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これからどうなるのだろうか?

この1週間はハードだった。システムトラブルに付き合って、1日徹夜。2日朝帰り。システムトラブル解消後にその後処理(今後の対策をどうするのか?とか、報告書書きとか、会議とか)で通常の仕事ができなかった。結局のところ、週末はその皺寄せで仕事をしていた。当然のことながら、プライベートのメールを見る余裕もなく、そんな気分にもならなかった。日曜日の15時。やっとのことでベッドを出て、コーヒーを沸かして書斎に入った。会社から持って帰ってきたPCの電源を入れる。まだ仕事が残っている。できるか・・・あの書類・・・と考えながら、眠くてたまらなかった。この年齢になると徹夜はこたえる。一日寝て回復と言うようにはいかない。人一倍眠いのに耐えられない私は、睡眠不足が続くとめまいが起きる。ああ、この仕事、続けていけるのかしら?20代と同じペースで仕事はできないとこの頃つくづく思う。精神力で体はついていかない。いいなぁ。体力的に強い人。精神的に強い人。出世している人は皆、タフだもんなぁ。仕事をして、遊んで・・・・昨日まで作っていたドキュメントを開いて、コーヒーを飲みながらボーッと画面を眺めていた。何も考えられない。「ああぁ~だめか。」 と呟いて、考えナシにプライベートのPCの電源を入れた。プライベートのメールボックスを開いて、メールをダウンロードした。ジャンク、ジャンク、広告・・・・・機械的に仕訳をしながら頭の片隅でドキュメントをどのように仕上げるか考えていた。「これも、ゴミ箱、これもゴミ箱・・・・・ あ、間違えた。」 英語タイトルのメールをそのままゴミ箱に移したが、それはジャンクではなかった。イギリス人からだった。タイトルがシンプルすぎて捨ててしまったのだ。


件名: Hi ! Tao

本文: How are you doing? I cannot hear you. Alive? DC

引っ掛けメールみたいなタイトルだなあ。『生きてる?』って半分死んでるよ。 ゴミ箱を見たら、まだ他にも無意識に捨てているメールが2通あった。律儀なイギリス人。


件名: Re: England

本文: Thanks. I suppose England weather is fine but cold. Do you like my room? DC

あなたの部屋が好きかどうかなんて、私には関係ないよ。と思ったが、はっきりって、広くて落ち着いていて、うらやましいとは思ったな・・・・・


件名: Schedule

本文: Schedule has changed. I’ll return on ●●. DC

へ? ●●日って 再来週の火曜日。帰ってくるのが早くなったのか。イギリス人、短いメールだけど筆まめだ。しかしながら・・なんで、帰って来る日をちゃんと連絡するのだろうか?初手から『10日間留守にする』だの『3週間は戻ってこられない』だの、いちいち私に言っておく必要はあるのかと思っていたのだが。まあ、半分一緒に住んでいるようなものだから同居人に何か言うのは普通のことなのかもしれないが、家族であっても動向を把握していない人達もいるのに。マメ男ということなんだな。「イギリス・マメ男さま っと」と言って、最後のメールに返信することにした。


件名: An English ready writer

本文: I’m so surprised I’ve missed your three

letters. I’m so sorry. You are a ready writer, aren’t you? This week a serious system trouble hit my group and me. We had to stay up all two nights. Today is Sunday afternoon. I just wake up. Exhausted…. Anyway, it’s good news that you come back to our strange place earlier than your original schedule. See you soon. Tao


なんか、メールで英語だと行間に何が入っているのかわからない。言葉の選び方が正しいのかもわからないし、軽く書いているつもりがそうでもなかったりして。ま、いいか。と思いなおして送信した。コーヒーを更に足して、仕事に戻った。プライベートのPCはつけっぱなし。メールボックスも開けっ放しだ。定期的にダウンロードされるメールをチラチラと横目で見ながら仕事が捗るはずはない。気が散る。青い目でじっとこっちを見ているイギリス人の映像が頭に浮かぶ。ついでに眉間に皺も寄せてみた。これからどうなるのだろうか?我々はずっとこんなねじれた空間で共同生活を続けるのだろうか?いつかは終わるときがあるのだろうが、その時に何を感じるのだろう?今、考えたくないが、不安、寂寞、悲しさなどなど、大泣きする要素がずっしりと詰まっている予感がした。「泣くだろうなあぁ」たった1ヶ月ちょっとだが、この家とイギリス人の存在が私には大きくなっていたのだ。私の存在は向こうにとってはどの程度の大きさなんだろう。たくさんの人に囲まれて・・・もちろん超美人の女優やら、やり手のバリバリキャリアに囲まれて、友達も多いだろうし。いろいろな人に出会うチャンスは私の数千倍。きっと彼が言うところの『普通の話が一日の終わりにできる』 人はまたすぐに見つかるに違いない。すぐに忘れちゃうんだろうなあ。私のことなんか。こんな世界から見たら小さな島国の一般人だもの。まあ、大きさとか嵩とか、そんなものを測るのは止めるか・・・・人間、やっぱり自分を中心に考えるもの。その時に自分に必要なものを必要なだけGetするものだ。私だって、仕事の場に行ったらイギリス人のことは全く忘れているし、3通のメールもミスってしまったし。「泣いても、すぐいい思い出とかなんとか言って、忘れがちになるんだな。」と呟いて時計を見た。既に20時。だめだ。何か食べないと・・・・ お一人様サンドイッチディナーにビールを準備すると再度仕事に向かった。やっぱり・・・捗らなかった。メールは来なかった。


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