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8.3月16日 p.6

「ちょっと、どう言うこと? 成瀬があの花を作ってるって?」

「えっ? あ〜、いや。作ってるって言うか……、作るのを手伝っているって言うか……」


 優の素早い追及に、浩志は口を滑らせてしまった事に今更のように気が付き言葉を濁す。だが時すでに遅し。彼女が追及の手を緩めることはない。


「成瀬は私があの花のことを教えるまで何も知らなかったよね? あの話をしてからじゃない? よく遅くまで学校に残るようになったのって。 もしかして、何か関係があるの? ねぇ?」

「あ〜……」


 優の勢いに押された浩志は、なんと説明したものかとしばらく口篭っていた。しかし、もともと今日の寄り道にはせつなも誘うつもりをしていたのだ。そうすれば、きっと浩志とせつながどのような仲なのかと、優に問われることになっていただろう。話の流れで、折り紙の花の事についても話していたかもしれない。


 そう思い直し、浩志は優に向き直った。


「さっきも言ったけど、あの花は呪いの花とかそんなんじゃないんだ。俺が作ってるって言ったけど、本当は俺はほんの少し手伝ってるだけで、実際に作ってる奴は別にいる」

「なんで成瀬がそんなことしてるの?」

「少し前に、あの花を作ってる奴と知り合いになったんだよ。そいつは、姉ちゃんが結婚する時に花を贈りたいんだって」

「花?」

「うん。でも、花屋で買うのはダメらしい。それで、自分で作った花束を送ろうと、毎日折り紙の花を折ってるんだ」

「それって……」

「そう。お前に呪いの花って言われてるやつ」

「でも、じゃあ、なんでその子は人の机に折り紙の花なんて置いてクラスの人を脅かしているの?」

「さあ? ってかたぶん、あいつはそんなつもりないと思うけどなぁ。……ただの置き忘れ? もしくは、そいつに渡したかったけど直接渡せなくて机に置いたとか」


 優の疑問に浩志も首を傾げつつも、否定の言葉を口にする。まだ知り合ったばかりとはいえ、彼にはせつなという少女がいたずらや、まして、陰湿なイジメをするようには思えなかった。どちらかといえば、人と関わるのが下手で、いつも浩志とも距離を取っているように感じるのだ。


 だからこそ、今日はもう少し近しくなろうと寄り道計画にせつなも誘おうとしたのだが、当のせつなは教室に花を残したまま姿がなかった。


 相変わらず掴み所のない不思議な少女だと浩志が思考の海に浸かり黙ってしまうと、しばらく同じように考え事をしていた優が、またも疑問を吐き出した。

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