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1-11 命の分水嶺

 あと、ここに強力な槍が一本装備に加われば、進出許容度をもう一階層下へ落とせるため、格段に稼げるようになるはずなのだ。


 俺は、そのために今資金を稼ぎたいのだが、槍は比較的高価な装備だし無理はしない。


 そして下の階層へ足を延ばすという事は、その代償として魔物が強力になるため、ソロによる危険度も当然増す。


 特に魔石などの剥ぎ取り時が一人だと危険なのだ。

 魔物によっては隠密行動をするタイプもいるし、少し注意を怠れば危険な目に遭いかねない。


 また出現する魔物の数が問題となる。


 オークなんかは少々の数でも俺はそう困らないが(限度はある)、コボルトとて、もし数百体が俺にヘイトを集中させて一斉に襲い掛かってくるのであれば、引き倒されてしまえばそれでおしまいだ。


 それは、あのスライムとて同様なのだ。


 さすがに、そういう事態はまず考えられないが、当面一人で活動するというのなら、そのあたりの収入と危険のバランスを見極めないといけない。


 その最初の一つの分水嶺となるのが五階から六階なのであり、俺がその辺をステップアップするにあたっては良い槍を入手する事が最低の条件となるのだ。


 さもないと間合いの取れない剣で戦う事になり、危険を冒して戦いながらも、へたをすると逆に整備費で赤字になりかねない。


 また更に階層を下げていく場合は、収入に合わせて剥ぎ取りや荷物持ちをしてくれる人を雇う事も視野に入れないといけないかもしれない。


 まあ、そういうビジネスライクな関係ならば、外れスキルもへったくれもない。


 むろん、その場合の支払いは契約を取り持ってくれる協会で前金を払わねばならない。


 そうなると獲物がいないオケラの時でも固定費として費用が発生するし、また俺は冒険者経験のないペーペーのサポーターは雇いたくない。


 足手纏いになるような奴は、俺の寿命を著しく縮める事になるだろう。

 それだけの意味があると言ったのは、そういう事なのだ。


 新人冒険者の場合は、ここ五階層でさえ容易く全滅しかねないのだから。


 ここでオークを狩るのは、比較的安全で普通に生きていくのなら十分なのだが、もっと上の世界を知っている俺にとっては退屈以外の何物でもない世界だった。


 また、オークは油断をすると十体くらいまとめて出てくる事があるのだ。


 今の俺ならば、やりようによってはやれる数かもしれないが、さすがに武器が心許ない今は、まとめてそれだけの相手をしたくない。


 振り切ってしまえばいいのだが、中にはしつこい奴もいて逃げきれない場合もあるため、たとえオークといえども要注意なのだ。


 やはり早めに槍が欲しいのだ。

 シグナのように【フレイムマスター】なんてとんでもない代物を持っている訳ではないのだから。


 あれなら、この階層にいるすべてのオークをまとめて焼き尽くせるはずだ。


 パーティにあぶれた新人冒険者だけでチームを組む事もあるが、そいつらの活動限界階層がこの五階になる。


 新人冒険者は、よほどスキルに恵まれているのでもなければ、この五階層ではいずれ全滅か、あるいはパーティ解散の憂き目に遭うのだ。


 所詮はスカウトも来なかったような、余り物の集団に過ぎないからな。

 行きはよくても、まだ帰りもそこを通らなくてはならないのだ。


 そして、首尾よくそこを通り抜けられたとしても、次の六階層の魔物がまた新人には厳しい相手だった。


 オーク三体の群れを見かけたので、素早く屠って魔石を抉り出す。

 今はこの程度、どうってことはない。


 スキルを貰う前だって、もうこの程度はいつでもやれるようになっていた。

 ブライアンの新人教育はどこか(たが)が外れていた。


 今はそれに感謝しているのだが。


 他のチームの新人は見習いが終わってもオーク一体とのタイマンに青息吐息なのだ。


 バージョン2・2に上がったので、先程よりは多少力が上がったような気がする。


 この数字は本当に元の俺の力の2.2倍を指しているようなので、1.2倍よりも2・2倍の時の方が、バージョンが小刻みに上がった時に更に力の上昇を感じにくくなっている。


 だが、今はこのスキルにも手慣れてきたので、力などが上がった感触だけは、そこはかとなく理解できる。


「さて、もう一つバージョンを上げたら、一回地上に上がって換金してから休憩するか。

 次のバージョンアップは、あとオーク二体ってところかな」



 今は五階層の中盤といったあたりか。

 すでに銀貨二十枚分は稼いだから、今日の食い扶持には十分なので、俺は気持ちに余裕があった。


 そう、ここまでは。


 そろそろ四階層へ向かって戻ろうかと思った時の事だった。


「きゃああああー」

「ぐああああっ」


 なんだか、いきなり付近で烈々たる悲鳴が上がっていた。


「何だ⁉ 突然に」


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