」「は、はうぃ!」
よかった、戻ってきてたね
おいしいお肉を片手に包丁を握ります、パァっと目の前が光って止むとひき肉が出来ました!
「え!?」
マルシカクちゃんたちはゆっくり皮を剥いていたので光りは見えてないのでしょう、あ、MP1減ってる。
ひき肉に手をあて卵を持ちます、タネが完成です!よく見たらみじん切りのタマネギが入っていました、どこから混入したんだ?
料理出来ない私には最高、手順間違えたら『失敗作』とか出来るのかな? その内実験しよう。
タネを片手にフライパンを持つ、絶妙な焼き加減のハンバーグが焼き上がりました!
「どうなってるんだろう…」
「もう、完成したのでしょうか!?」
「わぁ!おいしそう!
にんじんおわったよ!」
うん、お話する時間無いね、焼く時間とか切る時間とか一瞬でした。
「ありがとう、ちなみに切れる?」
「うん!いくよ!」
「ひぃ!?」「ちょっと待って!!」
「うん?」
マルシカクちゃんは包丁を振り上げて静止の呼びかけに止まり下ろす、斧じゃないんだから!?
皮むきはやったことあるけど他は出来ない、というか教わってないのかな
「みのりさんお手本見せてあげて」
「あ、は、はい!がんばりましゅ!」
みのりさんは人参を置くと深呼吸、左手で押さえて右手で包丁を真ん中にあてると左手を右手の上に置いて押し込んだ! 包丁は横になり倒れる、怖い!?
ツルッ! ドントントンツツッッ…
滑って飛んだ人参は流し台に落ちた
「「「・・・」」」
料理は誰かにでも教わるまでは自動でしかやらない方がいいね。
・・・。
自動料理のお味はその素材で出来る最高でした(経験範囲内(初))
この人参を切って水に浸しただけの生が一番好き、人参は変に料理しないに限る!
「みのりさんにお話するね?」
「あ、はい!お願いいたします」
食べながら、私の能力や戦闘についてマルシカクちゃんと説明するのをみのりさんもわざわざ一口一口食べてはフォークを置きながら聞いていた。
「このまま仲間になりますか?」
「どうかお願いいたしましゅ!」
「よろしくね」「おねえさんよろしく!」
不老はみんなと(歳や見た目が)離れたくはないので、という理由で受け入れていた。
『四天王のバラットを滅した。『魔法の秘薬』×3『吸血鬼の血』×3『吸血鬼の牙』×15を手に入れた。1Gをひろった。
『・・・残念だったな人間共よ!貴様等の糧は消し去ってやったぞ!』』
・・・ドロップ品がすごい!3倍だよ!3倍!
「やっぱりバラットだった」とか「お金はショボい」とかはどうでもいい。貴重レアドロップは1周目、2周目で目的を絞って何度やり直したことか…使えないコレクションアイテムなんだけどね…
〝糧〟は経験値だろう、ゲームでもそうだった。事実、私たちのステータスに変化は無し。
「魔法の秘薬・・・味が気になる」
「それ…なぁに…?」
マルシカクちゃんも引いているし、みのりさんも唾をのみこんで見ている。
出してみたら牛乳瓶に紫色のボコボコした液体が入っていた。やばいものって分かるけどせっかく体験出来るようになったから飲んでみたい・・・安全が保障されているからそう思えるだけの見た目だね…びっくりした…
「さっきの奴を倒した報酬?
これ飲むとMPの最大値…魔法を使える回数が増えるんだって」
「そうなの?」「そうなの…ですか…」
うん、毒物っぽ過ぎる
「全員分もらったからあるよ」
1本は取っておきたい欲求は抑えて残り2本も出した。 一番いらないの私だし!でも気になるの!
みのりさんは露骨に顔が引き攣っていた、対照的にマルシカクちゃんは必要な物って認識したらしくもう瓶を持って飲もうとしていた、速い!
「こくっ…こくっ…ん!んーっ!!おいしー!」
一気に半分くらい飲んで輝く笑顔を見せた、ちょっと口から垂れた濃いままの液体はすぐに拭われたが…(色が)良くない…
「私も・・・あ、ブドウジュースに似てる、おいしいね」
ボコボコしてるけど冷たいしドロドロしてないのは不思議、すごくおいしい!
