ユウナと村の子
キュウカ村、そこはゲーム『勇者のRPG』の主人公の勇者「(好きな名前を入れて下さい)」が魔王の脅威に立ち上がり旅に出て三番目に訪れる村である。 その村の道の真ん中に黒い布を纏まった怪しい商売人が現れた!
「・・・うぅん…あ!ここは『勇者のRPG』の中?!!」
目が覚めて周りを確認しようとしたが、自分が何も着ていないことを自覚して恥ずかしくなり蹲る
「ふ、服は・・・あれ?ない…」
背負っていたリュックを探すが見つからずに慌てて周りを見ると自分に触れていない黒い布は自分に合わせて動いていることに気付いた。
とりあえず深呼吸して落ち着いて改めて周囲を見渡すと田舎の民家が並び、どこからか動物や人達の声が聞こえてきて自分の世界じゃないことを実感してくる。
わぁ!本当に……あぅ…トイレに行きたい…。まさか尿意まで移されたの?!
「えと、たしか、たしか! トイレは・・・」
ゲーム内でのトイレの場所を思い出すと他人の家にあった・・それだけだった!
限界を感じて見えないなら茂みへと行こうとした時に子供とその母親が走ってきていた
「マルシカク!待ちなさい!」
「やだ!」
・・はやく通り過ぎて!
「かくれさせて!」
ちょっとずつ脇に半分くらい移動した時に後ろの布が捲られ、女の子が入ってくるとそのままお尻にぶつかる。その時に布も子供に合わせて少し広がったようだ
・・・やばい!?見られちゃった!! 衝撃が!?
「・・・きれぇ」
え?綺麗? あ、本格的にやばいかも…
「御手洗いに行きたいの…」
「なぁに、どこいきたいの?」
伝わらないようで恥ずかしいがトイレと言うと家に連れて行ってくれると言われる
「ごめんね…もう歩けないかも…」
「そうなの?! これつかって!」
もう恥ずかしさとか無く限界だったところに少女は本当に心配そうな顔で小っちゃな巾着袋を渡してくれる
これ何?こんなアイテム知らないよ?
「これ何かな?」
「しらないの?トイレ、はやくしないと!!」
えー!?この中に!? あ、もう!
「わ、わかったありがと!」
恥も無く、かなり急いで巾着袋を開いてその中に・・・
・・・。
ずっとジーっと見られていたけどなんとか無事に済ませることが出来た。
「これ、不思議だね? こんな小さいのに!」
ンッと手を出されるから自然と返して・・・あれ?消えた?
「???、なんでふく着てないの?」
私の言葉は理解出来なかったようでそのまま疑問に思われていた裸のことを聞かれて、私はこのアイテムに対する興奮も急激に冷め自分の状態を恥ずかしく感じた。
「ほら! それは… あ! 今、着替えていたんだけど、トイレに行きたくなっちゃって…。 ・・・これはないね…」
「そっかぁ!」
信じてくれた!? 道端だし下着も着ていない苦しい言い訳だったけど素直な子でよかった…でも、うん・・・。
大きく息を吐いて後ろを振り向くと土下座しているさっきの母親が!? 周りにもざわざわと何人もの人冷や汗を垂らしていた。 私が振り向いたことで何か訴え始めて気付かされた
「ど、どうか!娘を返して下さい!! 私が代わりにはなりませんでしょうか!!」
「え!? む、娘? あ、き、君!お母さん呼んでるよ」
私、この子を匿ったのか攫ったのかに思われちゃったんだ!?
でも言い方から私が子供を殺しそうって感じがされている? 自分で言うのもだけど私の顔は優しい顔つきだと思うけど
「あ、そうだった! おこられてにげてたんだっけ! えへへ♪わすれてた」
うわぁ、かわいい! ・・・じゃなくて
「お姉ちゃんも恥ずかしいから出てってくれるかな?」
「ごめんね!きれぇなおねえちゃん」
子供はぺらっと母親の前の方から出ていくと母親の元に行って手を振られたが、その頭を母親が何度も下げさせて可哀想だよ
「あ、ありがとうございます!ありがとうございます! 申し訳ありませんでした!」
「うぅ…いたい!おねえちゃんに何にもしてないよぉ!」
「そ、そうですよ! むしろ助けてもらった…というか…感謝していますので」
ホント離してあげて下さい…。・・・あれ?急に静まり返って皆さんボーっとしてる? 子供だけが解放されて嬉しそうに手を振っていた
???、はやく確認したいことがたくさんあるから1人になりたいんだけどなぁ…
「・・・失礼ですが、本日もお店は開いて頂けるのでしょうか?」
何それ?私は商売人設定なの? なんにも確認していないから分かんないよ!どうしよう!
とりあえず顔出し場所に顔を寄せる
「えーっと…、今日は遊びに来たのですからお店を開くかは分からないですよ…」
大丈夫?それっぽい?やれば出来るかも!
・・・喋ったぞ!?女の子の声だ!
・・・頷くか首振るだけだったよな?なぁ?
・・・魔王の手下ってホントなのか?滅ばされない?
あれ?ヒソヒソと話す人が増えたよ!? うまく聞き取れないけど私に向いてる、やっぱり適当過ぎたんだ!
「おねえちゃん、遊びにきたんだね!
きがえたら遊ぼーね!」
「え?う、うん!喜んで」
とりあえず騒がしいけど一旦お開きの流れになったからはやく服を着たいし出来ることを確認したい、知らないことを始めたらまずは遊び方を確認からやるのに何で恥ずかしい思いをしなければいけなかったんだろう…
でもあの子…私の悪い癖が出たかも……かわいかったなぁ…
・・・。
注目を浴びながらも休める所を聞こうと母親に尋ねるとビクッとしながらも娘の様子を見て家にとお呼ばれされ、断れないでそのまま付いて行くことになった。
「あ、あの、御名前…い、いや!何でもありません!スミマセン!スミマセン!」
何で怖がられているのかショックだけどこんな黒い怪しい布が取り巻いていたら怖いのかな?
