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1-10 遠征

 本日は片道二十五分かけて五階層まで遠征した。


 まあ、上級者パーティと一緒であるならば下層の上っ面まで行ける俺にとっては、本来なら特に遠征などと言うほどの物ではない階層だ。


 だがソロで低装備の上、武器の整備代さえ儘ならないような今の自分にとっては、十分に遠征と言ってしまってもいいだろう。


 実はそれだけの意味がある階層なのだから。

 四階層は特殊な階層なので、そこでの討伐はパスだ。


 少なくとも今の俺にとってはまったく割に合わない。


 四階層を、新人限定で協会にて無料でもらえる特殊アイテムを用いて楽々無事に通過し、五階層へと潜っていった。


 このあたりの地形は洞窟タイプではなく平原タイプになっている。

 ここの足元は草地で、ところどころに灌木が生えているので要注意だ。


 変な動きをすると、灌木に邪魔されて行動が阻害されかねん。

 少し強い相手だと、初心者には余裕がないため相手の連携に屈する事もあるのだ。


 ブライアン達と行けば、こんなものはお散歩コースにしかならないのだが、現在はソロの上に低装備なので慎重になるのは仕方がない。


「さて、目標の魔物はどこにいるのかなと。

 ああ、いたいた」


 俺が捜していたのはオーク。

 この五階層の出現魔物だ。


 こいつは、やや大型の人間サイズの魔物だ。


 屈強な成人男性のような体を持っており、コボルトに比べて格段に手強くなるが、ベテランならば一笑に付して三体相手でもあっという間に切り伏せる。


 新人でも二人で連係すれば二体を容易に相手にできる。


 俺はこの程度ならソロでも楽勝で一刀のもとに倒せる。


 今はこいつ相手にどれくらいやれるかで、現在スキルの恩恵を受けた自分のパワーとスピードを確認したいのだ。


 俺はそこにいた一体を目掛けて、風のように駆け抜けた。


 この軽さをなんと表現すべきか。

 二頭立ての馬車に馬を四頭繋げたような感じというのが概ね正しい表現だろうか。


 俺は棍棒のフルスイングをそいつの頭に叩き込んで、一撃で決めた。


 基本的にオークはのろい。

 ただし、下の方の階層へいくと上級種が出るので、そいつらは格段に手強くなる。


「ふう、いや軽々といけちゃったなあ。

 お、さすがはオーク。

 一撃で2.1まで上がったか。


 戦えば戦うほど強くなって、さらにパワーが増して戦闘は有利になるのか。

 誰だよ、これが外れスキルだなんて言いやがった奴は」


 お蔭でえらい目に遭ったわ。


『レバレッジ一倍ではなくてレバレッジ・バージョン1.0』であったのだ。


 不親切なスキル名だなあ。

 これ、どこまでバージョンが上がるんだろうな。


 しかし、今はボッチなせいで、なかなか下の方までは降りられないから、これもそのうちにどこかで打ち止めになりそうだ。


 限界に達していなくても、ソロとしての活動限界が来てしまうのではないだろうか。


 とりあえず、そいつの魔石を引きずり出した。

 他の個体がやってくると危険なので、周囲への警戒は怠らない。


 このあたりがソロ冒険者の不利なところだ。


 パワーが上がっているので、オークの持つ、時には鋼の剣さえも弾き返す屈強な筋肉を、ちっぽけな解体用ナイフで軽々と引き裂けてしまう。


 作業自体は手慣れたものだった。


 そしてコボルトの屑魔石とは比べ物にもならない、人差し指の先ほどもある大きな黒光りする魔石をいただいた。


 これを手早く探り当てられるようになるのも新人の重要な仕事だ。

 もたもたしていると、しゃがんでいるところへ拳骨どころかブーツの蹴りが脇腹に飛んでくる。


 これ一個で銀貨五枚だから、今の俺にとっては結構な稼ぎになる。


 しかし、さすがに今までだったら一人でここへ来ようとは思わないだろう。

 丸々素人の新人冒険者がこいつ三体に囲まれたなんていったら!


 ブライアンはスパルタなので、初期の頃から俺には訓練で常に複数のオーク相手に戦わせていた。


 さすがに、ど新人の時に三体いたら転がって逃げ回ったな。

 そして動きで攪乱し、相手を強引に分断してから一体ずつ倒していったのだ。


 まだまったく慣れていない頃に執拗に三体から追い回された時は諦めて、ブライアン達の方へトレインしてみせた。


 後で思いっきりボコボコにされたけど、命あっての物種だった。

 それが当然のように命汚い真似もしたさ。


「貴様、間違っても他のパーティに対してこのような迷惑をかけるんじゃねえぞ。

 どれだけ賠償金を請求されると思っているんだ」


 ブライアン達がいてくれるのでなかったら、新人がとてもじゃないが一人では五階層ではやれない。


 ここはそういう階層であり、ど新人にとっては十分に遠征といってもいい階層であった。


 俺は安全マージンを取るために、自分を新人パーティ一つ相当の戦力としか見積もっていない。


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