私たちは笑い合って飲んでいたけどみのりさんは瓶とにらめっこしながら私たちをチラチラ見ていた。
「無理しないでいいよ」
「ひぅ…の、飲みます!」
私の言葉が後押しになったのかチビチビと飲み始めた。
あー、保存終了だぁ。もう手に入らないのかな…上限アップアイテムがたくさんあったらバランス悪いけど。 その考えも次第に明るくなっていくみのりさんを見て引っ込んだ。
MP上限が10上がる、ゲームでは+2だったからかなり上がったね
ん?ちょっと待って、メニューの『設定』に小さな赤丸が付いていたのに今気付く。選んでみると『経験値』が増えていた、迷わず選ぶと『均等』『平均』が表示された
「なんだこれ? 同じ意味じゃ…ないのかな?」
よく分からないので1回ポーズ状態にしにいって『用語・遊び方』に無いか調べてみたら追加で増えていた
『経験値『均等』
モンスターを倒した経験値が等しく仲間で分配される』
『経験値『平均』
モンスターを倒した経験値を仲間のレベルが同じになるように仲間内で分配されていく』
ふむふむ、えっと・・・?
『均等』は今まで通りなのは分かる。『平均』が・・・仲間・・今は3人、のレベルが同じに・・みのりさんがLV.1だから多くもらえて、私たちが少なくなるのか?
それとも、みのりさんが私たちのレベルに並ぶまでは全てみのりさん一人が総取りしていくのか?
まぁどっちでも、分かりやすくしたいから『平均』にしておこう。
・・・。
ずっと忙しかったから出来なかった『高画質大画面テレビ』を見ましょう!リモコンもあるよ!電池は無いけどMP1消費で30分間操作可能らしいハイテクです!技術違うか? チャンネルは5つある、田舎よりたくさんだ!
「これがテレビです!画が動きます!」
「は、はぁ…、あそこにも小さいのがありますけれど?」
「あれは・・・飾り・・でした…」
よく分からないみのりさんはどうしていいか分からない様子、マルシカクちゃんがワクワクしてるから切り替えていくよ!
「このリモコンでMPを使うことで操作出来るけど私にしか使えないみたいだから」
「はぁーい!」「・・・はい」
何かも分からないのに今言っても分からないよね。 では電源を入れましょう!
少し黒い画面が明るくなって待機、30秒くらいしたら映像が映る、カラーだ!
「『魔法少女ルナ』だ! 初回だよ!」
私の一番好きなアニメの1話が始まる。マルシカクちゃんはテレビで画が動いて喋っているのが不思議で興奮しててみのりさんは「どうなっているの!?」って感じで画面を見つめていた。
そこはこの2人、すぐに受け入れると何やら始まっている物語に見入っていた、もちろん私もね。
「〝あく〟がいっぱい!たおさないと!」
「うん、続きは次回だね、あればいいけど」
「え、ちょっと待ってください…先はないのでしょうか…」
2人共ドハマりしました、好きになってくれて嬉しい! 続き見たいよね、1週間が待ち遠しいんだよ
多分リモコンを握り1をもう1回押せば2話が流れる可能性があるけど
「こういうのはね、7日に1回続きが見れるのがお約束なんだよ」
「「えー!?」」
2人ともいい反応だ、この世界に曜日が無いから7日って何で?って思うだろうけど我慢して
「明日は2のボタンを見てみようね」
「はーい!」「はぁーい…」
テレビの良さが伝わったようだ、みのりさんの方が下がってる。他は何があるか気になるね?ニュースとかだったらがっかり過ぎるから止めてください。
・・・。
次の日、キュウカ村の家に移動してくると、みのりさんは聞いてはいたけどとオロオロと困惑していたよ。
「マルシカクちゃん、あらし峠の反対方向に行きたいけどどっち?」
「あっち!」
「正解!さすがマルシカクちゃん!」
「えへへ♪マルシカクに任せて!」
何でも覚えられちゃうマルシカクちゃんすごくない? 普通は「あらし峠って?」から始まるよ、覚えが悪い人なら大人でも中々覚えられないのに、広い中の一点から自分の位置を把握してるんだよ!いい子いい子しちゃうよ!