「おねえちゃんのお顔ね、いまはみえないけどかわいいかったよ!」
「・・そうなの? 本当…?
あ、ごめんなさい…」
娘からの言葉に顔を見ようとして失礼と思ったのかすぐに謝られる・・・顔が見えないの?
「あの、私の顔は見えていないのでしょうか?」
布はおでこの上辺りの位置で浮いているので顔は殆ど見えているはずだけど?と思っていたのに母娘揃って頷いて「まっくら」と言われた、そこで『勇者のRPG』のとあるキャラが不意に出てくる
黒い衣・顔が見えない・商売人+目だけが妖しく浮かぶ謎キャラ『???』、このキャラにセリフは無く『怪しい商売人は頷いた』とかしかない。
もちろん中身の人?なんかは出てこなかったので男か女かなんて分からないけど私がそこにハマった可能性が出てきた・・・
それにしても、現実だとゲームのように道に家が付いている感じじゃないから(地理がわからず)この村が何所なのか分からないよ。あと、いい加減恥ずかしさが限界…、マルシカクちゃん?がばらさないでくれているのはありがとーだよ!
「・・どうぞ、入って下さい」
やっと着いた!遠いなぁ… セントセイバーさん(母親)はまだ恐る恐るだけど始めの怯えまではいかないくらいにはなってくれていた。名前を言われた時に名前が相手の上に数秒間だけ表示されて面白かった。
中は二部屋で着替えたいと頼むと奥の部屋でどうぞと通してくれた、半脅迫になっちゃうのかなぁ…さみしい…。
さて、どうしましょう。リュックが無い、この浮いてる布は捲れるけど取れない、コントローラーも・・・そういえばコントローラーは? なんか『ゲーム機能』が使えるとかだからコントローラーが必要なんじゃないの?
「コントローラー、出てください・・」
ボソリと呟いてみると目の前に光のコントローラーが現れた! やったぁ!
コントローラーを握ると発光が止んだので、とりあえず基本のスタートボタンを押してみる
「え!?」
世界が止まったような感覚、自分も動けないが指だけは動かせる
「あー、あー」
声も出せるし呼吸もしていた、なんか怖かったけれどいわゆる〝ポーズ〟の静止状態なんだと思うと納得出来たので段々と落ち着いてきた
「このゲームにポーズは無かったんだけど、なんか面白いね」
メニューを開く時に困るから丁度いいなぁっとしっかり覚えておくことにする
次にボタンの1つを押してみると、こちらの世界に来る時にさんざん見たように目の前にメニュー画面が現れた
「ゲームと同じだね!」
『状態』『装備』『魔法』『アイテム』『記録』『設定』の6つの項目が3つずつ2列で並んでいた
まずは・・・『設定』に何があるか調べるために▶を合わせて決定すると『用語・遊び方』と『操作方法』が表示された
「『音』とか『ボタン』とかは無いね、『操作方法』ってなんだろう?」
『操作方法』を押すと『コントローラー』と『思考』が出てきた
「思考って楽そうだね、やってみよう」
選んでみる、『用語・遊び方』と思ってみると次々に表示されては飛ばされていって点いては消えるが繰り返されてひとつの画面が表示された
『トイレ
家屋・建物にある設備。また、アイテム『携帯トイレ(使い捨て)』を使う』
「わ、わ、わ、調べてないよ!? ちょっと思っ・・・また!?」
『恥ずかしい
感情の1つ。』
「シンプル!? でも、ゲームの用語辞書では簡単にしか載ってないのあったなぁ」
『かわいい』『勇者の倒し方』『気持ちいい』『商売人』『トイレ(2度目)』『村人と話す』・・・
黙って『操作方法』『コントローラー』だけを考えて元に戻した。無心になってしたいことだけを浮かべるのは難しい…
それにしても(多分、私が使った)携帯トイレって使い捨てだったんだ…、マルシカクちゃんに悪いことしちゃったな・・・。
でも、トイレといい、チラっと見えた勇者の倒し方といい今の私の『用語・遊び方』に対応していたから後でじっくりと読むことにしよう。
次に『アイテム』を選ぶと『リュック』があって、更に押すとリュックに入っていた物が全て一覧にあった。枠外には1/20と書いてあるので荷物が20個は嵩張らないで持てるのだろうと予測出来たのはとても嬉しかった。
「ふふふ、やっとこの格好とはおさらばだね♪」
『装備』を意気揚々と押したら『持ち物はありません』、リュックに入っているのは反映されないようで面倒くさいが『取り出す』をしにいったのだった。
装備の項目は『頭』『服』『裾着』『足』でそれぞれ更に細かくなっていた。
『服』を押すと『上着』の場所に〝あやしいマント〟が付いていて外すと見事に一瞬で全裸になった
「着替えが面倒くさいのか楽なのか分からないね…」
苦労しながらも持ってきた下着や服を出して装備すると落ち着けた気がした。
他は、今調べることはない。最後に『状態』を見てみると〝自分をつくった〟時の自分がうつっていた
「あれ?一、十、百、・・・、842万3966G! ゲームで持ってたそのままの所持金だよ!?」
アハ…ハハハ……、携帯トイレ買ってあげられる…
▶を所持金に合わせられて10G、100G、1000G、10000Gは『アイテム』に皮袋になって移動出来るようなのでいつでも使えるように1つずつ移動しておいた
うん、ポーズ解除
「コントローラー・・・仕舞い? コントローラー・・・終わり…? あ、コントローラー消えて下さい! やった、消えた♪」
「おねえちゃん? なぁに?どぉしたの?」
大きな声を出してしまい、マルシカクちゃんが見に来てくれた
「何でもないよ! 着替え終わったんだ」
「わぁ、きれぇ♪ さっきもきれぇで気持ちよかったけどかわいいのぉ♪」
パフっとわざわざ後ろに回って前かがみにお尻に顔を付けて喜んでくれた、かわいいなぁ♪
・・・。
そして引っ張られお茶の間に出た時に母親に驚かれて口をパクパクしていたにはマルシカクちゃんと笑っちゃったなぁ
母親さんと娘ちゃんの他に父親さんがいるようで今は畑に出ているらしい。名前が、『おまかせ』だよ!ひどいよね
「あの、自分の家が欲しいのですが『空き家』は何処かありますか?」
「い、家!ですか!
