意外に大変だった場所
早速ですが私たちは迷いました!
確認を怠ったと言えばそうですが、人の通るような道も無いのですごーく分かりにくく方向が分からなくなっちゃったんです
『青の糸』と『黄の糸』は〝ブルースパイダー〟と〝土グモ〟がいっぱい出てくるのでいっぱい手に入りました。
マルシカクちゃんが一撃で決めていくのでグリードの戦闘での役割はまだ分かりません。
そんな事はみんな気にした様子も無くズンズン進んで先を探しているけど一向に出口は見えない、たまに引っ掛かる蜘蛛の巣が鬱陶しい…
なんか似たような場所をこっちかなぁっと右側へ、あっちかなぁっと左側へフラフラしながらもなるべくまっすぐになるような感覚で進むようにしていたら、木々がぽっかり空いた空間に水色のお花が咲き乱れていたお花畑に出てきた
「わぁ!きれぇだよ!」
「はぁ・・…。うん、きれいな色しているね」
「はふぅ……美しいですね
この辺りで一休みしませんか?」
疲れていたからちょうどよかった、といっても私だけで他の人は誰も息が乱れて無いけどね
私はここを見たこと無いから知らない、隅々まで調べたはずだったけどなぁ・・・とりあえずわくわくと期待値が上がる。 来れば何かが起こる、みたいなことは無いので何も無かったらいずれまた探して調べてみよう。
どうせならと中心にシートを広げてご飯にすることにして準備をしていると空からひらひらと花びらが降り注いできた
そんな不思議な出来事に目を奪われながら傍にやってきたマルシカクちゃんの手をぎゅっとしたら抱っこを求められる
「はぅ、マルシカクちゃんありがと」
「うん!おねえちゃんありがとう」
はにかみながらお互いにソッと頬に触れる感触を確かめながら目の前の美しい光景の成り行きを見守っている
「はふぅ…しゅてきでしゅ…」
『『仲間全員の能力が上昇しました』』
ゆっくりと花びらが静まってくる時にそんな表示が現れて確認してみる。変化は・・・あれ?無いよ?
・・・ガサガサ
草を揺らす音が聞こえて戦闘ウィンドウが開く
「モンスターだよ!」
すぐに戦闘態勢を取ると一匹のうさぎちゃんが飛び出してきて、その背後から鳴きながらそのうさぎを追ってきた〝おおかみ〟3体が出現、うさぎちゃんは逃げながら私たちの場所までくるとグリードにピョンっと飛び付いてくる、グリードはそれを優雅に受け止めてクルッとターンを決めながらうさぎちゃんを頭に乗っけている
「はふ!? グリード様にうさぎ様が!」
「グリードおにいちゃん触っていーい?」
「一応、おおかみさん待ってるからね?」
あまりにも華麗だったグリードとうさぎちゃんの動作に敵から関心が移ってしまったのはご愛嬌です。
うさぎちゃんを触るのは拒否されたのでおおかみに意識を向けたけどマルシカクちゃんの一撃ですぐに決まるので相手にならない
『モンスターをやっつけた。『狼の牙』×9『狼の毛皮』×3を手に入れた。18G手に入れた。
ユウナがLV.29になりました。ユウナは『魅了』を覚えた
マルシカクがLV.29になりました。マルシカクは『瞑想』を覚えた
みのりがLV.29になりました。みのりは『ラララ』を覚えた
グリードがLV.29になりました』
ただの〝おおかみ〟でたくさんレベルアップしたよ! 能力アップはこれか? 能力じゃなくて次の経験値取得アップだったのかな。
あと『瞑想』もだけど、みのりさんの『ラララ』ってなんなんだ!!
