ゆうやのプレイ2
『ホント町』で全部は買えぬ装備で整えてゴールドが無くなりまた金集めをしなければならない。
「ゴロツキ団は設定強すぎだろう! こっちは主力が武器無しなのに!
しかし、ここまで来ないと仲間が増えないのも珍しいゲームだよな」
新たに仲間になった僧侶のレベルアップも兼ねてモンスター狩りだ。
ゆうやは結局、最初の時以外は優那作の攻略本は見ていない。細かくチェックしながら移動したり、人との会話に注意深く読み解いたりしていたがイベントらしいイベントは全く無かった、攻略本は何冊かある、後半だけに盛り込むわけが無いと思っているがせめて初めてくらいはいけるところまでは自分の力でやりたい。
「ほどほどにね」
「はいよ! でも明日はあんまり時間無いから今日はやらせて?」
「はい、はい」
クスっと笑われて「あの子と同じですよ」と言われて静かに部屋を出ていく。
俺も優那に「暇なら勉強すれば?」「よくそんなに長い時間プレイ出来るな?」みたいに言っていた。その度に「ゆうやもやってみる?」「やってみれば分かるよ!」と返された、画も微妙だと馬鹿にしてたのに恥ずかしい限りだな。
・・・。
短い距離だけど面倒くさい仕掛けを抜けた先の場所で、四天王と名乗る2人の男女が勇者を狙って襲撃してきて見事にやられた。
「男は強いし女は速過ぎて回復が間に合わねぇよ!」
バランスおかしいと思う強さにイラつく。
それから、その前でセーブすることにして何度も挑んだがダメだった、絶対勝てない強さだ…
チラっと攻略本を見た
「ここだけ!ここだけだからな!」
名前だけパラパラと見て捲る、一冊目に書いてない。マジかと思った。ここまでイベント無しって、絶対あり得なく、何かしら沢山あったことは確信した。
二冊目に『対戦、四天王2人』とかわいい文字で書いてある
『推しょうレベル、最低29以上(予想)』
「は!?」
全く足りてない、それにそれだけいくにはかなり道草をしなければ出来ない。
絶望しながら続きを読むと、「なるほど」となる、そのちょっと前で勇者の能力上昇値が大きくなって、『キュア』を覚えるらしい。状態異常が厄介だから攻撃役が空いて楽になる(僧侶は回復に追われ、他はアイテム役に徹される)と納得する。
『ホント町後にしれんの洞くつに戻りさいだんで『なぞの球』を手に入れているとバラットと一緒の????が戦とう回ひされる
〇レベル23くらいで大丈分!』
優那はまたあそこまで戻ったのか!?って思った、『空き屋ならすぐ』のカッコ書きにたしかにと思うがそんなお金あるくらいならレベルアップし過ぎているだろうと一人ツッコんだ
・・・。
雑魚モンスターを倒しながら1回戻ってから、四天王の一人にやっと勝ったと思ったら画面が黒くなる。
故障かなとコントローラーを置こうとした
「なんだ?何が?」
起こったと言おうとしたら、すぐに画面が付いていた。そこに映っていたのは女性3人、1人はまだ幼い子供、1人はどことなく見覚えがあるような気がする…?ビクビクしてる美しい女性、中心に立つもう1人がなんと変な招待を受けて消息不明になった姉の優那だった!
[ゆうや!?]
嘘だろ!? 雰囲気がちょっと違うけど本物か…
「え!?姉ちゃん!? い、いや、優那か!」
思わずに言ってしまったが、なぜか恥ずかしくなった
[ひぇ! だ、どなたでしょうか?]
[えっと、私の弟です]
怯えた女性が何か言っているがそれどころじゃない、すぐに優那の今を聞きたい!
「今、どこにいるんだ!? 無事なんだな?」
[元気だよ、場所は知っての通り『勇者のRPG』にいる、お嫁さんも出来たんだ♪]
やっぱりこのゲームに!? いや、本当にこのゲームに!?
それより何て言った!お嫁さん!? 女か!?
[マルシカクだよ!おねえちゃんのおよめさんです!]
マジか!? 子供か!? てか!マルシカク!? まぁそれはいいや、お嫁さん…子供の好意とかじゃなくてか? でも姉ちゃんの夢が叶った? そいつの親は・・・ゲームだから好きに出来るのか?
いっぱいいっぱいで考えてたら優那が急に慌てたようにして話し始めた
[ゆうや、帰るつもりは無い、お父さんにも「幸せいっぱい、マルシカクちゃん大好き♡」と伝えてね、元気でね!]
「帰れないのか!? 携帯はど・・」
慌ててたから咄嗟に答えようとしたけど画面は切れて暗くなる、慌てたのは時間が無かったからだったのか…
急に静かになって次第に冷静さを取り戻していく
「・・・・・・・・・。
・・・違う、帰らないって言ったな、マルシカクちゃん大好き・・・か…」
優那が気兼ね無くあの場で言ったってことは予想でしかないけど、こっちで問題だと思ってた事全ては解決したんだろう、多分親にも。よかったな。
携帯が使えるわけが無いって言ってたけど、1%でもわらにもすがる思いであいつの携帯をリュックのポケットに入れていた、連絡は無いから無駄だったみたいだけど。
テレビ画面が付いてさっきの続きになっていた。今日はセーブして止める。少しの間、俺の心は姉ちゃんに馳せていたのであった。