はい、うちの隣は空き家ですが…」
「おねえちゃん、となりの家にくるの♪」
「うん、たまにしかいないだろうけどゆっくり出来る家が欲しいかな?って」
母親は自分がとやかく言えることでないのが分かっているからか恐怖もあるだろうが喜ぶ娘に微笑んでいた。
・・・ゲームじゃないんだなぁ
実感して家族を思い出し寂しくなったがここも楽しいと予感してわくわくもしてくる
「空き家はどうやって手続きすればいいんでしょうか?」
ゲームなら家の前の看板を調べると『購入しますか?』と出てワープ場所となる
「はい、村長にお話しをして、登録すれば大丈夫だと思いますよ、私は生まれてずっとこの家に住んでいるので疎いのですよ…」
「分かりました、ありがとうございます!
早速、行ってみたいと思いますね!」
「おねえちゃん、そんちょー分かる?」
もちろん分かりません!が探し歩くのも醍醐味だよね
「分かんないけど探してみるよ♪」
「マルシカクが付いていっていーい?」
「え…それは…、あ、し、失礼しました…」
声を出したのは私に怯えていた母親、当然、娘を預けることはしたくないだろうなぁ…
「おねえちゃんのおよめさんになるからいっぱいいるの♪」
お嫁さん!?本当!!嬉しい!!叶わなくても夢が叶っちゃった!! ・・・母親は微妙な顔しているけど当然だよね…。
ぐいぐいと寄り添ってくれてるマルシカクちゃんにハァ…っとため息ついて村長の家までの案内を任せてくれた
「・・・スミマセン…この子、物語が好きで…
ユウナさんに運命を感じてしまったようで、…お願い出来ますか?」
子供の言うことだからって仕方なくマルシカクちゃんのお世話を頼まれる。
・・・本気にしておきたいです、私からとしても物語でしか出来ない理想なんです…
「任せて下さい!」
・・・。
仲良く横に並んで道を歩いて進んでいるとマルシカクちゃんの家より一回りくらい大きな家が見えてきた
「あれがおねえちゃんとマルシカクの家なの!」
隣って結構遠いなぁ
「一緒に住んでくれるの?」
「うん!けっこんしたらねいっしょにくらすんだよ♪」
「ママとパパは?」
「ままもぱぱといるからなかないし、ぱぱもままといるからだいじょーぶ」
マルシカクちゃんは寂しくないのかな?
「マルシカクちゃんは一緒じゃなくて寂しくないの?」
「わかんない。 でも、となりだから、さみしくないかな?」
一緒にいることを前提に話せるからね、微笑ましいなぁ。意味が分かれば変わっちゃうのかな、私も家に居ないと伝えてあるけど伝わって無さそうだね。
「そっかぁ♪ ママとパパが居る時に一緒に話そっか?」
「うん!」
これは一緒にいられないなぁっと切ない気持ちになった。
「お嬢さん見ない顔ですね? マルシカクちゃんのお友達なんか?」
「ううん、けっこんするからおよめさんなの!」
この村の人はみんな知り合いなのか、すれ違う人が次々とマルシカクちゃんを心配して声をかけてくる
えへへ、私お嫁さん、マルシカクちゃんもお嫁さんなんだね
「んー、本当かい? あんた騙していないよね?」
こ、怖い。今回はスンナリとはいかなかったみたい
「わ、私、商売しながら旅人しているんですけど、マルシカクちゃんの家の隣の空き家を一つの拠点…んー…寄った時の住む場所?にしようと村長さんに会いに行くところで案内してもらっています。えーと・・・(名前なんだっけ?セイバー…)、マルシカクちゃんのママには許可を頂いております!」
「商売・・・旅人かい、なら後で店に来な!
そんな身軽で死にたいのかい!」
「わ、分かりました!」
マルシカクちゃんのことは納得してもらえたようでよかった…、多分、商売人は都合の嘘だと思われたね、後で寄らせてもらおう
「おねえちゃんはマルシカクいや…?」
「いや? ・・あ、ううん!大好きだよ!本当に抱きたいくらいに!」
「ほんと!!」
何か不安になったみたいだけど腰に抱き付いてきて、少し離れて手を広げたので抱っこしてあげた
「(本音が出ちゃったけどよかった…)」
あ、私力が無い・・・重い・・・
頑張って耐えて少し歩きました。
・・・。
「くぅー…くぅー…」
マルシカクちゃんハシャイでたのに寝ちゃったよ!! 腕がプルプルしてる、村長さん家まだまだ先だぁ(泣)
分かったことがあります、この村は『キュウカ村』でした。武器屋、防具屋、アイテム屋で並び赤の細い円筒型ポストがそれぞれにあったので分かりました。
キュウカ村は〝Ⅲ+二〟の形をしていて、入り口は左下部(ゲーム参照)で右下部にマルシカクちゃんの家と推測、そして右縦道すぐに紹介された家があり、私達は真ん中の道を真っ直ぐ進んでいる模様
「突き当たりが村長さんの家なんだよ…」
まだ、歩いてきた道と同じくらいの距離がある
「コントローラー出て下さい」
すぐにポーズ状態にすると世界が止まった
マルシカクちゃんも動いてない…なんか怖い…けど重さも無くなり今は楽だった、とにかく休みたかった
マルシカクちゃんの膝の下でコントローラーを動かしている状態である。
メニューを開いてみると勝手に会話ウィンドウが開いて文字が文が書かれていった
『コントローラーは『コントローラー』と言うだけで出ます。 また、消す時も同様です』
へぇー、じゃあ何で何回か仕舞えなかったんだろう? あ!もしかして、これ今出来た追加要素だから勝手に表示された?
