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1-17 大立ち回り

 俺は意気揚々と、オークの待つ五階層まで気合を入れて走っていったので、あっという間についてしまった。


 以前は歩けば二十五分かかったところが、今はスキルで底上げされているので十分くらいでオークの狩場まで辿り着ける。


 まあブライアン達と一緒なら二十五分もかけてのんびり歩いていたら、確実にぶちのめされるけどな。


「五階までは駆け足十分で行け!」


 今では懐かしいとしか言いようもない、ブライアンお得意のフレーズだった。


 今はレバレッジされているので、歩いても十分で辿り着けるけど、当時は重い荷物を担いでの死ぬ気の行軍だった。


 そこからすぐに露払いとして、大荷物を背負ったままでの『オークを蹴散らす肉壁』の役だからな。


 嫌でも、槍の扱いなども上達しようというものさ。


 さっそくオークが十体まとめて、団体さんでお出迎えだった。

 昨日の今日でこの有様か。


 これだから、この五階層はよ。

 ちょっと前なら、一人だったら裸足で逃げだす数だわ。


 だが、あのデスパレードを体験し、更なるバージョンアップも果たした俺にとっては、何という事もない雑魚の集団に過ぎない。


「もう二度と、お前らに応援なんか呼ばせるもんかよ」


 まあ、前回も俺が応援を呼ばせた訳じゃあないのだがね。


 むしろ、俺がスキルを使って自分のための応援を呼んだのだから。


 俺は勢いよく奴らの群れのど真ん中へ突っ込んでいった。


 思いっきり棍棒を振り回し、最初の奴の側頭に命中した反動を利用し、そして反転させて軽く持ち替えながら逆回しにして、もう一体の横頭へぶち込んだ。


 今の強化された俺のパワーなら、急所に一発叩き込めれば、奴らを一撃で絶命させられる。


 そして軽く二~三歩助走をつけてから飛び上がって、遥か上から三体目の脳天を一撃してやった。


 反動でそのまま勢いを付けて、更にそいつを蹴って跳ね上がり、宙返りをするような感じにして、着地しざまにもう一撃を別のオークの脳天に食らわす。


 今度は着地してから立ち上がると、仰け反って背後からの攻撃を躱し、起き上がりざまにそいつの脳天を横に払う。


 奴らの動きを、目で見ずとも空気の流れで、気配で感じられる。


 感覚がブーストされている。

 そして何よりも軽い。


 動きが軽い。


 鍛えに鍛え抜かれた肉体の、同じ体重に三倍ものパワー。


「こうまで違うものなのか、体にブーストがかかるというのはよ」


 まだクールタイムが必要なマグナム・ルーレットによるブーストは温存する。

 また何かあってもいけない。


 そして、この油断のない慎重姿勢が冒険者の命を救うのだ。


 俺は上級冒険者チームで、それを学んできた。


 若い冒険者は欲に駆られ、また自分の力を過信し、そして常に全力でダンジョンに立ち向かっていく。


 それは若さの特権とも言えるものなのだが、この冒険者稼業に限っては、それはただの命取りにしかならない。


 特に俺のようなソロ冒険者にとっては。ダンジョンで常時全力など出していたら、幾つ命があっても足りやしない。


 残りは五匹。

 だが奴らは、何故か突如として連携を取り出した。


 やはり、このあたりはコボルトなんかとは違う。

 これを最初から十頭でやられたら、レントのチームあたりでは全滅しかねない。


「へえ、数が少ない集団だとこういうのは見た事はないが、こうなるとそういう戦術も使ってくるのか。


 昨日みたいなエンドレスモードでヘイトが集中し過ぎて興奮しているような状態だと使えない物なのかな。

 ブライアンは、こうさせないように戦術を組んでいたんだ」


 だが、そのチームワークも俺に対してはまったく無意味だ。


 囲んでくるオークを足場に、俺は間抜けに捕まったりせずに、奴ら自身を梯子にして駆けあがり、そしてオーク登りの助走の勢いに乗って飛んだ。


 素早い俺の動きをノロマなオークには捉え切れない。

 通常の冒険者の三倍の脚力、それは人を容易く鳥に代えた。


 俺はただでさえ上級冒険者パーティで鍛え上げられ、普通の人よりは遥かに運動能力の高い、新人の中でも高レーティングの冒険者なのだ。


 そして俺は、あの新人に対する躾が厳しいので有名なブライアンのパーティにいた人間なのだから。


 俺はあっという間に、そいつらを天空から威力倍増の大棍棒様で叩き伏せて、残りの僅かな人数になった奴らを一匹残らず地獄へと送ってやった。


 俺は死地を越えて、また一つ強くなった。


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