「みのりさん、あっちに『さかさま洞窟』があります、ではあらし峠はどっちにありますか?」
「ふぇ?あ、あの、あらし峠ってわたくし知らないのですが…」
「・・・今の会話聞いてましたか?」
「は、はいぃ…? あらし峠の反対側が行きたいという場所で、あちら側だとマルシカク様がおこちゃえに…」
理解してた、しっかり聞いてた、でも繋がらないね
「行こっか!」
「うん!」
「・・・え…待ってください…」
・・・。
戦いはマルシカクちゃんの範囲攻撃一撃で進んでいた
「はへぇ…こうやって落ち着いてみるとすごいですね!」
「ありがとー!おねえさんのダウンのがあるとなにかスッといくのもすごいよ!」
マルシカクちゃんが鋭いだけかもしれないけど実際に攻撃魔法を使っている方にも分かるのかな
「ありがとうございます、マルシカク様は本当に素晴らしいお方ですね」
久しぶりに神々しさを感じる、みのりさんは頼りなさとしっかりしてそうな割合が7:3くらいだけど混ざっているせいかダメな感じが強いって私は感じている、だから話しやすいしあんまり気にしないで気軽に接すれる。変態僧侶(女)様ありがとう。
「みのりさんもだよ、女神の如き存在のよう」
「ふうぇ!? め、めぎゃみしゃまにゃんて!おしょれおおいでしゅよぉ!」
半日くらい歩いているとさかさま洞窟に着いたので方針を立てる
「洞窟自体は半日もあれば抜けられます、ボス・・ちょっとだけ強いモンスターはいますが昨日戦っていたあれより遥かに弱いですから問題は無いです」
ここで切ってみんなが分かってくれたことを確認する。
「私の都合ですが洞窟を回りたいんです…、いいでしょうか?」
「ユウナ様、わたくしのことは気にしなくてよろしいですよ、貴女様に付いて行きますので、どうかよろしくお願いしますね♪」
こことばかりにズルい!1回も噛まない神秘の僧侶様になるなんて
「うん!いっぱい楽しいよね!おねえちゃんたちといっぱいあそべてマルシカクはそともすきだよ!」
「ありがとう!」
片膝立ちでバッと手を広げるとマルシカクちゃんが飛び込む、あーマルシカクちゃん大好き!みのりさんも人として大好き
「いい仲間に恵まれたよぉ」
「マルシカクはおよめさんだよ♡」
「うん!私もお嫁さん♡」
「ふふふ、ありがとうごじゃい・・ございましゅ・・うぅぅ…」
反対になったみのりさんにほっこりするよ。
みのりさんのレベルアップは速かった、私たちは変わらないから総取りの方だったと思う。
みのりLV.15:妄想僧侶(女),16歳(不老、不死)
HP:45 MP:47 ATK:7 DEF:14 MAT:32 MGR:28 CT:3
偏った強さだね、HPやATKは無いけどMATやMGRは高い。強い相手の時はマルシカクちゃんより優先して防御アップをかけた方がいいね。
微妙な変化だけど変態が妄想になっているから私たちを見て色々しているのだろうか、レベル上がってもCTが3なのはそのせいなのか・・・見た目はきれい系なのに。
残念ながらテレビはお外では見られないようだった。
「ユウナ様…ごめんなさい…」
夜中になんだろうと起こされる、どうしたのか聞いたら申し訳なさそうにトイレと言われて、行く前に渡してなかったなとこっちが申し訳なくなったのだった。
・・・。
さかさま洞窟はモンスターとの遭遇率が軽めの代わりに複雑な構造になっていて長い時間で消耗させられていくタイプであり、ゲームなら通った道の地図が出るので分かりやすいが現実ではそうもいかないのである。
「1歩、2歩・・・うん、一マスこんなものか」
優那は入ってすぐに壁から壁と洞窟内のゲームでの一マス分の距離を大体で推測を立てる。
今まで通った村や道といった場所場所はゲームの移動の同じ一マス分でもそれぞれ違った距離だった、道が分かりやすいならいいがそうでないなら探索もするし準備は必要であると考えた。
これこそ世界を体験しているようで楽しい! イベントもいいがただの探索でもワクワクする。
「おねえちゃん、楽しそう」
「そうですね、何をしているかはわたくしには分かりませんが楽しくなってきます」
「うん!」
人の楽しみが自分の楽しみだね
「左壁伝いに移動するね」
「うん!」「はい!」
思っていたより暗く無く奥まで見通せるくらいにぼんやりと明るかった
・・・この(岩の)壁削ってみたい
もちろん意味は無いけど好奇心で、そんな衝動は抑えてマルシカクちゃんに抱っこの許可をもらった
「おねえちゃん楽しい?」
「うん!楽しいしマルシカクちゃん大好き」
「あはは、おねえちゃん大好き!」
チュッと軽く口を合わせて顔を寄せながら歩く、結構、力付いた気がするよ
「・・・あふぅ、わたくしも少ししてみたいですぅ…」
大きな呟き聞こえてるよ?
