まっすぐ村から
道の両脇には田んぼが並ぶあぜ道を景色や空気を朗らかに楽しみながら歩いている。
時折ヒョコッと現れるモンスター、昆虫系とカエルが主である。
「〝おたまちゃん〟は出ないねぇ」
地上なのに魚も普通に出てきたゲームとは違う。
「おたまちゃんって?」
「カエルの子供のモンスターだよ」
モンスターだから子供じゃなくて別個体のモンスターだろうけどね
「カエルさんの小っちゃいの?」
「ふふ、両生類って言って、カエルの子供の時はお魚さんなんだよ」
「「へー」」
みのりさんも知らないみたいだったね、この世界の生態が同じとは限らないけど多分同じだろう
実はここの田んぼでもイベントがある、洞窟側から向かって右側の三枚目の田んぼの周りを反時計回りに2周すると〝おおナマズ〟が現れて戦闘になる、倒した後にこれから行く『まっすぐ村』に戻り村人に話しをすると最後に話す村長さんから話があってちょっと使える武器が貰える。 ちょっと見てみたいけど道じゃない人様の田の周りを歩くわけにはいかないだろう。
この情報はハッキリ得られるわけじゃなく、まっすぐ村の人からかなりぼかされた物言いから流れで入る
村人A「最近は魔王の影響でモンスターが活発になってるな」
村人B「シクシク、私の子供がねずみ色のモンスターの子に襲われて・・・」
村人C「わしは見たんじゃ! 洞窟に入っていくモンスターの影をな」
これはこの人たちから順番に連続で話しかけた時しか聞けない会話でBさんとCさんの会話は普段は違っている。 そして、この会話を聞いた後に村長さんに話すと
「最近この辺りに出没するモンスターがいて困っておるのです。
勇者様、どうか退治していただけませんでしょうか?」
と、なりこれを受ける。さかさま洞窟に向かうと入口にネズミがいて追いかける、それが逃げる先がさっきの田んぼでおおナマズが現れる。 村に帰り村人A~Cに感謝されてから村長さんに話すと達成(*先に村長さんに話すと無かったことになるので注意)。
すごく凝っていてとても面白いイベントの一つである。
そんなことを考えながら歩いていたら後ろから回復した勇者様が走って追いかけてきていた!
はあ…もう少しで村に着くのに何用ですか…
「はぁ…はあ! 薬ありがとう」
「どういたしまして」
何でしょうか? 面倒くさいです、という態度を隠さずに対応してみた。
「あぁ」
・・・。何も無いの? 黙ったというより終わった、お礼を言いたかっただけ?
・・・。気まずい、勇者様は何にも行動を起こさずに見てるだけ、立ち去るなり喋るなりしてよ
「では、行きますね」
「危ないから送る!」
いらない! 勇者様たちの責任感が強過ぎるよ!
「もう村も近いのでいりませんし、はやくマァマさんと合流した方がよろしいのではないでしょうか?」
「それよりも困っている人を放っとおいたら、またあいつにうるさく言われるんだよな」
だから送るぞって?
困っている人って誰ですか? 私たちですね…迷惑な人が離れてくれないんです
「はぁ、ではお願いします…」
「任せとけ!」
マルシカクちゃんとみのりさんも分かったように諦める、拒むより村に着く方がはやい。 勇者様は先頭に出て付いてくるように言うと前を歩き始めたのだった。
・・・。
10分程度で村に着く、戦闘は1回で勇者様辛勝
「ありがとうございました」
「当たり前のことをしたまでだからお礼はいらないよ!」
ぶちギレそうになりました、汚い物を見せられて、勝手に前に出て傷を負ってそれを見せられ精神的負荷をかけられ、逃げるため先に行ったのに追いかけられ、要らない善意を押し付けられ、お礼を渡さないと嫌な気分にさせられる言葉をかけられ
「ナントジヒブカイカタナノデショウ」
「えい!」
マルシカクちゃんが抱き付いてきて、ほわぁぁ!っと嫌な心が浄化されていくようだった。
「俺らは世界を救うために旅に出てるからそれくらい当然だからな、また困ったら言ってくれ!」
私の言葉も肯定的に取られて上から追撃されてしまった、どんなモンスターよりも恐ろしい。 背中を見送る・・・ことも無くマルシカクちゃんを愛でながらそう思った。
「ほんとにマルシカクちゃんありがとう、私あのままだと壊れちゃうかと思ったよ」
「マルシカクもね、おにいちゃんをね…
うん!しなかったよ!」
彼女も大大大好きなおよめさんに不快を与え続けられていたのを見ていて、静かに溜めていた。
あ、あれ? マルシカクちゃんもしかしてすごく怒ってた?
