表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/104

14.3月21日  p.5

 そう言いながら、寂しそうに言葉尻を弱めるせつなに、優は、姉のように諭すようにやさしく語り掛ける。


「せつなさん、大丈夫よ。みんな、面倒事は嫌いだけど、イベント事は好きだもの。お祝いパーティーをみんなが楽しめるイベントにしましょ! 本当は、せつなさんだって、みんなにお姉さんを祝福して欲しいんでしょ?」


 優の言葉に、せつなは、ハッとしたように目を見開く。


「どうして……?」

「なんとなく、そうなのかなぁって思ったの。みんなの机にこの花を置いてたの、せつなさんなんだよね?」


 優は、机の上にある、出来上がったばかりの花を1つ手に取ると、それを軽く振りながら、せつなの顔を覗き込む。せつなは、優の問いに素直に肯いた。


「この花の話を聞いた時は、正直怖かったの」

「……やっぱり……そうなんだ」


 せつなは、小さく言葉を漏らすと、寂しそうに俯いた。


「……ごめんね。でも、そうなの。事情を知らなかったから……でも、こうやって、せつなさんと仲良くなって、改めて思い返してみたの。どうして、机の上にお花を残したんだろうって」

「そんな事、考えなくても分かるじゃないか」


 優が真剣な口調で話す中、浩志が呆れたように口を挟んだ。


「うっかり、置き忘れだろ?」


 あっけらかんと言い放つ浩志を、優とせつなは、無言で睨みつけた。2人の鋭い視線に、ものの見事に萎縮した浩志は、思わず眉をピクリと震わせ、口を閉じた。


「あのさ、このお花、自分の代わりに、蒼井ちゃんに渡して欲しいって思ってたんじゃない? 出来れば、沢山の人に渡して、お祝いして欲しいって思ってたんじゃない?」


 せつなは、口をぎゅっと結び、優の目だけを見据えている。しかし、暫くすると、固く結ばれていた口元はフルフルと震え出し、やがて、せつなの震える声が溢れでた。


「……うん。そう。そうなの。優ちゃんは、なんでも分かっちゃうんだね」

「分かるわけじゃないよ。私がせつなさんの立場だったらって考えたの。それで、誰でもいいから、私の代わりに、私の気持ちを伝えてほしいって、そう思っただけ」

「……でも、伝わらなくて、結局、怖がられて、ゴミ箱に捨てられちゃった」


 瞳に水の膜を張りながら、エヘッと笑うせつなの手を取り、優は頭を下げる。


「ごめんね。早く気付いてあげられなくて」

「ううん。もう平気。だって、成瀬くんと、それから優ちゃんが気づいてくれたから」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