『アイテムには人や生き物も出し入れ可能です。ただし、相手があなた様に信頼・信用が無い場合は不可能です。
*収容された人や生き物には入る前と後が同じ状態になります』
次を押すと更に表示され、これで終了と元のメニュー画面に戻っていた。
「えーと?つまり、私を信じる人は『アイテム』として『持つ』ことが出来て、その人には悪い影響は無く、伝えといたら『いつの間に景色が変わってる』って事だね?」
何回か説明を言い直し言い直しで口に出しながら理解し直し続けて何とか形ある理解を得られる
始めは人を荷物扱いとかおかしい?と思ったがゲームの能力を現実で使えると考えると意外と普通なものとして考えが変わっていって『常識が違う』だけなんだと思えた。 ワープとか(まだしてないけど)あり得ないもんね、 動物を『荷物』なら同乗可能にしているのと何が違うんだって話だよ、自分がされてもいつの間に移動出来て楽だと思っちゃったよ。
お助けをありがとうございます!困っていたので助かりました!
力も入れようとせずにポーズを解除して一気に重さが掛かったことで少し崩れてしまった
「忘れてた…」
マルシカクちゃんの片足がブランとなって体も斜めになってしまった
「や、やばい!収容!アイテム!いれ・・やった!」
まだ『アイテム』への入れ方を知らなかった …、そしてやばい!緊急事態だったけど周り見るの忘れてた!?
周囲を確認したけど幸いなことに誰もいなかったことに安堵してアイテムを確認するとマルシカクちゃん(睡眠中)を確認、アイテムへの入れ方を調べると対象に触れて「アイテム」と言うだけと書かれていた。
マルシカクちゃんは言ってなかったからやっぱり違うのかな?
考えるのは後にしてのどかな道を寂しく歩きだしたのだった。
・・・。
突き当たりには家があったので予想は間違っていないと思う。
さて、どうやって出てくるのマルシカクちゃん?
すでにマルシカクちゃん(睡眠中)に選択を合わせてあるから押すだけなんだけど、やっぱりポーズ状態で押した方がいいかな? 地面に出たら可哀想なんだけど… やっぱり調べてからにしよう!
『今回に限り『スタートボタン』を押した状態でも動けるようにしました』
本当にありがとうございます! 普通は寝てる人を運ぶなら家とか地面や座らせられる場所だし、そもそも確認取ってから使う機能だから寝てる人に使うことが無いからの特例。
一応調べてみると、収容する前の『した人』と同じ状態に出るらしい。 自分の前に立ってたら前に立った状態でって感じだね。 ・・・今回は私に密着した変な態勢で出る・・無理だった…地面にドンになるところだったよ…
ということでポーズ状態で出してからマルシカクちゃんの背中側に回り支える態勢にしてからポーズ解除した
「マルシカクちゃん、起きて?」
「んー…?んっ………あ!おねえちゃん!」
何度目かの呼びかけに眩しそうに目を開けるとガバッとと起き上がった。 ゲームではイベントシーン毎にしか時間変化はなかったけどここでは当然に流れがあって太陽が下向きになり始める頃だった
ブルーシートを端っこに敷いて膝枕させていたので不思議そうに周りを見ていてかわいいな♡
「おはよう、あの道の先なんだけど村長さんの家はどこか分かる?」
「うん!そこだよ!
・・・もう1回いい?」
「膝枕?いいよ、おいで!」
整えて座り直すと喜んで顔を乗っけてスリスリ
「かわい過ぎだよ…かわいくて……こんな場所で…少しキュンとしちゃった…」
「ンウ♪」
あぁ、ここは天国かも…。初めに醜態見せちゃったけどこんなに慕ってくれて、システムじゃないよね?運ぶのも親しさで無理って書いてあったしね。
「あらあらぁ、山崩れさんのところの・・・、とあなたはどちら様でしたっけ?」
村長さんの家から出てきたお婆ちゃん、腰が曲がっていて杖を持っている、私達を見て驚いてからにっこりとして眺め始める、それにそのまま答えたマルシカクちゃん
「おばあちゃん、こんにちは!
おねえちゃんはマルシカクのおよめさん♪」
「あらあらぁそうなのねぇ♪
はじめまして、あたしはややややや、おじいさん・・村長のお嫁さんだよ、よろしくね♪」
お、おばあちゃんだ!感動しちゃうよ! でもやややややか…同じ文字は定番だけど…
「はじめまして、優那です
今日は空き家の購入について村長さんに挨拶に来ました」
「そうなのねぇ、・・・おじいさんを連れてきますねぇ」
「え、いや、お伺いしますよ!」
気を遣われて言っているんだろうけどそんな失礼なこと、でもマルシカクちゃんは挨拶が終わるとお腹の方まできてスリスリしていた、これやばいよ!ちょっと、ちょっとね!
「うふふ♪いいのよぉ」
結局呼びに行ってすぐに村長さんを連れて来てくれた。
ゲームと同じ!よくある髪は無くて、長い白の顎鬚が立派なお爺さん、ドット絵じゃ無くて現実で見るとこんな人いないって思っちゃった、あれだから違和感無かったんだね…
「おぅおぅ、こんな辺鄙な村へようこそおいで下さったのぉ♪
儂はキュウカ村の村長オルガンじゃ、よろしくのぉ」
聞き覚えのある挨拶だぁ!オルガンさん、名前一緒で変な名前じゃない!
