11.3月19日 (2) p.4
最後は小石川に向けて言うと、話の先を促すように優は小石川をじっと見つめた。彼女の言葉に浩志もはっとしたように小石川を見る。二人に見つめられた小石川は、はぁと深くため息を吐くと何かを決意したように一つ頷いてから、口を開いた。
「ここ、日付を見てみろ」
小石川は校内新聞の最上部を指でコンコンと叩き指し示す。二人は言われたとおりに日付を確認した。そして、二人そろって眉根を寄せる。
「これは、十五年前まで高等部に存在していた新聞部の記事だ。新聞部は既に廃部になってしまったが、運よく記事のスクラップが図書館に保管されていたので借りてきた」
そう説明する小石川に、優は不思議そうに確認する。
「どうして先生はこの記事に私たちが探しているせつなさんが載っていることを知っていたんですか? と言うよりも、どうして先生はこの記事の存在を知っていたんですか?」
優の息つかぬ質問に小石川は少し気まずそうな表情を見せながら、モノクロ写真の中の一人の少年を指さす。やんちゃな笑顔でピースサインをしながら、もう一人の男子生徒と肩を組む少年。
「……ここに写っているのは、俺だ」
「えっ? こいつ、こいちゃんなの? こいちゃん、ここの卒業生なのっ?」
浩志は小石川の言葉に驚きつつ、小石川と写真の中の少年を見比べる。
「おい、成瀬。先生に向かって、こいつはないだろ」
「ああ。ごめん。え? でも、本当にこいちゃんなの?」
浩志は頭に手をやり、しまったという顔をしながら軽く小石川に謝る。しかし、衝撃の方に気を取られ、謝罪もそこそこに無遠慮な視線を投げ続ける。そんな視線に居心地悪そうに眉を顰めながら、小石川はさらに驚く事を口にした。
「それから、こっちは蒼井先生だ。プライバシーの問題もあるから、本来なら言うべきではないんだろうけど」
優のように、髪を高い位置で結んでふんわりとした笑顔を浮かべている少女を小石川が指す。少女は、髪を二つに分けて縛っている背の低い少女としっかりと手を繋いでいる。
「えーっ! 蒼井ちゃんも卒業生なの!? って言うか、蒼井ちゃんかわいいー! マジ美少女!! ね、成瀬」
今度は、優が驚嘆と称賛の入り混じったような声を上げながら、感想を述べているのか同意を求めているのか分からない口調で浩志に言葉を投げる。彼はそんな優の言葉には答えず、驚きのままの表情で優と小石川を交互に見た。
「ちょっと、待て。この人が蒼井……先生ってことは、こいつは……」