03 モンスターが徘徊している
勇者様の居城を歩いていると、ときおり人外の存在が目に入ります。
「ごぉぉぉぉ!」
「ふしゅぅぅぅ!」
「ぐるるるるる!」
オブラートに包んだ表現をしてしまいましたが、ごまかしがきかなくなったのでぶっちゃけるとそれはモンスターです。
鼻息荒くしながら、人間である私達に敵意のこもった瞳を向けてきています。
「あのっ、勇者様。ときどき建物の中を徘徊しているあれは、何でしょう」
でも、モンスターだとは思いたくないので、否定したくない思いでアルト様に問いかけ。
「あはは、クリスティーゼ様、魔王城でも見ませんでしたか? あれはモンスターですよ。姫はお茶目なんですね」
お茶目でも何でもありません。
現実を直視したくなかったからあえて聞いたんですっ。
「どっ、どうしてモンスターが建物内に?」
「大丈夫ですよ姫。勇者である俺が常に一緒にいるので、襲われたりしません」
「そっ、そうなんですか」
聞きたいのはそう言う事じゃない。
にこやかに残酷な事をいう勇者様の心境が信じられない。
脱出がまた難しくなってしまった。
これって、あなたの傍を離れられないって事ですよね。
いつまで私を監視してるつもりなんですか。