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マジメに本当だよ

そんな、こんなで私は今、イギリスにいる。今は・・・・・・イギリスの一番良い季節、6月。かなり間をすっ飛ばしてしまったけど。年末年始の休暇中はお互いに家の外では意思の疎通ができずに、大変だった。私は彼の早口英語がわからず、彼は私のつたない英語がわからず・・・・お互いかなり疲れてしまった。しかし、なんとか乗り切れたのは、この不思議な家のおかげだろう。面白いと思ったこと、あの時はこんなことが言いたかったんだという説明、あれはどういった意味?などを家で復習できたから、互いに思っていたことや考えていたことが確認できてよかったのだ。確かに一致していることも多かったが、同じくらいに へえぇえ、そんなこと考えてたの?ということもあったのは事実だ。新発見というやつか?で、どうしてイギリスにいるのかというと、こっちに引っ越したからだ。仕事ももちろん、持ってきた。青い目の家で、というか私の書斎で仕事を続行中だ。日本とイギリスの家の不思議な状態はまだ続いている。どうして引っ越してきたか?さて、何でだろう?自分でもよくわからないが、そうしたいと思ったからだろう。007の撮影は終了したらしい。11月にワールドプレミアとのこと。全く違う世界の話なので私には関係がないのだが、この前青い目がとんでもないことを言い始めた。

「日本の着物、着るといいんじゃない?あれ、キレイだよね。」

「??」意味わからず・・・・また言われた。

「多緒は持っているんでしょ?着物?」

「持っているけど、未婚女性のすごい若い子が20歳~25歳の間に着る着物しかないよ。こっちに持ってきていないし、それに一人じゃ着られないし。」

「日本に帰って、買ってくるといいよ。」

「なんで?」

「11月に着るんだよ。」

「11月に何があるの?」何を言っている?という顔をされた。

「ワールドプレミア。」

「何、それ?・・・・・・・・・・・・・・・・・からかってる?」おっと、眉間に皺が寄った。サイレンサーつきの銃で眉間を撃たれそう。

「まじめ。僕1人で行くってこと?」

「いやあ・・・・私、一般民間人だし・・・・勘弁してほ・・・・。」

「ダメ。」

「ダメって・・・・私、あなたと一緒に暮らしているのも内緒なのに。」そうなのだ。不思議にパパラッチにゲットされずにここまで来ている。アジア人の小さいのが彼の周辺にいても誰も使用人くらいにしか思わないだろう。それに私、あまり外に出ないし。ワールドなんとやら・・・・まずいだろう・・・それは。会社にも一身上の事情でイギリスに行くと言ってある。誰も、007がその事情の元になっているとは知らないのだ。

「別に内緒にしてないよ。する必要ないし。」

「・・・・・・・・・・・」私は内緒にしておいて貰ったほうが都合がいいんだけど・・・・

「なんで、行きたくない?」

「顔が出たら、今の穏やかな生活が一変しそう。」

「そうかもしれないけど、何時かは君も僕と一緒に公の場に出ないといけなくなるよ。それが11月になるかもっと遅くなるか、だよ。」確かに、パーティーの誘いなどなどは引きも切らずにあるのだが、私はその全てを断っていた。だって、彼の世界と私の世界は大きく違うし・・・・でも実は言葉の問題(少しは上達したが、まだまだパーティーなんて!)、それにやっぱり彼と一緒に行動できる女として振舞えるか、周囲がどう見るかなんて、考えてしまうとダメなのだ。そっとしておいて欲しいというのが正直なところ。フラッシュを浴びるなんて考えただけでも寒気がする。

「イヤ?」

「・・・・・・・今のままじゃダメなの?」

「これ、見ながら考えておいてくれる?」と小さな箱を取り出して、手渡してくれた。

「何、これ?」

「婚約指輪だけど?」何を事も無げに言うのだ?この人は?

「へ?」よっぽど抜けた顔をしていたと見える。彼は私が言う前に断った。

「マジメに本当の指輪だよ。」とにっこり。ニッコリじゃあないぞ、こら・・・・こんな大事なものを・・・・・私がなかなか箱を開けようとしないので青い目は

「ちょっと貸して。」と箱を取り戻すとパカッと開けて

「ほら、見てみて。」と差し出した。おっと、これは・・・・・サファイアだ。

「9月でしょ?誕生日。だから、これを選んだんだけど。」馬鹿でかい石ではなく(実際は大きいのか?)清楚で上品な感じの指輪だ。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「嫌い?」

「・・・・・・・・・・素敵・・・・・・・・・」

「コレつけて、11月、ダメ?イヤ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・どう振舞っていいのか・・・・・」

「僕だって緊張するんだ。同じ立場だ。」

「・・・・・・」戸惑った目をして彼を見つめていたのだろう。青い目は何も言わずにこちらをじっと見ている。これ、婚約指輪だよね。

「婚約って?」

「文字通り。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」眉間に皺が寄り始めた。そして、何か言おうと口を開きかけたけど又閉じて、私が何か言うのを待っている。

「・・・・・・・・・・ありがとう。何時、日本に帰ろうかしら?」

「!!え?帰るの?」すごい形相。

「帰っちゃダメ?」

「帰るの?なんで?!!」なんか慌てているけど、どうした?007。

「うん。着物・・・・・指輪に合ったのを選ばないと・・・・」

「あ~ビックリさせないでくれるか?」

「何が?」

「戻ってこないみたいだったじゃぁないか?!」

「誰もそんなこと言ってないじゃん。」また、彼は何か言いかけて止めた。口がパクパクするというのはこの状態のことなのかしら?なんてつまらないことを考えてしまった。

「ちょっと貸して。」また、箱を取り戻すと青い眼は私の前に肩膝で膝まずいた。そして、こちらを見上げると箱から指輪を取り出して差し出しながら、こう言った

「多緒、僕と結婚してくれますか?」おお、正式な申し込みはこうやるのか・・・・

「・・・・・・」なんて言ったらいいんだろう?

「マジメに本当だよ。」と彼は付け加えた。よっぽど私が懐疑的な顔をしていたと見える。じゃあ答えはシンプルに・・・

「はい。これからもよろしく。」彼はこの答えを聞いて、やっとほっとした顔をして

「こちらこそ。」と返しながら、指輪を薬指にセットしてくれた。

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