いっぱいいっぱい褒めてあげるととってもかわいい反応をしてくれて安心と悶絶です。
「ユウナ様が前に立ち我慢していましたのはとても凄いことだと思います…」
聖人みのりさんまで限界超えた我慢をしてたようで、マルシカクちゃんに許可を取り2人でみのりさんにくっ付き癒しを与えてあげる
「はぅ! よ、よ、夢のようでしゅ…」
敵無しの私たちにここまでの被害を出させた勇者様にはもう二度と関わらないとみんなで誓ったのである。
適当な服に着替えたら二番目の村『まっすぐ村』に入る。
まっすぐ村は一本の道しか無い通り抜ける場所って感じの村。 ゲームではお店の他には村長さんの家しかなく、10人ほどの村人が外にいるだけのたった四マスの小さな村だったが
「家が多いね」
「人が多いのでしょうね」
家、家、家と民家が並んでいてのどかな景色よりも家の方が目立っていた。
・・・まてまて~!
・・・あはは!
追いかけっこしている少年少女がいる、ちょっとジッと眺めてみる
「うん、マルシカクちゃん一筋だね」
「えへへ♪」
「ふえっ…」
マルシカクちゃんにも聞こえるように言って抱っこするとそれは嬉しそうな笑顔を見せて頬にチュッと口づけ、みのりさんは指を広げ顔を覆って見ていた。
今までと違いこれだけ家があると分かりにくい、手近な場所から順々に眺めながら一本道を進んでいると鍬を持ったお爺さんが朗らかに話してきた
「こーんーにちは、旅の人かえ?」
「そうですね、丁度来ました
よろしければ、村長さんの家をおうかがいしたいのですけれど?」
「ほぉか、ほぉか!
ちょうど帰るとこだぁ、一緒にきなはいな」
村長さんでしたか!? 全く違う画でしたから分かりませんでした。
そのまま付いていくと、武器屋と防具屋に挟まれた村の真ん中に家はある
「かわええ娘さんたちだよー」
「はぁい!」
村長さんが家に入りすぐに呼びかけると中から二十歳過ぎくらいの女性が出てきて、私たちを見るやいなや正座で丁寧に出迎えてくれた
「これは、これは、ようこそおいで下さった
妻のろうタロウと申します。 お茶の準備をしますのでどうぞゆっくりしていって下され」
何からつっこめばいいのか分からないよ!? ろうタロウさんってこの娘さんっぽい人に呼びたくないし、そもそも娘さんじゃなくて妻なの!?
「ずいぶんとお若い奥ちゃま…でしゅね」
「そうだね…年の差夫婦だね…」
こっそり言ってくるあたりこっちでも珍しいんだろう、みのりさんが噛んだ奥ちゃま・・・フフッ…やばい、村長さんから見て嵌まっていて笑えてきた
「おねえちゃん、だいじょーぶ?」
「く、だ、大丈夫!ふふっ…マルシカクちゃんとみたいって幸せに思えて」
無理やり誤魔化したらマルシカクちゃんは「何が?」って感じだったけど幸せの言葉に良く思ったみたいだよ
広いお部屋一部屋、この村の家は全部こんな感じなんだろう
卓袱台でゆっくりお茶を啜っている
「ちょいと前に勇者様が来なされて村を救って下さったんじゃ」
「それは、まぁ」
「しかもの、お礼はいらぬとな、若ぁのにあれはいい男じゃな」
「そうですね」
本題に入れず、ひたすら村長さんは勇者様の武勇伝(村視点)を語っている。私たちから見たら「ソイツ、ダレ?」である。
まだまだ話が続きそうな時だった
「爺様、娘さん方にはつまらない話ですよ?」
「おう? ほぉじゃろか?