「わざわざ御足労ありがとうございます」
「そな、堅苦しいことは言わんでええんじゃ
空き家じゃったのぉ、ユウナさんはお金は持ってるんかぁ?」
「大丈夫ですよ」
「若ぁのにしっかりしてるんじゃのぉ」
家はそこまで行くのに普通に進めていった場合では遥か足りない価格であって、先に進めて戻るか延々とモンスター狩りしないと購入は難しいのである
ゲームではキュウカ村の家は4万Gだったはず
「ちと心苦しいが決まりでのぉ、11000G・・・大丈夫かのぉ?」
「え、安い!? あ、失礼しました!」
やばい、声が出ちゃったよ!1万G貯めるのに村と何百体のモンスターと戦うことになるのだか
「ハハハ…そ、そうかの? それならよかった」
村長さんに苦笑いされちゃったよ。10000Gと1000Gを出して村長さんに渡すともう使ってよいよと言われた
「マルシカクちゃんもお幸せにな」
「うん!」
やっぱり本気でとられていないなぁ、それにしても家買うのにお金払っておしまいなんだ・・・
「さっきの人のお店に案内してくれる?」
「わかった!」
言い方から防具屋の人だと思ってたけど、アイテム屋の人だったようだ
「随分とゆっくりしていたんだな?」
「マルシカクがおねえちゃんのおんぶとかね、おひざでねちゃったの」
「優しいお嫁さんなんだな」
「うん!」
なんだかムズムズする、ぎゅーってしたいなぁって思ってたら後ろに来て屈み、お尻にぎゅーってして顔を埋めてスリスリとしてきた
「あ、あはは…」
気に入ってくれたのかなり嬉しいしずっとやっていて欲しいけど、人様の前では照れちゃうし気まずいからやめてください!
「あんたもこれから大変だな」
本当に、村にずっとはいるつもりがないんだよね、正直、この子が変わらないならいてもいいと思っちゃうけど一応帰る選択肢は探したいしこの世界を満喫したいんだよね
「商売人っていうくらいなんだから荷の運ぶ手段くらいあるんだろ?」
ニヤニヤしながら尋ねてくるのに「名乗るくらいならしっかりしろ」って聞こえてきた。マルシカクちゃんもやってたしちょっとくらいは大丈夫だよね?
抱える形を作ってリュックを出してみた
「はい、一応持ち運び出来るようにはしています、これは自分の生活品ですが…」
何やら固まってしまった、何で!?
「それ、中身入っているな?」
「え?はい・・?」
「はぁ…分かった、いる物があれば持ってきな」
何かあきらめたようだね、なんだろう?
「は、はい! マルシカクちゃん見に行くね、欲しいのあったら言ってね♪」
「ふふぅー♪マルシカクのほしいのはもらったからいいの!」
「え、そうなの?」
「うん!」
何もあげた覚えはないけど・・・、あ!お嫁さんになったことかな? かわいいなぁ♪嬉しいなぁ♪
ゲームでの買い物は一覧があって選んで決定するだけ、見て回れるのは新鮮で楽しい。 しかも、私行きつけのコンビニと違う品揃えである!馬鹿じゃないよ?
樽にリンゴが詰まってた、台に薬草が並べてあった、瓶も並べてあって赤テープが傷薬(飲み薬)、青テープが毒消し(飲み薬)、黄色のテープが麻痺消し(飲み薬)、ゲームで絵が無かったからあのアイテムはこうなんだとか楽しかった!
「あ、巾着!携帯トイレは?」
「こっちだよ!」
マルシカクちゃんが案内してくれて見つかった。
キーホルダーみたいに壁にぶら下がっていてトイレには見えない、飾り売りするような物じゃないのに似合う見た目だよね。ちょっとあの時を思い出して顔が熱くなってきた、フー。
「150G・・・結構高いんだね」
薬草1個10Gである
携帯トイレを20個取っておく、さっき見たアイテムも20個ずつ購入する、予想が正しければ持てるはず。マルシカクちゃんに手伝ってもらいながら何度も運ぶ
「いっぱいだな、えっと?いくらに…?」
・携帯トイレ150G×20 3000G
・傷薬(飲み薬)10G×20 200G
・毒消し(飲み薬)10G×20 200G
・麻痺消し(飲み薬)20G×20 400G
・リンゴ 10G×20 200G
・水 10G×20 200G
「4200Gです」
買いすぎとはいえ、家の安さが分かるね
「はやいな!? もしかして本当に商売人なんか?」
「あははは、これ丁度で」
袋6つ出して確認する
「何で分けたん?」
「え?」
袋の中身を見せられると硬貨1枚・・・
つまり、これは1000G硬貨ってこと、袋はゲーム機能で膨れているだけで中身1枚ずつが6つ?
「あの、100Gの方は…」
もしかしたら1G硬貨とか10G硬貨なのかな?と見るとやはり1枚、100G硬貨が存在していた
「あんたお金も知らないでやっぱり商売人じゃないね。 でも金額は合ってて計算速いし不思議なやっちゃな」
「あははは…」
犯罪者認定されなければいいです、常識はゆっくり覚えていきますから
・・・村長さんに渡したのはどうだったんだろね
水を2つ仕舞って確認、『水×2』になってた、所持数も3/20だからひとつ分だ(お金は戻した)
「アイテム?」
不審がられたので聞こえないように呟きに変えて仕舞いました。
・・・。
「普通は1つ2つだから気を付けなよ」
そう注意されて店を出ました。 持ち運びが出来ることは一般的なようで安心
「どうやって出したり仕舞ったりするのかな?」
マルシカクちゃんは両手で胸の前で何か両手で支えるポーズをすると小銭入れが現れて手におさまっていた。
「これ出したい!っておもうと出る
かたづけする!っておもうとしまえるの!
おねえちゃんはちがうの?」
あぁ、本当かわいいなぁ!
