表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/104

16.4月1日 (1) p.6

 それで次の企画を理解した新郎新婦は、目配せをし合い、ハサミを持つ新婦蒼井の手に、新郎正人が、そっと手を添えた。


 それを確認した司会者は、声高にカウントダウンをとり、そのカウントに合わせて舞台上の2人は、ラッピングにハサミを入れた。


 ラッピングがハラリと捲れると、中からは藤の籠いっぱいに詰められたお菓子が現れた。蒼井はその籠を手に、正人と舞台の端ギリギリまで、進み出る。どうやら、どこかの地方で結婚祝いに行われている菓子撒きを行う様だ。


 籠に手をかけた2人は、司会の「そ〜れっ」という掛け声に合わせて、個包装された小さめのお菓子を舞台下の生徒たちに投げる。生徒たちは、そのお菓子に向かって年甲斐もなく手を伸ばし、大はしゃぎだ。


 浩志たちもその波に揉まれながら、その場の雰囲気を楽しむ。


「ケーキじゃなくても、結構大盤振る舞いだな」

「これ、小石川先生の寄付よ」

「へ〜、なかなかやるな。こいちゃん」

「俊ちゃん、お姉ちゃんたちのために、かなり協力してくれたのね」


 優の種明かしに、浩志とせつなは感心仕切りだった。


 次第に生徒たちは自ら菓子を呼び込み、壇上の2人はそれに応える形で近くへ遠くへと菓子を投げ、籠の中身がすっかりなくなると、それで、「初めての共同作業」企画は終わりとなった。


 それぞれの生徒が戦利品を手に、各自のテーブルへと引き返す中、優は、浩志にだけ聞こえる様に小さな声で囁いた。


「成瀬、次よ」


 その声に、無言で頷いた浩志は、自分たちのテーブルへ戻ると、手にした菓子を机に山積みにしてから、なるべく自然を装ってボソリと呟いた。


「俺、ちょっと、トイレ」


 そう言うと、2人とは視線を合わせずに、そそくさと出口へと向かって行った。


 せつなは、余程パーティーを楽しんでいるのか、浩志の言葉に「うん」と答えたものの、目は前方を向いている。そんなせつなの様子を見つつ、優は、ジェスチャーで浩志を追い立てた。


 せつなが関心を寄せる前方の方では、司会が次の余興を発表していた。次は、先日優が浩志に話していた『生徒から先生へ一言』のコーナーの様だ。


 前の方のテーブルから壇上へ上がる様にと、司会から指示が出されて、生徒が移動を始めた。


 生徒たちが移動をする間に出来た、少しの空白時間に、せつなは辺りをキョロキョロと見回し、浩志がいない事に、改めて気がついた。


「あれ? 成瀬くんは?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