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1-66 信仰の力

 結局、姐御が十分に俺をお披露目し、自分の姿を民衆というか群衆に見せつけ、すべての騒ぎが静まった時には、スキルのバージョンが8・5になっていた。


 相変わらずこの人には、俺のスキルのバージョンが丸見えだ。


「ほお、これはまた上がったものよのう」


 上がったなんてもんじゃないのだが。

 こんな体験は初めてだよ。


 もう盗賊だの魔物だのと戦ってバージョンを上げるのが馬鹿馬鹿しくなっちゃうくらいだ。


 ここ王都で、しばらくバージョンアップに専念していきたいくらいの気持ちでいっぱいだ。


 だが姐御なんか飄々とした感じで、下ろしていた髪をバサっと後ろに回して、一体何百年前の流行なのかと思うような、『少し』古びた飾り紐で髪を止めていた。


 その若干色褪せた飾り紐に、一体どれほどの歴史の目撃証言と信仰の力が集まっているものか、少し考えただけで気が遠くなりそうだった。


「これ、もう既にかなり数字が上がりにくくなっているはずなんですがねえ。

 凄いな、信仰の力。

 バージョン上昇二倍の補正はついているんですけど」


「まあよいではないか。

 民衆も北の不穏な動きに神経を尖らせている。

 もしや邪神が復活するのではないかと恐れておるのだ。


 大体、今まで聞いた話だと、北のダンジョンに何が湧いているかわかったものではないのだからな。

 無いとは思うが、邪神でも出た時はお前に任せたぞ」


「ええっ、ご冗談を。

 姐御ったら、やる気満々じゃないですか。

 俺のバカンスはどこにいったんですか。

 くそ、協会長にはめられた~」


「はん、本当に邪神などが湧いて出たならば、冗談ごとでは済まぬのだからな。

 大体、お前がスキルのお蔭で一番パワフルに戦えるのではないか」


「まあ俺の場合は人のスキルを借りないと駄目っすけどね。

 やっぱり先輩のスキルがいいかな。

 あれは強力な物だから」


「まあ、あれもラビワンの踏破者ではあるからな」


「でもなんというか、邪神のような通常じゃない物が相手なら姐御の魔法の方がいいのかな。

 魔法やスキルは効果時間内なら別の物にもスイッチできるからいいですけどね」


「じゃあ、せめて晩飯はたくさん食っておけ。

 まだまだ育ちざかりだからな。

 元の身体が強力ならば、その倍数の結果にも影響するのだろう?」


「まあレバレッジは元の原資が重要ですからね。

 では遠慮なくいかせていただきます」


 いや、育ちざかりの若い冒険者なんて恐ろしい者を養うなんてマジで腰が引けるな。

 俺はやっぱり冒険者パーティのマネージャーなんてものはやりたくないね。


 そして夕飯はゴージャスな『王都飯』だった。


 なんといっても『現聖女様』の常宿なのだ。

 料理人も聖女様に捧げる夕餉を丹精込めてくれているのだろう。


 そして、そのお相伴に預かる俺は一文の金も払っていない。

 そう、俺はただの文字通りの預かり者なので、新人特権で無料ご招待なのだった。


 だが、道中は十分それに見合うだけは働いたような気もする。

 一応、体もかなり張ったしな。


 こう見えて、あのカイエとの死闘も割と気にしていないのだ。


 えらくやられちまったけれど、あの先輩にやられたり、ダンジョン管理魔物と殺し合いをしたりした後なんだからな。


 少なくともカイエの野郎は、見ただけでバージョンが上がるような人外の化け物ではない。

 だが聖女様パーティを追い詰めたほどの強者であったのだ。


 いやー、あの時は俺も死んだと思ったけどな。

 見事にバッサリやられたもん。


 防御力と回復力にレバレッジがかかっていなかったらヤバかっただろう。


 相手は怪物なんかじゃない、ただの人間だなんて甘く見ていたところもあるのだ。

 あのクラスの上級冒険者は十分に怪物だったわ。


 俺も先輩に襲われた貴重な教訓が生きていないな。


 もう、俺はダンジョンの管理魔物を基準に相手の強さを測る習慣が出来ているのかもしれない。


 でも邪神なんて存在から見たら、あの不壊とさえも思えるように堅固なダンジョンの壁や床さえもぶち壊す、とんでもないダンジョン管理魔物だって可愛いチビ蜥蜴に見えちまう事だろう。


 ああ、やだやだ。


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