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スターチスを届けて  作者: 田古 みゆう


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38/102

10.3月19日 (1) p.4

 浩志は優の言葉に相槌を打った。


「それなのに、みんながみんな、せつなさんのことを知らないって言うなんて、ちょっと変じゃない? 名前くらい知っていても良さそうなものなのに」

「う〜ん。……もしかして……」


 浩志の濁した物言いに、優は、視線で先を促した。


「……あいつ、いじめられてたりとか? ……だから、誰も知らないとか言うのか?」

「何? せつなさんって、そんな感じの子なの?」


 浩志の言葉に、優は怒っていたことも忘れて、彼に近づくと、声を潜めた。


「まぁ、でも、呪いの花って言われちゃうくらいだしねぇ……あ、違うか。呪いの花は、誰が作ってるのか、みんなは知らないのよね……」

「まぁな〜。でも、せつなは、物静かだけど、結構ガツンと言う感じだしなぁ。影が薄いとかじゃないと思うし。いじめの対象になるかなぁ……やっぱ違うか」


 1人でいじめ説を一蹴する浩志に、優は、解決しない疑問を投げかける。


「でも、じゃあ、なんで誰もせつなさんのこと知らないんだろう? やっぱりなんか変じゃない?」


 2人は顔を見合わせ、互いに眉を寄せる。しばらくの間、小さく唸り声を上げながら、尤もらしい答えを導き出そうとしていたが、結局何も出てこなかった。


 そして、浩志が先に根を上げた。


「あ〜! もう、無理。考えたって、わかるわけない。もう、今からせつなのところに行こうぜ」

「え? 今から?」


 せつなについての考えをアレコレと巡らせている間に、2人は、教室へと辿り着いていた。自分の机に鞄を掛けようとしていた優は、浩志の突然の提案に驚き、鞄を取り落とす。


 慌てて鞄を拾い上げ、机の上に置くと、優は、ツカツカと浩志の席へと歩み寄った。


「もうすぐ先生が来るのに、どうするのよ?」

「朝の連絡なんて聞かなくたって別に大したことねぇーよ」


 どうってことないという顔をする浩志に、優は、目に見えて呆れた。


「あんたは、いいかもしれないけど、呼び出されたせつなさんは、いい迷惑よ。あんたって、どうしてそうも短絡的なの!?」

「なっ……!! 元はと言えば、お前がせつなの事が気になるって言い出したんだろ。だから、俺は……」


 優と浩志が言い合いを始めても、周りのクラスメイトは、どこ吹く風。また、今日も痴話喧嘩を始めたよくらいの、生暖かい視線を向けられるだけだった。


 そうこうするうちに、朝の予鈴が2人の声をかき消すように鳴り響いた。

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