ユウナLV.29:マルシカク(♡♡),15歳(不老、不死)
HP:300 MP:620 ATK:7 DEF:37 MAT:7 MGR:31 CT:610
マルシカクLV.29:おねえちゃん(♡♡♡),7歳(不老、不死)
HP:190 MP:125 ATK:39 DEF:23 MAT:96 MGR:31 CT:42
みのりLV.29:妄想聖女,16歳(不老、不死)
HP:70 MP:76 ATK:12 DEF:19 MAT:68 MGR:71 CT:4
グリードLV.29:兎執事 年齢不詳
HP:9999 MP:14 ATK:15 DEF:15 MAT:14 MGR:14 CT:9999
「また妄想が復活してる!」
「もうそう?」
「あ、いやね・・みのりさんの役職が・・僧侶から聖女になっていて驚いちゃってね…」
「そうなのですか!?」
みのりさんも〝妄想〟に思い当たることがあるようで恥ずかしそうだったけど、それよりも自分が〝僧侶〟で無くなっていたことの方が強かったらしい。
この項目の種類については説明が無いから分からない、しかし、みのりさん自身は何か知っている雰囲気で聞いてみた
「お兄様に聞いたおひゃなし…なのですが、『聖女』は『聖女』なのだと教えてもらいました。
「お前は『聖女』になるべきゅして『僧侶』になれ」と」
うんうん・・・なるほ…うん?・・・全く意味が分からない…
「そうなんだ!よかったねおねえさん!」
「はい!」
目標達成? それでいいのかな…喜んでいるしね。一体〝お兄様〟はどんな人なんだろうか、関係者にしか思えないよ…
・・・マルシカクちゃんが私を想う以上にマルシカクちゃんを愛してると思ってたけど、マルシカクちゃんに負けちゃってたのは嬉しいなぁ、大好きだよ♡
・・・。
休憩だけにしようかと思っていたけど時間も結構過ぎていたので今日は美しいその場所で過ごすことにしたのだった。
次の日
ずっと一緒にいてくれていたうさぎちゃんは私たちの動く気配につれてピョンっと動き出して後ろを振り返る。
「付いていけばいいの?」
うさぎちゃんはキュイっと小さく一鳴きすると森の方へゆっくり進んでいく
やがて自然の道のようなものも見えてきて雑多に並んでいた木々が一定間隔に変わってくると前を先導していたうさぎちゃんはクルッとターンをして振り返りもせずに帰っていってしまった
「ばいばーい」「ありがとね」「ありがとうございました」
うさぎちゃんを手を振って見送り先に向かう
「勇者様たちとはすれ違ったかな?」
幼なじみさんの経験を積んでいるか強いままの勇者様に合わせてたかによってはこの付近で出会うかもしれな・・・
「お前らもう来たのか!」「あ!? 久しぶり・・・になるわね…。本当に無事でよかった…ごめんなさい、でも初めて出会ったモンスターだったの」
タイミング悪くない?
この記憶が残るのは厄介だ、幼なじみさんは気まずそうで、前に守ると言って死んでしまったことが気まずいのだろう。しっかり言い訳を言うのもらしい。
「はじめまして、私は僧…聖女のみのりと…です!」
「!?、あなた!〝聖女〟なの!?」
「ひゃ、ひゃい!?」
幼なじみさんはみのりさんが聖女と聞いた瞬間に驚いたように目を輝かして間近に顔を近付けていた、たじたじになったみのりさんは顔を逸らしながら一歩下がってしまう。
「ぅふふふふふ
あ、握手をお願いしてもよいですか!!」
「あ、え、は、はうぃ!」
「あ、ありがとうございます!」
何がなんだかわからないが言われるがままに手を差し出すと幼なじみさんは遠慮すること無くガシッと握りもう一つの手で支えると上下に振っていた。
その様子に何事も無いように勇者様が私たちの方に来て説明してくれた。
「聖女はマァマのなりたかった憧れなんだ。 全く才能が無くて笑ったら殴られたがな」
笑っちゃ可哀想でしょ…
「おにいちゃんは勇者になりたかったの?」
「ん? べつにだな! 村(での生活)に不満は無いし、生活圏を奪うわけでもなく魔王に恨みも無いからな。 使命を受けたからやってるだけ」
「マルシカクは今、たのしぃ!」
「それはよかったな」
「うん!」
魔王の影響でモンスターが出るなら魔王を倒したら出なくなっちゃうのかな?