すまないの、ではそのお連れ様の曲がった棒を持った娘様じゃがな・・・」
今度は幼なじみさんの話が始まってしまった、しかしこれはみのりさんには興味があったらしく高尚な人なんだなぁっとまだ見ぬマァマさんを尊敬し始める。勇者様の話で盛り方が分かると思うけど。
「まったく、何してんだか・・・」
「「・・・」」
「あ! すみませんねぇウチの爺様がぁ」
話しに全く興味の無い私とマルシカクちゃんは妻、もといろうタロウさんに止めて欲しいなぁという視線をチラチラしていたら、ほんわか丁寧口調が一変した呟きをするろうタロウさんを目撃してしまった。
これって…、頭に浮かんだゲームでのイベントが一つある、それで無いなら追加要素と推測する。その一つは場所、人、条件ともに全く違うけど似てる部分があった
「お狐様」
ポツリと呟いてみた、するとろうタロウさんはビクリと体を振るわした
「ハンバーグありますよ?」
「「ハンバーグ」 あ、いえ…」
食いついた! マルシカクちゃんもだけど、おいしかったと大好物になったマルシカクちゃんのために作ってありますからね
「どうぞ? マルシカクちゃんも食べる?」
「んー、後で食べる!」
ちゃんと状況を見て我慢してえらいねー♪
ろうタロウさんの前にお供え物を差し出した、彼女は少し戸惑った後にフォークを手に取るとかじりつきでパクリと食べて幸せそうに目を細めた、みのりさんもさすがに気になるのかチラチラ見てるが気にせず話している村長さんの手前そっちを優先していた。
「おいひぃわぁ!あんた良い人ね!」
「おねえさんはオキツネサマなの?」
マルシカクちゃんは知らない単語でも覚えちゃう天才だね
「えぇそうね、よく分かったじゃない
これ最高だわぁ!」
気持ちいいほど一囓りずつおいそうに食べてくれる。
「ろうタロウさんは村長さんの妻で?」
「えぇそうね!そこに偽りはないわ、本気よ」
「うん!よかったぁ!」
マルシカクちゃんも心配してたんだ
「昔、彼を見てコロッと愛してしまって
人になりたい、人になれたらって思い続けていたらなれたの、それからずっとね」
狐の嫁入りイベント回収、愛を感じる好きなイベントだ。
狐がトラバサミの罠にかかっていたのを少年が助けて恩返しにくるお話、少年が大人になっていくけど少女は変わらない。
大人になった少年は思い切って話をすると翌日から姿を消してしまう、そのまま会えず病気を患い寝込んでいたところに(家に不法侵入した)勇者様登場、死ぬ前に彼女に会いたいと好物で誘い込む作戦に
彼女は獣のお肉が好きという情報を頼りに『ドロップ品を使った肉料理』を彼に渡すと家の前に置いて誘い込む。普通ならあり得ないが夜、家の戸をコッソリ開ける一匹の狐が現れ寝込む少年の傍に行く、その時少年がちょうど目を開けてしまいその狐と視線が重なりあう
「あぁ、彼女と同じ優しい瞳だね」
と言って狐の目から涙がこぼれ落ちて少年の顔に当たり次の日には快復していたという。後日、少女が現れて・・・、で終わる最後はぼかされたお話(報酬は無い)。
姿が変わらないところが一緒だったくらいで共通点は殆ど無いから二割くらいしか確信なかったけど多分それにハマる出来事だろう。
「狐なことは知っているのですか?」
「えぇ、伝えたわ」
「いい関係ですね」
「うん!」
種族を超えた愛だねぇ、お狐様も見たいけど村長さんに失礼だから遠慮しないと
ろうタロウさんはニコリと笑った、咳払いをする
「それでして、娘さん方の御用は何かありましたのでしょう?」
「ふふ、うん、空き家を買いたくて来たんです」
「あらぁまぁそれは、でしたらはんばーぐとやらの御礼に差し上げますねぇ」
いやいやいや! 価値が違いすぎますって!