縦に天井から黒が入った壁がある、いかにも何かありますの壁。マルシカクちゃんを下ろしてその前に立つ
「『調べる』は壁を触ればいいのかな」
ぺたぺたと黒い部分を触ってみるが何も起こらない、予想通りだけど空しい。宝箱は一回も見なかったから多分現れないなぁっとは思ってた
「マルシカクもやっていい?」
「何かあるのでしょうか?」
マルシカクちゃんに許可を出すと黒い部分を端から触りはじめたて癒やされた
「ここはパワースポット、癒しの恩恵を受けられる場所で黒い部分を触ると気持ちが安らぐ効果があるんですよ!」
「ほへぇ…そんな場所もあるのですねぇ? わたくしもやってみましゅ…みましょう!」
素直ですねー、2人で微笑ましくていくらでも見てられるね。効果絶大です。
あ、モンスターか・・・きた!
「〝レッドスパイダー〟がきたよ、弱いからこれ使ってみよう」
アイテムから今まで忘れていた弓を出してマルシカクちゃんに渡す、
「あ、マァマおねえちゃんの、わすれた!」
マルシカクちゃんも忘れてたみたい、みのりさんが何で弓?みたいな感じだ
「マァマおねえちゃん様とは?」
そっちだったか!
「んー、みのりさんが求めていた人の幼なじみ?」
「ふえ?わたくしが求めた・・・」
言ってからボッと顔を赤くした
「おねえちゃん!おねえちゃん!やっつけた!」
ふうぇ!?一発成功?嘘だ!?ターンは回ってきてないよ?
「使い方分かったの?」
「うん!マァマおねえちゃんが使ってたの見たから」
天才だ!まさか使いこなすなんて!
「マルシカクちゃんすごいね!かわい過ぎだよ!」
ぎゅーってしたらぎゅーって返される。
赤の糸ゲット、もっと欲しいからじゃんじゃん探索だ!
先は行き止まりなので戻り右壁の方に沿って歩いていくとまた黒い壁が見える
「気をつけてね、こっちの壁はバットスポットで心をかき乱す効果があるから」
「そ、そうなのですね…気を付けましょう」
みのりさんの反応が面白い、見ないように縮こまって前を通っていた。・・・ピトリ
「ゆ!ユウナ様!にゃにを!あー!何故か気持ち…ザワザワします!」
そんな横に並びみのりさんの手を取り触れさせたら慌てふためき最後には胸を両手で押さえて祈りを捧げているような格好に
「ユウナ様、マルシカク様、お兄様
先立つ不幸をお許しくだちゃ……」
悲劇の感動シーンも台無しである、私たちお兄様に勝ったよ
「死なないって、心がかき乱されて何で死ぬの
マルシカクちゃんどう?」
マルシカクちゃんに指差しで触ってと合図していた
「さっきとおなじ!」
「ふぇ? 先ほどと同じ癒しの効果が?」
「無いよ?同じ黒い壁です」
みるみる内にぷるぷると赤くなっていったみのりさん、恥ずかしそうに立ち上がり服を軽く払う
「かわいいですね?」
「ぅぅ…あ、ありがとうございましゅでしゅ…」
こんな純粋な人いないからものすごくかわいく見える、まぁマルシカクちゃんはその百倍はかわいいですけど。
今度は先に進むと行き止まり、どうするの?の視線を受けながら壁から一歩、二歩、三歩ちょい戻る。
「壁を調べまーす!」
さわさわする、多分何も起こらないけどゲームで調べると『おや、壁の隙間に?』の会話が表れて秘密部屋に行ける、期待薄だけどちょっとワクワク
・・・何も起こらない
「隠し部屋無しかぁ」
残念に思ってたらマルシカクちゃんがすぐ前で何か見つけた
「おねえちゃん、何かあるよ?」
高さもあるのかい! 見つけたのは赤いボタン、マルシカクちゃんに立っててもらい色々な場所から見てみる、離れては見えないし目視で眺め横に歩いて見ても見えない、本当にその場所に立って屈んで見ないと見えないようになっていた
「マルシカクちゃんお手柄だよ♪」
「えへへ♪」
かわいい!さぁ押してみよう、岩の扉よオープン!
