エピローグ p.3
いつものように、くだらない会話をしていると、料理が運ばれてきた。しばらくの間、互いに口を噤み、配膳されるのを待つ。店員が、注文品の確認をして席を離れると、優は、早速口を開いた。
「あれ? チャイティーじゃないの? 朝早くから活動していたなら、てっきりチャイを頼んでると思ったけど?」
「ああ。ホットにした。チャイを頼もうかとも思ったんだけど、やっぱり、チャイを飲むなら、あそこの公園が良いかなと思って」
この店が、優のお気に入りの場所であるように、浩志にもお気に入りの場所がある。ここから然程離れていないその場所のことは、もちろん優も知っている。その公園も、のんびりとするには、最適の場所だった。
「じゃあ、あとで行く?」
優は、ランチのサラダを手に取りながら聞く。
「う~ん。そうだな。時間があればな。今日は、何の打ち合わせだっけ?」
「式場の担当者と、参列者の座席確認。それから引出物の確認も。でも、誰かさんが予定よりも早起きだったから、時間は余裕よ」
優の冗談めかした物言いに、苦笑しつつ浩志は頷いた。
「そうか。じゃあ、ちょっと寄っていこうかな」
それからしばらくは、2人してランチに舌鼓を打ち、あっという間に平らげると、ゆったりと食後のコーヒーを楽しむ。
「ねぇ。そういえば、どうして外にいたの? 目が覚めたって言ってたけど、何か悪い夢でも見て、寝付けなかったの?」
優の何気ない言葉に、浩志はハッとしたように身を乗り出した。
「そうだ! 聞いてくれよ!」
それから、浩志は、夢で見た少女のことと、先ほど思い出した昔の思い出を優に語って聞かせた。その間、優はポカンと口を開けて話を聞いていた。
「どうして、忘れてたんだろう。せつなのこと……」
語り終えた浩志は、机の上で手を握りしめ、悔しそうな声を漏らす。そんな浩志の手を優は優しく包み込む。
「実は、私もせつなさんのこと忘れていたの。でもね……」
浩志の手から自身の手を離し、優は、鞄をごそごそと漁る。そして、目的の物を取り出すと、そっと机の上に置いた。
「これ、見て」
「これ……!」
それは、押し花を綺麗にラミネート加工した2枚の栞だった。
「引っ越しの準備もあるから、私、昨日、部屋の片づけをしていたの。そしたら、これが出てきて……。私は、これを見てせつなさんのことを思い出したの」
「これって……あの時の……」