「い、いえ、ちゃんとお支払いしますので」
「爺様、それでよろしゅうですかぁ?」
「おぉ、ええよぉええよ、すまないの、案内してくれんか」
こっちの話しも聞こえてたのか、ハンバーグ一つでお家が・・・お狐様に騙されてないよね
ろうタロウさんが家まで案内してくれることに家の位置は入口と反対側にある家でマルシカクちゃんの家と同じようだった
「御遠慮なさらずどうぞぉ、では、失礼いたしますぅ」
「あ、ろうタロウさん、これお2人でどうぞ」
「あ!ありがとう! とっても嬉しいわ!!」
ハンバーグをお土産に渡すとピョコッとお耳だけ一瞬現れてすぐに消えて恥ずかしそうに帰っていくのだった。
今日はテレビの2のボタンを見ましょう、2人の期待も大です。
持ってきてあるテレビを出して電源を入れると画面が起動したので自分の家でなら映るのだろう。
2のボタンを押して流れた映像は私にとって小さな時に見てた大昔の戦隊ものだった
弟のゆうやがちっちゃな時に大好きで私は微妙だったけど、そんなゆうやが可愛くて一緒に見ていた思い出の番組、内容はあまり記憶に無いけどね
「『ヒーロー戦隊ダレン』・・・、こんなタイトルだったっけね」
「おねえちゃんはしってるの?」
「ううん、あんまり
マルシカクちゃん膝に乗ってみない?」
「うんっ!ありがとぉ」
こっちこそありがとう♪ 今だけはお嫁さんじゃなくて妹でいて欲しい気分なんです。
みのりさんも幸せそうでなりよりです…
「あー、もう1本みたいね…」
「はいぃ…」
「ダメだよ、7日ごだからね!」
あんなにつまらないと思ってたのに不思議なものでとても面白かった、大人になると感じ方が違うのかなぁ。
番組は私の記憶頼りっぽい、今覚えているとかは関係無く見たものだから嫌なものが出たらどうしよう…、好きなアニメとか見られるだけ嬉しいけど後は何が映るんだろうね?
・・・。
弟の言い残した〝携帯〟が気になってリュックを出して調べてみると普段開けないチャックのポケット部分に電源の消えた携帯を発見
「それなぁに?」「何でしょうか?」
2人とも見たことない物に興味津津である
しかし、使えない物があってもただの・・・
電源ボタンを長押ししてみたらなんと!起動したではないか、優那が驚いて落としてしまったが長い起動中画面はずっと続いていたので壊れていない
「わかった!小さいテレビ?」
「あ、似ていますね」
画面が付いて何か映り出したのを見てマルシカクちゃんはテレビだと思ったみたい、たしかに!
説明するのは簡単だけど、こっちで何が出来るか分からないから操作できることから説明すると言っておく。
やがて起動が完了してみると、画面にロックはかけてなかったはずなのに『タッチ認証』と表示してあった
「マルシカクちゃんここに指で触ってみて」
「うん!」
とりあえずマルシカクちゃんにやってみてもらうと予想通りに『認証出来ません』と元に戻り私がタッチするとすぐに解除された。
「えーと、機能は・・・何にも無い・・?
あ!電子書籍だけ読めそう」
通信も無ければ入ってた機能もごっそり無かったけど何故か電子書籍が読めるのだけ使えそうであった。
「でーしそせき?」
聞き返したのはみのりさん、笑いながらゆっくり言い直して開いてみる。
並ぶのは電子書籍だけじゃなくて普段購入した紙の本も入っている、一ヶ月に一冊くらいしか買えなかったので数はとても少ないが感動する
「絵がかわいい!おねえちゃんこれなぁに?」
「これはね、本なんだよ。 ここに記録されているの」
「「えー!?」」
いい反応を再びもらいました! 試しに一冊開いてみようと・・・したけど、どうしよう…百合ものと(怖く無い方の)15禁ものしか無い。
マルシカクちゃんもみのりさんも大丈夫か…
「今から試しに見てみようね」
「うん、みたい!」「どうなのでしゅか!」
前のめりでワクワクしているのが丸分かりだね
・。
・・。
・・・。
始めはテレビと混同していて動かないことに驚いたり挿絵みたいじゃなく絵がメインでお話になっていて不思議そうだったりしたがすぐに慣れて読みふけていた。
ジャンルはほのぼの系ばかりで黒が渦巻くような本は好まない。 無料のとかで嫉妬のとかイジメ系のに当たるとすぐにモヤモヤと変な気分になったものだ。
「これのつづきも7日ご?」
「ごめんね、これの続きは無いんだ…」
マルシカクちゃんはすぐに諦める
「・・もう少しでしたのに…」
みのりさんは静かに絶望していた。なんとなく言いたいことが分かる、みのりさん的にはこの先2人がくっついて起こしそうな雰囲気があるから、全年齢向けのだから無いけどね。