「ちょっと違うんだ、「アイテム」って言わないと仕舞えないの」
出すのはメニューからだけど…
「でも、いっぱいできるからいいなぁ!」
「マルシカクちゃんはいくつ出来るの?」
「2つ!」
指を2本立てて自慢するように言った、多分すごいことなんだろう
「それは凄いね♪」
「うん!おねえちゃんのおよめさんだから!」
ユウナは会心の一撃を受けた!
今日だけで何回目だろう、キュンキュンしてもやもやしちゃうよ!
まずは母親に連絡しないと・・・・・・あ、違うよ……娘返還…するのか…
少し暗くなった私を心配してくれるマルシカクちゃん、今日最後とぎゅーっしたくとしゃがんで頼んだらしてくれたんだよ!元気だそう!
元、空き家を通り過ぎようとしたらグイっと服を引っ張られた
「おねえちゃん、家こっちだよ!」
まだ家の場所を覚えられていないと思っちゃったんだね
「うん、でもね、ママに帰ってきたこと伝えないと心配しちゃうよ?」
「だいじょーぶだよ!もうマルシカクはおねえちゃんのおよめさんだから!」
何を言っても来そうだけど、連れて行ったら問題だよね? 私の責任だよね? どうしよう…
「いこうよ?おねえちゃん…?」
「はい!」
無理です、不安な顔はさせたくありません!
すぐに無邪気な笑顔に変わってかわい過ぎます!
・・・。
ゲームでの自分の家はワープだけのためにあったので家の前でボタンを押すと購入した家がある場所の選択肢が出るだけで中なんて無かった。
ガラガラ戸を開ける
「けほっ」
「大丈夫!?」
手でパタパタとあおいでマルシカクちゃんを抱き寄せる、埃だらけだ…管理されてないの! マルシカクちゃんにこんな場所にいて欲しくない!
「掃除したら教えるから帰ろう?」
「マルシカクもおてつだいする!」
「ん~…こんな汚いし道具も雑巾くらいしかないんだよ」
「!!、もってくる!まってて!」
飛び出して行っちゃった!? 速い!?
追いかけるか悩んだけどやめることにした。先に取りかからないとマルシカクちゃんが・・・手ぬぐいは3枚入れておいたはず!マスク代わりに使おう!
「床を拭いて、壁をやって、床をやろう!
・・・てっ、水! 水道通ってる? 電気は・・・あるんだよね、ガスはたしか無いはず」
ゲーム内でと照らし合わせたところ、不思議なことに全く同じだった。今までの常識と違って、水道は蛇口だけで水道管も何も無いのに水が出た、お湯もそちらを捻ると出るのには不思議でしょうがない、ガスじゃないからか〝あったまる〟じゃなくお湯が直に出るし謎過ぎだよ。
「おねえちゃん!」
「あ!マル・・・」
「・・・失礼します」
床を拭いていたらマルシカクちゃんが帰ってきたから顔を上げると見知らぬまだ若そうな男性も一緒でした。
「あ、はい、いらっしゃいませ?」
まだ自分家の自覚が無いから疑問形になってしまったが、挨拶してからすぐにお父さんか!と気付いた
お使い達成を褒めて欲しいとバケツとハタキを持って駆け寄るかわいいかわいいマルシカクちゃんの頭を(ぎゅーっをしたいのを我慢しながら)撫でてあげた。
「セントセイバーから聞いたよ、娘と付き合うって言うんだね?」
感情を捨てたような無機質な語りですごく怖いよ
「はい!
マルシカクちゃん、こうやってね埃を吸わないように後ろで巻くからね」
「うん♪」
まだ掃除も序盤、話すならマルシカクちゃんに埃を吸わないようにさせてからだよね
「・・・」
「パパもどうぞ?」
「・・・どうも」
パパで怒られなかったからよかった。マルシカクちゃんのはやく手伝いたい!気概から先に済ませることになったのだった。
・・・。
終わったのは夜だった。 途中で山崩れさんは母親に伝えに帰ったがすぐに戻ってきて律儀に最後まで付き合ってくれた。
「ごめんなさい、全部やってもらっちゃいまして…」
「くぅ…くぅ…」
壁とかやり始めた頃にマルシカクちゃんは歩いた疲れからか眠ってしまい、山崩れさんが連れて帰ろうとしたが私をぎゅっと話さないので端っこでずっと休んでいました(私を送らさせることはしなかった)
「・・いいんだ、見ていて分かった
ユウナさん、君はいくつかな?」
「20歳です」
年齢を言ったらすごく驚かれた。この家族にはかなりの上か14歳くらいに思われていた。
「・・・そうか、ユウナさんはこの村にずっと居るわけで無いと聞いている、娘はどうするつもりでいる?」
すごく真剣な目つきで生半可な気持ちで答えちゃいけないのが分かって怖くなる
「マルシカクちゃんに全て答えを委ねます!
私は色々な場所に行きたいです!
なので、マルシカクちゃんに理解するまで話して答えを聞きます」
「分かった、もしユウナさんに嫁ぐとなるなら覚悟を見せて貰う! その時は『狼の牙』を5つ持ってきて欲しい」
狼の牙…〝おおかみ〟がドロップするアイテムだったね、外で生きてられる力を見せてみろという感じかな、・・・でも
「『狼の牙』はいつでもいいのですか? 今、持ってなくて、待たせたくないんですよ…」
ゲームと同じなら〝おおかみ〟は始めの村と2番目村の間に出現するモンスターなんだよ。
そしたら、何故か山崩れさんは降参と両手を上げた
「あぁ、いつでもいい。もし、マルシカクが行くと言うならいつか一緒に持ってきてくれ。 どうか、(一生)守って欲しい!」
あれ?何か試されてたの?認められた・・・。もちろん、マルシカクちゃんが望むなら共に生きたいですけど!
「分かりました!幸せに・・・ひゃん!」
「えへへ、おねえちゃん♪かわいい」
いつの間にか起きていたマルシカクちゃんが太もも辺りにスリスリとしてきて・・少しやばかった!
