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2-10 勝負のルール

「この丸い中でやるのかい?」

「ソウダ、ソレガワレラノリュウギ」


「これはドラゴナイトの決まり?」


「ソレハナイ。

 ダンジョンニオイテハ、デアエバ、ソクタタカウハ、ヒツジョウ」


「じゃあ、何の流儀なんだ」


「コントンデ、キメラレタルール。

 メイシュノルール。

 マイカイ、チガウ。


 ココデハ、コンカイ、ソノナカデタタカイ、ソトニデレバ、オマエノマケ。

 ジメンニ、ウデヤカラダガ、フレテモマケダ」


「そうなったら?」


「オマエガカテバ、ジドウテキニ、ショウヒンノヤリトトモニソトヘ。

 ベツニ、ワレヲコロスヒツヨウモナイ。


 オマエモ、ワレノツヨサニカンプクシタラ、ミズカラ、ワノソトヘイクガイイ。

 ソノバアイハ、ショウヒンハナク、オマエダケガソトヘイク」


「ひゅう、親切にギブアップルール付きなのかよ。

 そいつはサービスがいいな」


「デハ、ハジメヨウ。

 カカッテクルガイイ、マネカレシモノヨ」


 奴はそう言って自分は腕組みをしている。

 こいつもまた来ちゃっているなあ。


 招かれし者って、あのなあ。

 俺はお前に拉致されてきたのだが?


 こいつはカタコトっぽい感じだが知的な感じで喋っているし、自分で? 妙なルールやステージを作ってしまっている。


 何かこう普通じゃない。

 話に聞く本物のドラゴナイトというか、ラビワンにいる奴なら問答無用で襲ってくるはずだ。


 俺は本物のドラゴンナイトを知らないので比べようもないのだが。

 仕方がないので、俺はおもむろに輪の中へ入り、奴もそれに倣った。


 そして、俺は自ら言ってやった。


「はじめ!」


 俺も様子見でスキルは使用せずに切り札として取っておいた。


 こいつは必ずしも俺を殺戮しようと思っているわけではない、むしろ親切にもギブアップを薦めちゃってくれているほどだ。


「そりゃあああ」


 俺は気合と共に踏み込んで軽く槍を一閃したが、奴は軽くパンっと手の甲で払った。

 それだけで槍はかなり大きく真横に近いほど激しく弾かれてしまった。


 ラビワンでは下層魔物に相当するだけあって、結構力があるなあ。

 さすが、上級冒険者の登竜門となる魔物だけの事はある。


 こいつは身長ニメートルほどあり、俺よりもかなり大柄だ。

 その分厚い革に守られた体は半端な武器では貫けない。


 胸は異様に厚く、全身の筋肉が秘める力も凄そうだ。


 俺は現在レバレッジ11.0であり、攻撃力二倍の、基本能力及び全能力十倍の恩恵にあずかっている。


 こいつを柔らかいとか称する先輩には遥かに及ばないのだろうが、並みの冒険者とは比べ物にはなるまい。


 先輩やマロウスのような、とんでも戦士が身近にいるため、どうしてもあの辺を基準にしてしまうのだが、そう卑下したレベルでもないのだ。


 問題は目の前の敵との相対的な関係であり、ギブアップルール付きで、しかも相手を倒さなくても勝負に勝てばいいという好条件なのだが、相手の強さが桁違いだ。


 俺は単独戦闘で強者と相対するとかなり弱い。

 これがスキルに頼りっきりだという先輩による指摘の一側面でもあるのだろう。


 だが素直に引き下がる気にはならない。

 勝ちたい。


 ここで、こいつに負けて手ぶらで戻るようなら絶対に強くなんてなれない。


 そもそも帰った時に、他のメンバーから軽く罵声でも浴びて頭を抱えて座り込み、思いっきりへこむのが関の山だ。


 おかしい。


 聖女のパーティのはずなのに、段々とブライアンのパーティっぽい感じに躾が厳しくなってきたような気がする。


 まあそう言う事には慣れているけどな。


 それにしても、こいつ。

 さっきから一歩も動いていないな。


 あくまで「格下のお前から来い」というスタンスなのだろうか。


 俺は槍をその場で地面に突き立てると、突進した。

 そして、渾身の蹴りを奴の向う脛に目掛けて放った。


「くそ、ビクともしねえな。

 お前って、そこ蹴られて痛くないの」


「イタイ。

 ダガ、ソコハガマンノコ。

 ソハ、ビトクナリ」


「痛かったのか……」


 痛かったら、少しはそれっぽい顔をしろよな。

 その蜥蜴のような凶悪な顔を見ていてもよくわからないんだけど。


 だが少しは俺の力も通用するようだったので安心する。


 奴はその輪の最奥にいた。

 つまり、『強い奴』が押せば外に出てしまう位置だ。


「我は最強也、逃げも隠れもしない。

 貴様が強いのなら遠慮はいらん、かかってこい」

 というわけか。


 みんなの話によると、本来は凄い魔法を撃ってくる魔物のはずなのに、このコントンとやらにいるこいつは、そのような素振りも見せない。


「お前って魔法を使えるのか」


「ツカエル。

 ダガ、コントンデハツカワナイ。

 ワレハツヨイカラ」


 なんかすげえナルシストな奴。

 しかもまったく攻撃してこないし。


 何のためにいやがるんだ、こいつは。

 しかし、少々の事ではこいつを輪の外に放り出すのは無理そうだった。


「これって時間制限あり?」


「ナイ。

 スキナダケセメルガヨイ。

 ショウジンセヨ。


 ソノバデ、タンレンシテツヨクナルモヨシ。

 タダシ、ワノナカデナ。


 ソシテ、アシノウライガイノ、カラダノブイヲ、ジメンニツケテハナラナイ」


 こ、こいつ。

 蜥蜴みたいな顔をしているが、あの熊先生のお仲間じゃないのか。


 よく見てみると凄く体を鍛えてある気がする。


 でも脛は痛いみたいだから、もしかしたらマロウスも⁉


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