この出会いの件でみのりさんは幼なじみさんのことを〝聖女のファン〟としか見れなくなったよう
「あぁ!聖女みのり様ですのね!」
「は…はい…その…マァマ様で…」
「〝様〟なんていらないわ!『そこの弓使い!』くらいでよろしいです!」
「ひぇ!? そ…そんな…」
・・・幼なじみさんって尊敬する人にはこんなになるんだ…、これは聖女様がすごく困るね
そんなこと考えてたら勇者様が近づいて幼なじみさんの頭を小突いて止めて殴り返されていてマルシカクちゃんが爆笑していたのだった。
軽い雑談になりささやき樹の森の攻略について聞いてみたら不思議そうな顔で「わかるだろ?」って言われた。 さかさま洞窟についても同様で勇者様たちには一本道のように行く方角が自然と誘導されているようだと分かった。
早く二人きり…3人になりたいので早々に村に行くことを告げると案の定というか村までの護衛を受けてくれることに・・。
「聖女みのり様、お荷物お持ちしますよ!」
「ふぇ…つ、杖くらいしか無いので大丈夫ですよ…」
「お預かりしますね!」
涙目で武器を取り上げられるみのりさん、善意なのがたちが悪いよ。
さすが、次に行こうとしていた2人だけあってこの辺のモンスターは問題なさそうで私たちに素材が入らないのだけが問題であった。
「気になったのだけど、グリードは?」
「あんまり干渉するなよ」
「わかってるけど女の子だけだから危ないかもしれないし、気になったのよ!」
幼なじみさんが私に尋ねてきたので「途中で出会った仲間です」と答えたら神妙な顔で「見知らぬ男を入れるのは気を付けた方がいいわ」と注意されたので人として見られているのだろう、マルシカクちゃんのことで1番に思ってくれているようだからやはり〝良い人〟なのは間違いないのだろうね…。
・・・。
『はじまりの村』までの道は意外に遠くて今までの場所の中で一番一マスの距離が長く一日では着かなかったので野宿することになったのだけど
「見張りは俺に任せてくれていいからな、今夜は安心して寝てくれ」
「私も…「俺一人で大丈夫だからお前も今くらいはゆっくりしろ」」
「「「・・・」」」
モンスターの奇襲対策に夜に番をするのは当たり前なのだろう。
けれど私たちがいれば襲ってこない、むしろ、夜番をしていた方が襲われてしまうから迷惑で体力を使うだけだ。
・・まぁ、旅の終わりで疲労や眠気が大変と思われているだろうからの気遣いを無下にするのもねぇ…
まだ言い合っている2人にお礼を言ってお願いしてせめてもの食事を提供したのだった
夜中、何か揺すられて目が覚める
「ん…? あ…グリーンいもむし…だね?」
目の前にいたモンスターを寝ぼけ眼で確認する、体に突撃して襲おうと寝袋に登ってきたのだろう。自然と手をモゾモゾと出して伸ばしたら当然に攻撃されてしまう
冴えてきた頭でターン制が効いてないことを考え勇者様が逃したのが来たのだろうことを理解した。ゆっくりとグリーンいもむしを抱え退かしながら起き上がると申し訳なさそうで驚愕の顔を浮かべた勇者様が剣を構えて傍に立っていた、寝顔は見ないでくださいよ…。
「だ、大丈夫か?」
「はい…この辺りのモンスターは弱いですからダメージは0です」
回りの配慮のために小さな声で話していたけど、ずっと警戒しながら暮らしていてちょっと敏感なみのりさんは、今回は安心じゃ無いと知っていたからか起きてしまいコソコソ起き上がる。グリードには「寝る」以外は言ってないので目を覚ます気配はない。
「足に攻撃されていますよ…」
「ダメージ0だから平気です」
数で襲って来たせいで取りこぼし、それが私に来て剣を振れば当たってしまうので何も出来ず立ち尽くしたってところだろうけど、強いモンスターで私たちが弱かったら死んでる、緊急なんだからから起こすなりしないとと思う…
グリーンいもむしはみのりさんに任せて勇者様に潔く謝られたのだった。
残りの道中は夜中の出来事を気にしてるのかやたらこっちばかり気にして少しウザかった。
「何も無い村だけどゆっくりしていってね」
「本当にすまなかった… 次こそは任せてくれ」
「え? あ、分かりました、ここまでありがとうございました」「ありがとー、らんだむおにいちゃん、マァマおねえちゃん」「ありがとうごじゃいました!」
村に着いて別れるがまた会うことが前提となっていて嫌だなぁ、予感があるのがまたね…
さてと、と一区切りということで疲れを癒やしてゆったりってしてから、『試練の洞窟』に行ってみる予定だけど森から村までの距離を考えると準備が必要なのでその辺ものんびり揃えていかないと!