「マルシカク、明日ゆっくりお話ししようか?」
「うん!」
「今日は汚れちゃったから湯屋に行くよ」
「おふろあったよ?」
湯屋もちゃんとあるんだ、湯屋は回復場所でどの場所でも50G払うと使えた施設だ。
お風呂はある家と無い家が1:7くらいで購入したこの空き家には付いている。
もうこの家の住人だと思っているマルシカクちゃんに少し寂しく感じているようでどうしようか?と逡巡しているよう
「ユウナさんも一緒にどうですか?」
「あ、はい、行きたいです」
行きたいって変でしょう!
「おねえちゃんとおふろ入る!!」
一気に体が熱っぽくなってしまった、かわいい! あ!でも湯船ひとつだったような? …勇者も仲間と肩まで浸かる画がかぽーんと5秒くらいあっただけだった…、男性と一緒はヤダなぁ…
山崩れさんはすぐに母親を呼びに行ってしまった
・・・。
場所は村の全体を上から見たⅢの道の真ん中・中心の左手に位置する。
「・・・」
「・・・」
気まずい、マルシカクちゃんの母親セントセイバーさんが何か話そうとしているのは分かるのだけど時折顔を上げて私やマルシカクちゃんを見ては俯いていて黙っているのである
「・・・まま?」
「なぁに?」
「ううん」
キュッと私の手を握るマルシカクちゃん、ままの雰囲気に戸惑っているようだ
「セントセイバー、ぼくは彼女を信じるからマルシカクの意志に任せるよ
反対でも君が何かあるなら話しておいた方がいい」
「・・・分かってるの、だけどね…」
重い…、謝りたくなってきたよ。山崩れさんはそれぞれの覚悟を汲み取り任せるつもりでいるけど母親としては当然の心配だろう
「ん、マルシカクちゃんっていくつなのかな?」
ふと年齢が気になる、見た目は小学生入ったばかりくらいかなって感じだけど
「7歳だよ! おねえちゃんと…8、9、10、11、12
。5歳違い!」
私、12歳!? まぁ何歳に見られても気にしないけど子供から見た私と大人から見た私が近いってかなり幼く見られているなぁ。
「7歳かぁ」
「うん!」
「ユウナさん!」
「あ、はい!」
「娘を面倒を見て下さいますか…?」
「・・はい!もちろんです」
「マルシカク!」
「はい!?」
「もし、パパやママがどこかに行ってずっと帰ってこなくてもユウナさんと2人で生きられますか?」
「え?んー、んー?え?ぱぱ、まま、いなくなるの?」
「ユウナさんのお嫁さんになるなら会えなくなります」
「なんで! どこに行くの!」
「それでも、ユウナさんのお嫁さんになりたいですか?」
「おねえちゃんもいっしょは?」
「出来ません!」
え?えー!? いくらなんでも7歳の子に問わせる内容じゃないよ、たしかに会えなくなる可能性の高い話だけどさぁ
マルシカクちゃんは泣きそうだけど私の手をしっかり握って離そうとはしなかった
「おねえちゃん…」
助けを求めるように見上げて呼ばれた
・・・無理です! ママさんごめんなさい!
私はしゃがんでマルシカクちゃんをぎゅーっと抱き締めた
「大丈夫だよ! パパとママには会えるようにするから! 私は遠くに行くけど何回も迎えに来るから!」
「おねえちゃんがいなくなるの?」
何を言っているかは分からなかっただろうけど私が旅に出ることは伝わったようで、今度はそちらで泣きそうに・・・ついには泣いてしまい必死に抱き付いてくる。
遠くで声を聞きつけてなんだなんだと集まってくる人もいて困ってしまう、山崩れさんが説明してくれたけどどうしよう
「ユウナさん、ごめんなさい…」
「いえ…マルシカクちゃんに理解出来るように、お話しはしないといけないので…」
「…おねえちゃん…の…およめさんに…なるの…」
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ
「本当にユウナさんのお嫁さんになりたいのね…」
どうするのが正解なの? お父さんなら優しく・・・やることだけやって自分に任せるね、後悔しないようにって
「湯屋に向かいましょう!お風呂に入りたいです!」
「・・・そうですね」
私が頑張ってマルシカクちゃんをおんぶして
いきました。
・・・。
昼間も通ったはずなのに見た記憶が無かったのは道を挟んだ反対にあるお店並びと湯屋がゲームと違いただのあまり大きくない小屋であったからだった。
扉の前には札があってこれがあると誰も使用していないそうだ、入浴時間はなるべく短くとなっている。
「ちょうどよかったな、待たないで入れそうだな」
「そうですね、・・・ユウナさん」
マルシカクちゃんをと分かっているので呼びかけてみるとすぐに目が開く
「湯屋に着いたよ」
「・・・!!。おねえちゃん!マルシカクもついてく!ままにはぱぱがいるからだいじょーぶだけど、おねえちゃんにはマルシカクしかいないから!」
「え!?」
さっきのことを泣きながらにもしっかり考えていたようで驚いた。 そして、マルシカクちゃんは私を想像以上に想ってくれていたようで両親と同列に並べられて、2人旅になるぱぱ・ままより1人の私を選んでくれたみたいだった。
その宣言した顔は、まだ寂しそうだが決意して自分で決めたと見てとれた。2人の顔をしっかり見ていた。
「そうか、ユウナさん、娘をどうかよろしくお願いします!」
「マルシカク、あなたはそう決めたのね!
ユウナさんに迷惑をかけないよう言うことは守りなさいね」
「はい!」「うん!」
まぁ、2人は旅には出ないんだろうけど、マルシカクちゃんは一生幸せにしてあげたいと思います!