次の日はちょっと戻ってたくさんドロップ食材(お肉)集めをして夜にキョーさんも呼んで一緒に夜のちょっと豪華な食事会を開いたのだった。
ユウナLV.26:マルシカクの嫁,15歳(不老、不死)
HP:270 MP:590 ATK:8 DEF:33 MAT:8 MGR:30 CT:580
マルシカクLV.26:ユウナの魔法使い,7歳(不老、不死)
HP:175 MP:116 ATK:37 DEF:22 MAT:86 MGR:29 CT:41
みのりLV.26:過哀らしい僧侶,16歳(不老、不死)
HP:65 MP:71 ATK:11 DEF:18 MAT:64 MGR:62 CT:5
ついにみのりさんのレベルが並んで、経験値の設定を『均等』に戻していたが、職業がひどいことに・・・本人には「可愛らしい」で伝えておこう(私とマルシカクちゃんのは誰から見ても夫婦と認められたということに思えて嬉しかった)。
みのりさんはDFEの値もあんまり上がらなかった、けれどMGRが異常に高くなったから装備と合わさり魔法攻撃してこられてもほぼ無効化されるだろう。 CTが低いのはみのりさんの魅力だと思う(良い意味で)。
ちょっとしたこの『状態』の遊び誰が見て付けているのかちょっと楽しいなぁ
・・・。
一番目の村『はじまりの村』へ向かうのに通るのは『ささやき樹の森』であり、ゲームが始まり勇者が村を出て初めて向かう目的地である。
まっすぐ村を正面に見て東南東の方角へと続く田んぼ道を歩いていたら青年に出会う。
「お? あー…まさか出会えるなんて…」
明らかにこの世界の人で無い見た目で執事のような容貌にどうやってくっ付いているか分からない小さなシルクハットを斜めに被った短髪黒髪イケメン青年、この青年は遭遇率が0に近いと思われる人型モンスターであり初対面であった!
各場所に同じような遭遇率の好まれやすい人型モンスターがいると思われていて優那でもゲームで遭遇出来たのが3種しかおらず、ユウナはその内の一体のキュウカ村からあらし峠の間で現れるモンスターにその時は出会いたかった。
「ん、でも戦闘ウィンドウが出ない」
「おねえちゃん、モンスター?」
こんな場所で何してるの?って感じだったみのりさんがマルシカクちゃんにギョッとした視線を向ける
「うん、そうだと思うけどね?戦いの画面が出ないの
話してみる?」
頷くマルシカクちゃんに念のためにリボンセットに装備を変えておく。
「こんにちは!」
青年は喋ること無くコクリと頷き返事した
「マルシカクです!おにいちゃんは?」
軽く目をつむると顔を横に振る
2人の格好もあってか、マルシカクちゃんがイケメンに話しかける姿が絵になってかわいい! ちょっとのどかな背景が合わないけど
「おねえちゃん名前ないって!」
判断を委ねてくるマルシカクちゃん、後ろで青年は片手を胸にあててジッとこっちを見ている
『▶『仲間にする』『戦う』『逃がす』』
おぉ、急に選択肢出てきた!? 仲間に出来るのか!? 正直いらない・・・。 戦うと次のステージのボスくらいの強さだったから余裕だけど、経験値が大きいだけだったから戦うくらいなら逃がすか?
マルシカクちゃんに決めてもらおう
「マルシカクちゃん、仲間にするか戦うか逃がしてあげるか出来るみたいだよ」
「そうなの? なかまに・・・おねえちゃんはおにいちゃんどう…?」
「!? 私にはマルシカクちゃんが全てだからね、どっちでもいいよ」
不安そうなマルシカクちゃんだったけどパァッと輝く笑顔を見せてくれた
「じゃあ、おにいちゃんごめんなさい」
「え・・・」
マルシカクちゃんは心おきなく『逃がす』をしようとした時にみのりさんが声を出して恥ずかしそうにしまった!と慌てていた
「みのりさんは仲間に欲しいの?」
「はぅ……」
何も答えないけど誰が見ても分かる、みのりさんは害が無いなら仲間にしてみたいようだ。マルシカクちゃんと顔を見合わせて頷く
「やっぱりね!おにいちゃん仲間になってください」
青年はコクリと頷いた。選択肢は選ばなくても大丈夫みたいだ、「う…も、申し訳ありましぇん…」とみのりさんは謝っているけど。人型で美形なのだから興味が出るのはある意味当然だと言えると(一般的には)思うからね。
「みのりさんが名前決めて下さい」
「はぃ!? わ、わたきゅしですか!?」
当然ですよ!拾った人がしっかり責任を取って下さい
「で、では・・・・面ハマーン様とい・・」
「みのりさん待って!?」
ここでもまさかの名前におまかせが適用された!?