切り替えてワクワクして目の前のどこまでも続く木の柵が並ぶ入口をくぐるのだった。
・・・。
はじまりの村は想像以上に何も無い。 どこの村の倍以上と広いのに最低限のお店と少ない民家しか無く余っている土地ばかりが目立っている。
・・広すぎてわからないけどこの村もゲームと同じなら村の形は「白」のようになっているはず、だけれど道も広く先行きも見えないからそれは全く判断出来ない。
「おねえちちゃん、そんちょーの家にいくんだよね?」
マルシカクちゃんも始めに家を買うとしっかり分かってて、初めて来る場所にもかかわらず今までのように私が知っていると確信しているようだね。 その通りなんだけど実は村長さんの家は入口入ってすぐ横にある家のはずなんだけど見当たらないんだよね…。
通りが見えるまで何も無い道を歩いてみること3分、ようやく家が見えてきてその先にはT時路になっていたことで安心することが出来た。
戸をノックして数秒
「な、なんじゃ…ごほっ…見たことな…ごほっごほっ…初めてみる顔じゃな…ごほっ!」
「だ、大丈夫でしゅか!?」「だいじょーぶ!」
出てきたのは見た目まだ50歳手前くらいの若いおじさんで肌の色が落ちた青白い顔をしていた、私は咄嗟に動けなかったがみのりさんはすぐに駆け寄りマルシカクちゃんが心配そうに前に出ていった
「あぁ…大丈夫じゃ…少々熱くなってしまいてな…
それで…ごほっ…何か用が…ごほっごほっ!…っ!?」
「「「!?」」」
村長さんらしきおじさんが軽く前に崩れ倒れそうになったのでみんな慌てて手を出してなんとか間に合ったが苦しそうだ
「……あ!状態回復! キュア!!」
今まで全く使うことが無かったので忘れてた!
戦闘以外、しかも村中で使えるか心配だったけどおじさんは目に見えて楽になったことがわかったので安心した。
「おぉおおぉぉぉ!!
ありがとうございますじゃ!ありがとうございますじゃ!! あ!り!が!とぉ!ご!ざ!い!ま!しゅ!……なのじゃ!」
ゆっくりハッキリ言った場所で噛んだ…、暑苦しい。
おじさんは家の中に引っ張るように引き込むと自己紹介をする、私たちもすると旅人だと知りお礼ということで回復薬などのアイテムをたくさん貰う。その時思ったけど風邪薬は無いんだよね、大変だね…。
おじさんの名前は『せんちょうまん』さん、はじまりの村の村長さんで見た目通りの年齢であった。喋り方の癖は(少し前に他界した)妻譲りで受け継いだのだと笑っていた(少し気まずかった)。
「若いにお強い・・」「そちらの男は・・」「この村は・・」「勇者様の家が・・」
常に笑いながらお話や質問が途切れることなくされて本題に入れないで外は暗くなっていった・・・
「ま、まことに!申し訳ありませんじゃ!!」
謝罪されようやく空き家について話せる。村人ですら中々話す機会が無いようで寂しさあまりについつい夢中になってしまったようで謝罪を受けながら少ししんみりしてしまった。
・・・。
それから無事に空き家も購入・・・して道を歩く
「100G・・・よかったのかな…」
「はい…」
この村では基本お金を使う機会が少ないようで稀に外から来る商人からの取引に使うくらいだと言われて形だけお金を支払ったのであった。
「あたらしい家だ!これで・・5だね♪」
「うんそうだね」
「?、4つではないですか?」
マルシカクちゃんにとっては家を出ても家だからね
「マルシカクちゃん、まだ歩きそうだから抱っこしていーい?」
「うん、ありがと!」
「え?あの?」
私もやっと筋力が上がった・・しっかりと力がついてきた気がする、マルシカクちゃんを抱えくっつくのが楽に感じてきて実感する。
「おねえちゃん♡」
「うん、マルシカクちゃん♡」
かなり幸せです、マルシカクちゃんは私が喜ぶと知っていて顔をくっ付けてくるし名前も無意味に呼んでくれる、バカップルって馬鹿じゃないとなってみて思えたんだよ。
「ん…」
恍惚の表情で羨望の眼差しを向けるみのりさんに呆れた様子が無いのも嬉しい、これで「何だ?あいつら…」みたいだったらちょっとね…
「グリード、みのりさんを私たちとと同じようにして」
ちょっとしたイタズラ、好奇心でどうなるかちゃんとした命令をしてみた。
「はえぇ!?」 驚くみのりさんに対してニコリと微笑むと私たちをチラリと上から下へ流し見てみのりさんに近づいていく、困惑に動けないみのりさんの前で態勢を低くするとまたニコリと微笑んだ
「あ…え…ん…わ、わかりましゅた!」
諦めたようにみのりさんが真っ赤な顔でグリードの肩の後ろへと手を回すと軽々と負担をかけないように支え持ち上げた
「いっしょだね!」
「は、はうぃ…あ、温かい…でしゅ…」
見ていてニヤニヤしちゃうような気恥ずかしい光景だけど、ホッとする一コマですごくいい。 傍から見たら私たちも親子…姉妹の戯れだろうけどね
「遠いかったなぁ…」
家に辿り着いたのは1時間くらい先のことだった、真ん中通りの奥辺り。家は掃除が必要っぽいで、今日はすぐにキュウカ村の家に移動したのだった。