・・・気まずいなぁ、これからお風呂なのに
札を付けて中に入るとやっぱり湯は一つ、あまり大きくなく詰めて10人くらいってところ、奥の壁の上側が吹き抜けていて、着替えるスペースは無いから端っこだろう
「ユウナさんはタオルはお持ちで?」
「あ、はい、持ってます」
すっかり怖がらなくなってくれたのは嬉しいけど他人と入るの嫌だ、特に山崩れさんいるのはおかしい!! そんな心の悲鳴も空しく・・・
「おねえちゃん、はやく! きれぇなんだから見せてよ!すごいきれぇなのぱぱ・まま!」
「そうなのですね、ゆっくりで構いませんから」
「若い子は恥ずかしがる子もいるから、ぼくは先に入っているな」
やめてぇぇ!! 恥ずかしい!
ぽんぽん抜いでジーっと見てくるかわいいマルシカクちゃん、後ろに回っているのがポイントだろう
ゆっくりと上着から脱いでいるセントセイバーさん
気を遣ってはやく脱いで先に行ってくれた山崩れさん、言い方から男女は関係無い感じだ
「うぅ…混浴が当たり前…なるべくはやくだった…、仕方ない…!!」
さっきの手ぬぐいを持って『装備』から全て解除した
「えー!きえちゃった!どうやったの!もう1回やって!」
「あら?いつの間に!? もしかしてユウナさんの特技ですか?」
セントセイバーさんはまだ途中であり、手を止め驚きながら質問する、〝特技〟?また、後で調べないと
「また今度ね!
特技みたいなものです」
残念そうだが言うことは守ると誓ったばかりなので大人しく自分の中で感動を反芻しながら下から見上げるように眺めている。
「やっぱり凄いのですね」
セントセイバーさんは笑いながらも手を進め始め下を脱いでいった。
ママさんに合わせて脱げばよかった、1人先に行くのもちょっと・・・恥ずかしい!
チラチラと山崩れさんを見るがたまに目が合うとすぐに逸らしてくれて本当に助かります
家族をたまに見て確認していると思っていて幸せだったのだろう。
「ありがとうございます。お待たせしました、行きましょう」
「うん! いこ!」
「ひゃん! う、うん!」
私の腰にしがみ付いて立ち上がったマルシカクちゃんにびっくりしながら湯船まで手を引かれた。
手ぬぐいを湯に浸し軽く体を擦ってから入る、山崩れさんはさっきと違い入るまで後ろを向いていてくれ心配りが素晴らしい人だと思う。
湯が透明だよ、湯の中は光の濁りで見えないんじゃないの(泣)、山崩れさんとは反対側に入ったけど近いから向けば見えちゃうよ…
「ね!ね!きれぇでしょう!
それにやわらくてすべすべしてるんだよ!さわってみて」
セントセイバーさんが山崩れさんの隣に入って壁になってくれたけど、マルシカクちゃんが2人に自慢してるから意味ないよ、じっくりじゃないなら見るのは我慢して譲るとしても触らせるのはマルシカクちゃんだけだよ!
ずっと下を向いていたから分からないけど、上がるまで触りにくることはなかったから考慮してくれたのだろう
山崩れさんは先に出てるとパッと拭いて着替え出てくれたので私たちも急ぐ
バスタオルで体を拭いてすぐに新しい服を着て出た
「ユウナさんはこういう場所は苦手なんですね」
「はい、そうなんです… マルシカクちゃんとだけならいい・・・の・・・ですよ・・」
ポロッと変なことを口走りすぐに気付いてしまった
「うふふ、お嫁さんになら見せていいのですね」
「は、はい…そうです…」
嬉しいと抱き付くマルシカクちゃんにセントセイバーさんは、ということでさっきみたいな自慢はやめるようにと叱るのだった。
・・・。
寝るための寝具が無い、すっかり買うの忘れてた!
当然リュックに入るわけも持ってこようとしたわけもなく、現地調達頼みだったわけで…
「あ、あの?今日は宿に行きたいのですが…」
自分の家を買ったのに何故?と視線がいたい…
「マルシカクもおねえちゃんと行くよ!」
「マルシカクちゃんは準備が整うまでは夜はパパとママといた方がいいと思うよ?」
「ううん!やくそくしたから!いっしょにいるの!いたいな?」
2人も寂しいだろうが満足そうな笑顔だ、強いなぁ
て・・・くぅ
「「あ…」」
マルシカクちゃんと同時にお腹がなって笑みが浮かぶ、ご飯も忘れてたなぁ…どうしよう。計画性がなさ過ぎた、もっと明るい内に考える時間をとればよかったかな…
「「プッ…」」
そんな様子に両親2人は笑って家に来てと招待してくれたのだった。
食事を終えて歯磨きしていると『何してるの?』の視線が送られてマルシカクちゃんは実際に聞いてきた
「虫歯にならないように寝る前には歯を綺麗にするんだよ?」
「そうなんだ!マルシカクもやって、やって!」
あーっと口を開いてかわいい! 歯磨きセットは1つしか入れてないからこれしか無い、手で毛を綺麗に水で洗って歯磨き粉をちょっと付ける
「絶対に飲み込んじゃダメだよ!」
「あーい!」
マルシカクちゃんの歯を綺麗にみがいてあげる、時折くすぐったそうに身を捩ったりしていたが言い付けはしっかり守り歯みがきを終える
・・・この歯ブラシでもう1回みがきたい…
「あはは、私、何言ってるんだろうね」
「おねえちゃん、なにも言ってないよ?」
ただの妄想でした…恥ずかしい…
『虫歯』は危険なものだと教え、歯みがきしないにしろ何回もブクブクとガラガラはした方がいいことをみんなに伝えておいた
この世界に歯みがき習慣が無いのかな?
布団は3つなので当然私はマルシカクちゃん抱き合って寝る、趣味の『ボランティア』をした日の夜の習慣で体がウズウズする…マルシカクちゃんと一緒にいてずっと興奮しっぱなしだったから。かわいい・・・もう寝てる…。
「おやすみ、ありがとね…好きです」
普段に感じないような疲れ方ですぐに眠りに落ちたのだった。