表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/104

8.3月16日 p.1

 せつなとの夕方の作業を始めて、今日で三日目。


 今日もこれから一年二組の教室へと向かうべく、浩志は校舎内が静まるのを自席で待っていた。頬杖を突きつつ、特に何をするでもなくボーッとしながら。


 なぜ、すぐに向かわないのか。理由は至極簡単なことだった。誰かに女子と二人でいるところを見られてしまうかもしれないと警戒してのことだ。もしも校内で噂にでもなってしまったらと考える。それは思春期真っ只中の浩志にとっては、恥ずかしすぎて自分が爆発してしまうのではないかと思うほどに耐えられないことだった。


 そうは言っても、自身の周りにはクラスメイトの優という女子がいるではないかと、浩志は自問自答する。


 優は、クラスメイトであり友人であると自身が認識しているので、二人で話していることは別段おかしなことではないだろう。周囲の友人達も、浩志と優の仲を変に囃し立てる者はいない。だがしかし、彼には優の他に特に親しくしている女子の友人はおらず、浩志の中で、優はやはり特別な存在であることは確かであった。もし仮に、二人の中を囃し立てる声を耳にしてしまったら、自分は一体どの様な反応をするのだろうか。


(たぶん俺は、あいつとこれまでの様には接しなくなるだろうな)


 自身の出した答えに何故かモヤモヤとした気持ちになった浩志は、その正体を探るべく、さらに深く自身と向き合う様に自答を繰り返す。


(まぁ、囃し立てられる相手があいつじゃなくたって、例えばせつなが相手だったとしても、騒がれるのが煩わしい。俺はたぶん、せつなとも距離を置くだろう。現に、こうして誰かに見られない様に様子見をしているわけだし。相手がせつなだろうが優だろうが、それはたぶん変わらない。だけど……)


 そこまで考えた時、浩志の脳裏に優の笑顔が浮かび、彼は無意識に心拍数を上げた。


 その時教室の扉を勢い良く開けて、彼の心拍数を早めた張本人が入ってきた。優は楽しげに浩志の席へと足を向けつつ、口を開く。


「成瀬〜。あんた、何でいつもいつも、用事もないのに遅くまで教室にいるのよ?」

「なんでも良いだろ。お前こそ、部活どうしたんだよ?」


 浩志は突然登場した優に、バクバクと鳴る自身の心音を聞かれまいと無意識に大きな声を出してプイッと窓の外へ視線を向けた。そんな浩志の様子を優は「いつものこと」とでも言うようにサラリと流しながら、浩志の前の席までやって来た。そして、優はスルリと椅子に腰を下ろす。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