・・・ポチッ
『くす♪ 何も起こらないよ♪』
天の声が聞こえた、周りに誰もいない!あー!
「なんにもないね?」
「そうだね、でも発見したりして面白かったね」
「うん!」
戻りましょうか… でも何も無いよりはいいからありがとう!
・・・。
モンスターを相手しながら洞窟をあっちへこっちへカクカクと進んでいる、マスを基準にして行動を合わせているからどうしてもそうなり、移動幅が増えて結構モンスターとの戦闘もしながらだった。
弓はマルシカクちゃんはイマイチ性に合わないようでいざ時用の武器とだけになり、私は前に矢が飛ぶことすら無かった、マルシカクちゃん凄すぎる!
「水が流れてる、きれいな水だから飲めるかな?」
『水』はあるけど自然に流れる水から飲むなんてしないし、よくテレビで「冷たくておいしい」って聞くから飲んでみたい
「予めキュアをかければ何かあっても大丈夫だと思います」
「そうなんだ、よく知ってるね」
「お兄様に…それに…必要でしたから…」
そーだよね、買えなかったんだもんね
「キュア!」
「へぅ!? 何故わたくしに?」
「スッキリするから?」
「は、はい!すごくスッキリしましゅ!……」
みんなで水を飲んでみたら「おいしい」らしい、私にはただの水だと感じたのだった。
・・・。
「誰か来たよ、止まって」
足音と反響するほどの大きな声がする。私たちはすぐに身を潜めて様子をみた。
『こっちだったでしょ!』
『いや、あっちだ、ほら騒ぐから寄ってきたじゃないか!』
『それはらんだむでしょ!あーあのクモ厄介だわ!』
・・・もうこんな所まで、いや遅いのか?
濃い日がいっぱいだったからどのくらい前の出来事か忘れちゃったよ。とにかく知り合いかぁ
「みのりさんの待ち人たちだよ」
「ふぇ…どなたでしょう…」
「いわゆる勇者様一行、レッドスパイダーを厄介にしてるからギリギリレベルで挑戦中だね」
「わたくし勇者様に会いたいなどと言いましたでしょうか?」
「うん」
言って無いけど似たような雰囲気は出した…よね?
「・・・そうでしたか、しかしもうその必要は無くなりました。
ユウナ様方にであえて、巡りえぁえて…、仲間に入りぇて…、いただきとても幸せですので」
噛み噛みだねぇ、でも嬉しいよ、一方的じゃなくて恩返ししようって気もすごく伝わってるよ!
「ありがとう!ちゃんと伝わってるからね♪
じゃあ、見送りでいい?」
「え!? 勇者様を助けないのでしょうか?」
さすが聖人様、困ってて見過ごす選択肢は無かったか。道案内になって、また戻るとか・・・よりも勇者様たちと一緒に行動がヤダよ
「・・・分かった、助け・・」
『キャア!』
『油断した、他にいたのか!』
・・・幼なじみの声が悲鳴から消えた死に戻りした?
