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スターチスを届けて  作者: 田古 みゆう


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16.4月1日 (1) p.7

 優はせつなの手をぎゅっと握った。本当はせつなの可愛さに抱きつきたいところだったが、目立たないように会場の隅にいるので、余り大袈裟な動きはできなかった。


 優は生徒の列へ視線を向ける。生徒の動きは粗方落ち着いたようだった。司会の方でもそろそろ良いだろうと判断したのか、進行を始めた。その声を聞いて、優はせつなに声をかける。


「行こう。せつなさん」

「えっ? でも、成瀬くんがまだだよ?」

「いいよ。並んでいるうちに戻って来るって」


 そう言って、優はお祝いを言うために並んでいる生徒の列へと駆け出した。せつなもそのあとを追う。


 慌ただしく列の最後尾についた優だったが、実はこの行動は浩志と打ち合わせ済みのことだった。せつなと蒼井の姉妹がたとえ言葉を交わせなくとも、せつなの想いを少しでも叶えようと、二人は花束をプレゼントすることを決めていた。それはせつなへのサプライズでもあるため、彼らは少女に気が付かれないように行動していたのである。


 花束を渡すのは、せつなが蒼井の前に立った時。予想外のことが起きてしまい、あとに並ぶ生徒に迷惑をかけてしまわないよう、列の最後尾に並ぶことも予め二人で決めていた。


 隠しておいた紙袋を手にした浩志は、袋の中の布をそっと捲った。小さな紫の花と、その間に散りばめられた白い小さな花が束ねられた花束がチラリと見える。それは決して豪華では無いけれど、可愛らしく纏められていた。それをてに彼は、扉の隙間から会場内の様子を伺う。


 まもなく優たちの番というギリギリのタイミングで、ようやく浩志が列に合流した。


「遅かったね。成瀬くん」

「ああ。ちょっとな」


 せつなに軽く答えながら、浩志は優の視線に小さく頷いた。合図を送り合っている間に、前の生徒たちが簡単にお祝いを述べ、直ぐにその場を離れていった。いよいよ彼らの番がきた。


 三人は順番に壇上へ上がる。それを自身の席で見ていた小石川教諭が、新郎の正人に用があるような素振りで何気なく近づいてきた。せつなは緊張した面持ちで蒼井の前に立つ。優と浩志はせつなを挟んで両隣に立った。


「蒼井先生、今井さん。ご結婚おめでとうございます」


 優の優等生然とした声に少し遅れて、浩志も小さな声で「おめでとうございます」と言い、ペコリと頭を下げた。せつなは感極まった様子で、鼻の頭を少し赤くしながら口を開く。


「お姉ちゃん、正人くん。おめでとう」


 だが、やはりその声は新郎新婦には届かない。

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