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スターチスを届けて  作者: 田古 みゆう


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17.4月1日 (2) p.6

「やめろ! そんなのまるで別れの挨拶みたいじゃないか」


 浩志はせつなの視線を避けるように、顔を背け声を荒げる。まるで何かに抗っているようだ。


 二人は別れの時を受け入れまいとしているのに、せつなだけは満足そうな笑みを湛え、胸の内の思いをすべて言葉にして届けようとしている。


「優ちゃん。突然現れたせつなを温かく受け止めてくれてありがとう」

「せつなさん……」

「成瀬くん。いつもせつなに寄り添ってくれてありがとう」

「やめろ! やめてくれ!」


 浩志の声がせつなの言葉を遮るように大きく中庭に響く。彼の瞳からは堪えきれなくなった雫がポトリと落ちた。


 そこへ、浩志の声を聞きつけた小石川たちが慌てたように駆け寄ってきた。


「どうした? 成瀬。大丈夫か?」


 一番に浩志に駆け寄った小石川は、浩志の顔を見てハッと息を飲んだ。小石川に追いついた蒼井とその夫正人も、すぐにその場の雰囲気を察して肩を強張らせる。


「もしかして、せつなはもう……?」


 蒼井の悲し気な声が小さく漏れる。相変わらず大人たちにはせつなの姿が見えていない。小石川は小声で浩志に問いかけた。


「成瀬。せつなは、もうここにはいないのか?」

「俊ちゃん。せつなは、ここにいるよ。みんな、間に合ってよかった」


 小石川に語り掛けるせつなの声を聞いて、浩志は手の甲でグッと涙を拭う。せつなの声は小石川には聞こえない。せつなの声を伝えなくては。そう思い、彼は泣き出しそうになるのを堪えて、口を開いた。


「こいちゃん。蒼井先生。今井さん。せつなはここにいるよ。河合のすぐ隣。みんなのことを待ってたみたいだ」


 浩志の言葉を聞いて、蒼井が嬉しそうに一歩前に出た。そして、優の隣の誰もいない空間に向かって微笑む。


「せつな。これ、大事にしてくれていたのね?」


 そう言って、蒼井が差し出した握りこぶしを開くとそこには、せつなの指輪があった。それを見たせつなは、嬉しそうに微笑む。


「お姉ちゃんにわがままを言って貰ったものだからね。とても大事にしてた」


 浩志を介して、姉妹はゆっくりと会話を進める。そんなじれったい状況でも交流ができていることがうれしいのか、姉妹の顔には笑顔が咲き乱れている。


「せつなの大切なものだから、これは返した方が良いよね」


 蒼井の言葉に、せつなは首を振る。


「お姉ちゃんが持っていて」

「でも」

「それはさ、せつなの想いがいっぱいいっぱい込められているの。だから、お姉ちゃんに持っててもらいたいんだ」

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