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優那が消えた家で思い出す

 招待を受け、指定された日・時間にゲームの前から優那は消えた。


「消えた!? 優那!姉ちゃん!」

「・・・ぉぉ」

 突如消えてしまった優那に八割方はあるわけ無いと『何も起こらないゲーム会社のイタズラ』だと思っていた弟のゆうやはゲーム機とテレビを何度も確認している

「本当にあの子の好きな場所に行ったんだね」

 冷静に呟くのは優那の父の(ひろし)であり、彼は昨夜の招待を完全に信じていた。

 思い出にふけながら優那の幸せを願っていた。

~~~~~

 弘は貧乏故に、子供2人に窮屈な暮らしをさせていたことに負い目を感じていた。

 ゆうやは誰とでも仲良くなれて社交的で多趣味、器量もよく友達と遊びに行っていたが優那は全くの逆であった。 今では信じられないが幼稚園でイジメにあってから暗くなってしまい、小学校に入ると更にイジメを受け続けて一時家に(・・)ひきこもるようになる。

 しかし、中学年にもなると家庭の状況が分かって理解した、無駄となる事は辞めて登校するようになる。

「お父さん、ご飯いつもおいしいよ」

 貼り付けたような笑顔だったが嘘で無い本音だったのは伝わり嬉しかった。 また笑えるようになってくれと願うばかりである。

 優那も高学年になると笑顔が増える、行事は全部見送るのは仕方ない。

 そんな優那を心から変えたのは中学1年生の2学期にあった職業体験、優那はイヤイヤだったが課程により絶対なので参加、班で決まった保育園に行った。

 帰ってきた優那はどこかぼぉーっとしていて体調が悪いか尋ねたら

「好きな子が出来たの…」

と言われてすごく喜んだ、人に興味も無く関わりは極力避けていた優那に好きな人がと思っていた

「その人は誰?」

 繊細な内容にゆうやが不躾に聞くからちょっと心配になったが気にすること無く答えてくれる

「ユナちゃん」

「え?女?」

 わたしもそう思った、まさか相手は女性であるとはおもわず難しいなぁと考えてしまったが次の答えにもっと厳しいことを悟ることになる

「うん、ユナちゃんかわいいの!甘えてくれてすごくドキドキしたんだ!」

 あー、頼らることの快感みたいなものだ…、しかも相手は職業体験先の園児

「ふぅ… そのユナちゃん以外には甘えてくれる子はいなかったの?」

 ゆうやも同じことを感じたみたいで切なくなる、本当にこういうことが得意な息子だよ

「いた、いたよ? 同じようにいっぱい来るの!楽しかったよ、班の子は渋い顔してたけど」

 子供が好きな子ってあんまりいないからね…

「その子たちは可愛かった?」

「うん、かわいかったよ。憎たらしいのもいるけどそういう子と遊びに持ち込むのも面白かったよ」

「・・・本気だね」

 うん、優那は他の子とは違うユナちゃんとかいう子に本当に恋しちゃったんだね


 その日から積極的になり始める、自分で先生に聞いたりしながら保育園の体験が出来る方法を聞いて、懇意にしてくれた先生が個人的に手を回してくれて〝ボランティア〟としてやらせてくれる場所を探してくれて、優那の休日の日課となっていた。

 一番近い保育園(ユナちゃんがいる場所)も結構あって優那の生活は充実して楽しそうだった。

「ゆうや…今日、今から部屋でやる・・」

 姉弟で一部屋なので遭遇事故が起きる可能性もあるので優那は始めに宣言している、何をとは言わないが、初めての時(中学2年生になった頃)に顔を赤らめながらハッキリと言われて戸惑った。ゆうやは全く興味無いから(自分も)気まずくならないように考慮するだけとすぐに理解し割り切った。


「お父さん、ユナちゃん卒園しちゃったんだ…」

「それは残念だけどお祝いしてあげた?」

「うん、もちろん…」

 優那の中学とユナちゃんの保育園は1年違いだったようで、相当落ち込んでいたがすぐに変化する


「なんか、他の女の子にもキュンとくるように… あはは…」

 自分も本当に本気になれないけど想ってしまっている感じであった。いけない事と自覚しているようで切ない…

「その子たちと仲良くしたいかい?」

「・・・うん!」

 ならないと理解していても続けるほど好きなことが出来たのは喜ばしいこと、自分で分別して分かっていながらも続けるならいいだろう

 行く気の無かった高校に行くことを決めたのはこれが理由である。

~~~~~

「父さん、俺、ここにまた住んでいいかな?」

「ゆうやに任せるよ、それに合わせるからさ」

「・・・いつもありがと」

 この次の日からゆうやはコントローラーを買って戻ってきて、暇が出来ると我が家にある唯一のゲームをやっていたのだった。

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