「ないで、勇者様が追うのを待とっか!」
「・・え…」
「マルシカクちゃんもそれでいい?」
「うん、おねえちゃんのいうことは守るから」
「大好き♡」
「うん♡」
1人納得してないようだけど自分だけ動いてもって思っているから静かにし直して私たちを緩んだ顔で見つめていた。
静かになった、足音が遠ざかる。勝てたんだ、幼なじみを迎えに帰るのかな
「終わったみたいだね、行こっか?」
マルシカクちゃんが離れ際にグリグリとしてから離れるのがすごいきた、今すぐ横になりたい!
「お日様だぁ!」
「わぁーい!」
「・・わ、ワーイ」
無理してやらなくていうですよ?
勇者様の姿は見かけなかったので抜けたか倒れ戻ったか。 洞窟を抜けると田んぼが並ぶ真ん中に道が一直線、ゲームでは田間を歩けたがそういうわけにはいかないと思う、ここを進めば中間だね
・・・ぶぅ…
「「「・・・」」」
嫌な音が聞こえて一気に爽やかな空気が飛んでいった気がした
(・・・何か布をかすめた音)
うえぇ…マルシカクちゃんそっち見ちゃダメ!抱き締めた、外の入口の陰にしゃがんでいたの気が付かなかった!! チラっと見たらまさかいた、声が出なかったのはみんな感動してたからである意味よかった…
「マルシカクちゃん、みのりさん、ごめんね!」
2人にしっかり謝ってから『アイテム』に入れて洞窟の入口の中に引き返す
「うぅぅ…気持ち悪い…」
ちょっと落ち着いてから2人を出したら誰も喋らない、気まずい…
「きゅ!急にごめんね!」
「は、はぅ…い、いいいぇ!ありあとうございました! は、はい! ユウナ様のなら!い、いぇぇぇ!? 何でもありましぇん!!」
「落ち着いて!」
みのりさんの妄想が漏れてる!? 留めて!!
ショックだったんだ! 今日は休もうか!でも村は近いし!
「おにいちゃんは?」
「「・・・」」
抱き付いたまま離れない、マルシカクちゃんはチラっとですぐに隠したからわからなかったかな、よかった!そこだけが救いだった…
「休んでたところ邪魔しちゃいけないから戻ったんだよ」
「そうだね!」
うん、うん、後十分くらいはここにいよ・・・
うん?強制ポーズ状態?もしかして何か禁忌に触れちゃったかな・・・
「これはどうしたのでしょうか?」
「なんか変だね?」
え!?マルシカクちゃんとみのりさんも動いている、そういえば私も指以外も動ける、周りは音ひとつ無くなった世界だけど?
『条件に達したので暫くお待ち下さい』
私の前に会話ウィンドウが映る
「とりあえず2人とも近くに来てくれる?」
「は、はい!」「うん!」
何か分からないけど何か起こる、みんな動けることに意味があるはず、こんなときこそ冷静にいないと
[なんだ何が?]
急に私たちの目の前に表れるスクリーン映像、映っていたのはコントローラーを持った・・・
「ゆうや!?」
[え!?姉ちゃん!? い、いや、優那か!]
言い直さなくてもいいのに、紛れもない私の弟のゆうやだった。
「ひぇ! だ、どなたでしょうか?」
「えっと、私の弟です」
みのりさんにも見えてる、マルシカクちゃんもかな
[今、どこにいるんだ!? 無事なんだな?]
ふふ、普段素っ気ないのに家族思いなのは変わらないね。
「元気だよ、場所は知っての通り『勇者のRPG』にいる、お嫁さんも出来たんだ♪」
ちょいちょいとマルシカクちゃんを呼んで抱き上げる
「マルシカクだよ!おねえちゃんのおよめさんです!」
ゆうやは魂が抜けたみたいにボーっとしてしまった、その間にみのりさんにも挨拶してもらう
「みのりです! えと、僧侶でしゅ! 弟様、ユウナ様はわたくしがしあわしぇにしましゅ!…ぅぅ」
・・貴女はお嫁さんじゃないよ? 親友です!
『まもなく通信を終了します』
もうか!?そりゃそうだ、繋がらない世界を繋げているんだから
「ゆうや、帰るつもりは無い、お父さんにも「幸せいっぱい、マルシカクちゃん大好き♡」と伝えてね、元気でね!」
[帰れないのか!? 携帯はど・・]
『通信を終了しました』
ゆうやごめんね、残り時間も取っちゃって喋れなかったね…。帰れ無いじゃないよ?安心して、帰らないの!
