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スターチスを届けて  作者: 田古 みゆう


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20/102

7.3月14日 p.1

 翌日、浩志は一日中花壇を見ていたが、その場所でせつなの姿を捉えることはなかった。彼は授業が終了し校舎に人気がなくなるまで、いつものように窓際の席から花壇を見下ろしていたが、やがてガタリと席を立つと教室を後にした。そして、一年二組の教室へとやって来ると、教室の前扉からそっと室内を覗き見る。


 教室内には小さな影が一つポツンと座っていた。それは、浩志が今日一日探し求めていた少女の姿だった。机の上には、初めて言葉を交わしたあの日のように色とりどりの折り紙が広がっている。 机の端にはその折り紙で造られたと思われる何かと、小さく輝くものが相変わらず置いてあった。


 以前感じたように、その小さな輝きがまるで自分に向かって放たれているように感じられた浩志は、此度もその輝きに誘われるように教室の扉をガラリと開けて少女の席へと近づいていった。無心でおもちゃの指輪に手を伸ばし、不思議な面持ちで指輪を見つめる浩志の鼓膜を乾いた声が震わす。


「何?」

「えっ?」


 彼はその声でふと我に返ると、目をパチパチとさせ少女の姿を視界に捉えた。


「それ、また持って行かないでよ」


 せつなは、浩志のことなどどうでもいいという風に突き放すような言葉を発する。そして、少しの間休めていた手作業を再開した。


「ああ。ごめん。何故だか、コイツに呼ばれてるような気になっちまうんだよな……」


 浩志はそう言いながら、手の中の小さな指輪をそっと机に置いた。そして、せつなの前の席の椅子を引くと、せつなのほうへ体を向けてストンと腰を下ろす。


「お前さ、コレ何のために作ってるんだ?」

「……」


 浩志が手にしたのは、折り紙で作られた一輪の花だった。茎の部分は折り紙をストローのように細く棒状に丸められており、花弁の部分は立体的に織り込まれたパーツが五つ集まって花弁を成しているようだった。下手ではないが上手くもなく、子供の手遊びの域を出ていないように彼には見えた。


「なぁ。お前、コレどうするんだ?」

「……せつなは、お前って名前じゃないっ!」


 せつなの冷たい視線にハッとした浩志は頭に手をやり、やってしまったという顔になる。


「あ〜悪い悪い。俺、口が悪くてさ……つい……。せつなだよな。……アレ? 何せつなだっけ?」

「……蒼井」


 少女は浩志には視線を向けずにポツリと答える。


「蒼井せつなね! バッチリ覚えたっ! でも、もしまた俺がお前って言っても怒らないでくれ。悪気はないんだ。頼むよ」

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