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ボス戦会議とステータスの最終確認

 ギルドを出た僕達は、道具屋でアイテムの補給と次に鍛冶屋で武器のメンテナンスを済ませると、大広場に設置してあるベンチで待機することにした。


「ボスが出現して、大人数で戦うってなるとこの場所しかないよね」


 クエストの内容には、しっかりボスの出現位置が此処である事が記載されている。


 だから熟練のプレイヤー達は、準備を終えると続々と大広場に戻ってくる。人数は見たところ、全員合わせて百人以上で、物陰には例のメディア達がスタンバイしていた。


 中央ではトップクランのリーダー達と、このイベントに参加するパーティーの代表者が集まり、ボスに対する布陣について話し合いをしている。


 見たところ、あの中で自分と同等以上の強さを持っているのは二人くらいだ。


 赤髪の軽装備の少年と、白いマントを羽織った一本角の鎧騎士。


 あの二人だけ纏っている空気が違う。上手く隠しているけど、その内側にはエリアボスのような強い力を感じ取ることができる。


 そんな中で、じゃんけんで僕達の代表者に祭り上げられたリュウは、数十分もの話し合いの後に戻って来ると、そこで決まった攻略の流れについて語ってくれた。


「やっぱり主導権を握るのはレベル50以上が多い〈シュヴーブラン・ソシエテ〉と〈ソウル・ナイツ〉に決まったぞ」


「ふむふむ、妥当な流れだね。それで僕達はどのポジションなのかな?」


「六人のフルパですらないからな。後で知らせに来るって話だが、俺の予想だと〈デゼスプワール〉が召喚する配下の処理を頼まれる気がするな」


「えー、せっかく強くなったのに、ボスに攻撃できないなんてつまらないじゃない!」


「まぁまぁ、あくまで予想だからね。それに周囲に発生するモンスターの相手をするのも、ボス戦で本隊が安全に戦うための大事な役割だから」


 攻略が何事も無く済めば良いし、不測の事態が起きたら配下を処理する自分達がアタッカーとして、前線に参加しなければいけないパターンも十分に考えられる。


 それに配下を処理する役割も、目立たないだけでけして悪い事ではない。


「カラスの攻略本には載ってないけど、配下の〈ヴァルト・コボルドナイト〉は倒す度にゼーレと経験値を獲得できるから、稼ぐなら面倒な本体を相手にするよりも楽な相手だよ」


「……なるほどね。そういう利点があるなら少しは良いかも」


 僕の説明を聞いたアザリスは、複雑な顔をしながらも矛を収めてくれた。


 その様子をリュウは、苦笑いで見守っていた。


 取り合えず話が纏まると、ボスとの戦いが始まる前に、最後に確認として自分のステータスを表示した。


 すると隣で暇を持て余してるのか、アザリスが腕に抱きつき覗いてきた。


「シアンのステータス、一緒に見ても良い?」


「良いよ。でも見るなら、画面のサイズ変更するから密着する必要ないと思うけど……」


 思った事を指摘するけど、彼女は無視して身体を預けてきた。


 腕に感じる感触とか、女の子独特の良い匂いとか、色々な情報量が一気に押し寄せてくる。


 一週間も一緒に過ごしてるのに、未だに慣れない僕は顔が熱くなるのを感じた。


(あー、もう周囲の視線が凄いことになってるよ……)


 はたから見ると、白髪少女と金髪少女の仲睦まじい光景だ。周囲のプレイヤー達(特にシュヴーブラン・ソシエテのメンバー達)からの温かい眼差しが自分達に集中する。


 自分は鋼の意思で、それらを無視するとステータスを見た。


【PN】シアン【LV】53【職業】魔法剣士

【HP】1060【MP】100

【筋力】150【物防】20(+80)【魔防】20(+80)

【持久】100【敏捷】100(+50)【技術】70

【幸運】10【理力】150


【装備】

右手〈レーバテイン+25〉

左手〈装備無し〉

防具〈イライザ印の鎧ドレス改〉〈イライザ印のポンチョコート〉

〈イライザ印のブーツ〉


 うーむ、我ながら実にバランス重視だ。


 防御はイライザのお陰で、ポイントを振らなくても及第点以上。


 幸運に関しては、今のところクリティカルを狙うプレイスタイル──通称クリティカラーになる予定は無いので完全にアウトオブ眼中だ。


「改めて見ると、イラさんの防具の凄さが分かるわね。同じレアリティのハンドメイド装備でも、物防と魔防の二つが60ずつ増えるのなら見たことあるけど。どうしてこんなにも能力値に差が出るのかしら?」


「本人のレベルは、他の職人よりも少し高いくらいだから。多分だけど、作成する際に使っている道具が高ランクなのか、それか作業内容に秘密があるのかも」


 これに関しては、企業機密だからと以前に断られたので自分も予想する事しかできない。


「まぁ、商売道具の秘密を話せないのは当然よね」


「そうだね。特に僕は、イライザさんのお陰で防具に回す予定だった資金を全て魔剣の強化に使えたんだから、あの人には本当に感謝しかないよ」


「あー、その大食らいの魔剣のこと? 一回目の強化の時に、NPCの鍛冶職人に数万ゼーレも要求されるのを横で見た時は目玉が飛び出そうになったわ」


「なんせ、未だ誰も所持してないAランクの魔剣だからね」


 装備等はランクが高いと、それに応じて強化に掛かる費用が高くなる。


 ここまで魔剣を強化するのに、自分が使用したゼーレは総額で数十万以上だ。そのおかげで、現在の所持金は空っぽになっている。このボス戦で敗北した場合、資金稼ぎをしなければポーションを一本購入する事すら出来ない有様だ。


「もしも負けたら、次のチャレンジまでレベリングと装備の強化をしないといけないね」


「おお、それはとても前向きな思考ですね。流石はベータプレイヤーの中でも、屈指の実力者と注目されている〈白の魔法剣士〉です」


「……うん?」


 後ろから、突然何者かが話に割り込んできた。


 目の前の画面を消して振り返ってみると、そこには赤髪の少年が立っていた。


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