「携帯・・・? 使えないだろうから携帯会社に連絡入れて家に置いてきたはずでは」
「けいたいって?」
「あ、みんな動けたっけ、ってポーズ切れてる」
まさかの嬉しいイベントだったなぁ、ありがとうございます!
「・・・」
みのりさんも複雑そうな感じだし家族について落ち着いてからお話ししよう。
・・・。
村を目指してすぐに洞窟を出た、通信の出来事があったせいで何もかも忘れてね。
「お前ら無事だったんだな、仲間になってくれないか?」
あ、忘れてた… しかし、待っているとは
さっき勇者も後ろ見て目があったはずなのにどんな神経してるんだ! みのりさんも目が合わせられてないよ
「お断りします! マァマさんはどうしたのですか?」
みのりさんから驚いた視線を感じる、嘘は苦手だよね、私たちあの事は知らない設定だよ
勇者は目を伏せたけど気取られないように素に戻り顔を上げた
「ああ、覚えていてくれたんだな
あいつとは今、別行動しているんだ、今から合流する予定なんだ」
「そうでしたか、ではこの先の村に行くのでこれで失礼します」
「村まで守ってやるよ」
見た限り瀕死寸前ですけど、アイテム尽きて村にまでもギリギリそうですけど、元からだけど、さっきの見たせいか余計に嫌悪しか沸かない
「マルシカクがいるからだいじょーぶだよ!」
「わ、わたくしもいます!」
勇者について一言二言で分かったのか、聖人みのりさんまで頑張って出てきてくれた
さすがの勇者も引き下がる、すると、横の田んぼからピョンと人の膝くらいはある大きな大きなカエルが出てきて様子を窺っていた
「わぁ!? 小さいと気持ち悪いけど、大きいからか可愛く見えるね?」
「そうかな?おねえちゃんの方がかわいい!」
「マルシカクちゃんと比べちゃったら以上が無くなっちゃうよ」
「「えへへ」」
持ち上げて抱き付いた、かわいい!好き!
〝アメガエル〟だ! 急に出て驚いたけどそれだけ、洞窟抜けたこの辺のモンスターならもう装備脱いでも大丈夫くらい。
「くっ!カエルか!? グッ!」
ほんわかのんびりな私たちと違って勇者はすぐに反応して槍を構えるが身体が重そうだ。あ、武器変えしてる。
私といることでカエルも様子を見ていたが勇者が戦意を見せたことで顎をグッと上げて一気に口から勇者に向かい飴玉を3発はきだした。勇者はそれをギリギリで横に跳び避けた。
「し、しまった!」
避けて気付いたのか、飴玉の先には私とマルシカクちゃんが抱き合っている。 勇者は気合で立ち上がるが間に合うはずもなく動く間もなく2人の体に着弾する。
「大丈夫ですか?」
「「うん!」」
心配してくれるみのりさん優しいね、影響無いので幸せいっぱいですから邪魔しないで状態です。
勇者がボーっとしてる、モンスターを前に油断禁物だよ?
カエルは飴玉を3発はきだすとこっちを向いてる勇者の頬に当たって倒れた
「勇者様!?」
勇者はまだ消えない、HP1とかだろうか?仕方ないねぇ
「マルシカクちゃん」
「うん、ギガサンダー」
杖を出すと片手でカエルに向けてオーバーキル攻撃、サンダーで十分だよ
『モンスターをやっつけた。『飴玉』×3、『カエルの皮』×3を手に入れた。11G手に入れた。』
「飴玉だよ、みのりさんもどうぞ」
「やったー!あーん」
「ありがとうございましゅ、えと、あ、あーん!」
マルシカクちゃんかわいい! みのりさんまで、いいけどね
味は何だろう、不味くはないけどって感じで不思議な味だった。
「傷薬いります?」
「・・・もらう」
放置はさすがに引けたので回復効果のあるアイテムを渡して勇者は置いて先に進みました
「あれが勇者です」
「・・・そうなのですね…」
みのりさんは大変微妙な顔をしていました。