キョトンとしているみのりさんには悪いけどその名前嫌です! どう言えば伝わるのかな…
「もう少し意味の込めた名前にしてみようよ、みのりさんみたいに愛着を感じて欲しいなぁ」
「へぅ…そ、そうですね…わたくし少し軽率でした…、大事な名前でしゅのでしっかり考えますね」
よ、よかった…意味から考えさせたのなら変な単語は出ないだろう
「おねえさんけっこんするみたいだね」
「そういえばそうだね」
そんな考え無くても逆プロポーズになるのか、ペットの名付けみたいに思ってたけど見た目が人だしね
少しの間、歩きながら真剣に考えていた、その間も青年は命令とばかりにみのりさんの傍でシュッと待機していた。
私もこの間に『用語・遊び方』を見てみたらこの事についてが書いてあった
『仲間
モンスターの中には特別に仲間に入れられる特別な個体が存在している。
名前を決めると加入させる事が出来る』
『名前の役目
特に無い。』
『仲間の生活
全て指示通り動く。 食事は必要無し(食事〇)。 排泄無し』
要するに今はまだ仲間じゃなくてみのりさんがしようとしている状態だった。
あとは手間はかからない、冒険に連れてもいいし留守番させておいても大丈夫みたいだからみのりさんに任せるつもりだ
田んぼ道も抜けて生える草木が目立ってきた頃
「お待たせして申し訳ありましゅ・・・せん」
名前が決まったようで立ち止まると青年に向き直っている
「…貴方様の御名前はグリードと…よ、よろしい…でしょう…か…?
幸せになりますようにって」
青年・グリードはコクリと頷いて頭を下げた。
あれ?幸せで何で・・? なんか欲みたいな意味だったような… 良い名前だからいっか
「グリードおにいちゃんよろしく!」
「よろしくお願いします」
グリードLV.26:なんちゃって執事 年齢不詳
HP:9999 MP:13 ATK:13 DEF:13 MAT:13 MGR:13 CT:9999
早速追加された仲間の状態を見たら何これ!?だった。 HPとCTがカンストしてて、他がレベルの半分の数値だ! レベルは1戻り無しで私たちに合わせてある。 年齢が分からないのは分かるけど見た目から付けられたような楽しい役目になっているし最高でした!
装備品は全部『執事の~』となってて効果は無し、見た目専用装備って感じだった。
・・・。
これからささやき樹の森に入るのだけれどみのりさんが今、あの買い物を思い出したらしい。
「今からみのりさんに装備させますね、覚悟していて下さい」
ホント町の防具屋で買った、まだ開けてすらいないユニーク装備だ
「ひぃ!覚悟がいるのですか?」
「必要です!
でも効果はすごいです、性能は高く水属性軽減でした」
箱を出して蓋を開けてみた、そこには予想通りの装備が…違った!?そっち!? 蓋をソッと閉める
『あぶない水着』ゲームでも今ここにあるのも同じ名前で同じ効果の同じ物である、ただしゲームでは見た目の画が無いためどんな物かは想像しかなかった。
私は当然のように女性用の布のかなり小さな水着を想像していたけど違った
『この箱にお嬢さんが求める物が入ってる、誰に渡すが知らないけどよぉ、絶対に応えてもらえるように頑張れよな』
たしかに渡す方だった!自分が着て落とす方じゃない!!
パカッと開いてみのりさんに見せてみた、マルシカクちゃんにはみのりさんが着ないなら見せない
「・・・ひぇ!? ふ、ふく? 防具ではにゃいのでしょうか」
「防具で水着です、装備してみます?
もしかしたら装備で着用したら男女変わる可能性もあります」
入っていた男性用の水着3枚が国宝とばかりにキラキラと光り並んでいた。それは明らかに細いブーメランの形をしている、何がとは言わないが無理だろう面積である・・・女性ならまぁ…上着れば…
「ふぇ!? さ、さすがにここでは…は、恥ずかしい…ですけれど……
ゆ、ユウナさまが、ど、どど、どうしてもと・・・」
「分かりました、家でお願いしますね」
「・・・え、は、はうぃ…分かりました!」
あ、危なかった…。まさか承諾するとは・・思わなかったよ…
いつまでこんな場所にいるといつ勇者たちが通るか分からないのでとっとと先に進むことにしました。