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2.2月15日 p.1

 翌日。


 浩志は彼にしては珍しく、遅刻も居眠りもすることなく平穏に一日を終えた。


 彼の学校では、放課後は優や他の生徒のように部活に参加するのが本来であり、もちろん彼も部活に入っている。


 だが、放課後に補習を言い渡されることが多い彼は、部活に参加することの方が稀でありほぼ帰宅部となっていた。


 昨日までの放課後は部活に励む生徒たちの声で校内が賑わっていたが、今日からは学年末試験期間になり、生徒たちは授業を終えると数日後に控えるテストに備えるためか、早々と帰宅していった。


 それなのに浩志は、生徒指導室で何部もあるプリントの山を前に、一人黙々とホチキス止めをしている。


 他の生徒のようにすぐに帰宅する気になれなかった彼は、渡り廊下から中庭を見下ろしていた。 浩志は昨日見かけた少女のことが気になっていたのだ。


 中庭はいつもと変わりなく殺風景なまま。


(でも、あいつは何かを見ていたんだ)


 そんなことを考えながらぼんやりと中庭を見ていると、英語教師の小石川に声を掛けられた。


「おっ、成瀬。暇そうだな? まだ帰らんのか?」

「なんだ。こいちゃんかぁ」

「なんだとはなんだ。それに小石川先生と呼べ。全くお前は……」


 そう言いながらも、小石川は腹を立てた様子もなく浩志の隣に並んだ。


 サッカー部の顧問をしている小石川は、浩志が一年生の時のクラス担任でもあった。遅刻や居眠りといった問題の多い浩志を見離さず、一年間ちゃんと向き合ってくれた、強引で少々熱血気味な教師。


 だが、そんな小石川を浩志は慕っている。 彼がほぼ帰宅部になりながらも、未だにサッカー部に籍を置いているのは、この教師が顧問だからかもしれない。


「何してるんだ? こんな所で」

「別に。何も。帰っても勉強とかしないし」

「そうか。先生としては勉強してほしいんだがな……。まぁじゃあ、先生を手伝え」

「はぁ?」

「ちょうどよかった。今日中にやらなきゃいかんのだが、急に会議の予定が入ってな。困ってたんだ」

「……」

「いや~助かるよ成瀬。いい生徒だなぁお前は」

「……俺、まだ手伝うって言ってないけど」

「先生のクラスで使うプリントなんだけどな、ホッチキスで一部ずつ纏めてくれ」

「……」


 小石川の強引さはいつものことだった。


 彼を慕っている浩志は、口では否定的な事を言っていても、実はそれ程嫌な思いはしていない。しかし、素直に手伝うと言うのは何だか嫌だった。沈黙で答える浩志に小石川は冗談めかしたように言う。

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