2-9 扉の試練
いいだろう。
どっちみち、こいつないし、こいつらを倒さない事には俺も出られそうにない。
外からは開けられないらしいから。
そして、その空間にある物は縄を地面に丸くおいて、半ば埋め込んだような物だった。
周りを見渡したが、そこは石造りの場所ではなく地面は土のようだった。
ここの遺跡ゾーンは確か地面が全部石になっているはずなのだ。
何かこう輪郭がはっきりとしない、ぼんやりとした靄に包まれた空間のような物だった。
これが別のダンジョンというか、内部の世界?
あの明瞭に知覚できない空間に、こいつらの大群が潜んでいたらヤバイな。
強力魔物のお替り自由は御免被りたい。
俺はバトルジャンキーを患っている先輩じゃないのだから。
「ここはどこだ。
お前はどこから来た。
確かドラゴナイトはラビワンの下層にいる魔物だよな。
このダンジョンにもいるのか」
「ココハコントン。
ワキイズルコントン。
メイシュガ、ワレヲココヘヨンダ」
「盟主? それは邪神の事か?」
「ジャシン、チガウ。
メイシュハ、メイシュダ」
何の事を言っているのだろうな。
「お前はドラゴナイトか」
「ソウダ。
ワレノカラダニ、マホウハキカヌゾ、ニンゲン」
俺は生活魔法の浄化で体を清め、コップを出して水を作って飲んだ。
つまり、槍の魔力は大丈夫って事だ。
魔素が無くて槍の修復機能を干されたら、さすがに敵わない。
「うん、ちゃんと水は作れるな。
万が一ここに閉じ込められても、しばらくは頑張れそうだ。
お前を倒したら、ここから出られるのか?」
「デラレル。
ホウビモソコニアル」
奴が指差した場所には、もやっとした空間の中でそこだけが光に当てられたようにくっきりとしており、壁に陳列するかのように立派な槍が、作り付けの飾り棚の金具にかけて置かれていた。
「あれ、お前が使うんじゃないの?」
「ドラゴナイト、ブキナドツカワナイ。
ソレハ、ジャクシャノアカシ」
なんか先輩みたいな事を言っている奴がいる。
まあ俺としては、その方がありがたいんだけど。
「武器は盟主がくれたのかい」
「チガウ、ハズ。
ワレガキタトキ、モトカラココニアッタ。
デモワカラナイ、メイシュガオイタノカモ。
ワレハナゼココニイルノカ、ソレスラモワカラナイ」
「何故、最近になって扉が湧いた」
「シラヌ、ワレハイツカラココニイルノカ。
ナゼコノヨウナ、バガアルノカ。
ムシロ、ワレガシリタイ」
「あ、そう。
俺は武器を使ってもいいんだよな」
「モチロンダ」
「あの賞品の武器は使ってもいいのかい」
「オマエハ、バカダ。
ショウヒントイウモノハ、カッテカラシカ、モラエナイモノダ。
イマノオマエニハ、アレニ、フレルコトサエデキヌ」
はいリクルさん、魔物様からも馬鹿認定を頂きました。
くそう、ちょっと聞いてみただけじゃないの。
「お前に仲間はいるか」
「イナイ。
ワレハ、ココニハヒトリダ」
「仲間を呼ぶ力は?」
「ナイ、コノコントンハ、ワレガスベテ。
サアタタカエ、モノノフヨ。
ワレガ、ツヨキモノト、ミコンダモノヨ」
「ちっ、しゃあねえなあ」
一通りの取材を終えた俺は背嚢を下ろし、ミスリルの剣を二本いつでも抜ける体勢で背中に背負い直すと、愛用の槍を手にした。




