後編
【ハイランド湾沖 深海調査艇ビーグル2】
「さーていよいよ光がない世界に突入だ。コーラとポップコーンの準備はいいか?」
コックピットのスピーカーからロジャーの声が響く。雑音混じりだが、この距離でこれだけ聞こえるなら十分だろうとサラは思った。流石最新鋭だけあって、ある程度の深さまでは通信が生きている。
ビーグル2はゆっくりと螺旋を描きながら深海へと降りていく。既に、太陽の光は届かない暗黒の世界。コックピットのアクリル越しに移るのは漆黒。雪のように舞っているのはプランクトンの死骸、マリンスノーだろう。
クレマンは持ってきたPCにヘッドホンを刺し、あの歌をまるで取り憑かれたかのように聞きながら操縦をしている。サラは、クレマンが音楽好きということは知っていたが、やはり異常な行為に思えた。しかし、操縦は安定しており、とくに危険は今のところないように思えた。
ときおり、目の前の暗闇にパッと光る物があらわれては消えた。発光プランクトンだろうか?まるで火花のように光るそれらは、連鎖するように辺りに広がっていく。
光の波がうねり、闇の中でオーロラのように揺らめく。さながらそれはショーのようにサラを楽しませた。サラはもう見慣れた光景だが、何度見ても感動する光景だった。
「サラ、少し気になるデータがある。さっきの歌、知り合いの研究者に極秘で送った。ああ、大丈夫だ信頼のおけるやつで外部に漏らすことは絶対にない。そいつは水棲無脊椎動物の専門家なんだがな、ある生物の鳴き声に似たパターンがあるそうだ」
とぎれとぎれになりつつもまだはっきりと聞こえるロジャーの声にサラが思案する。あの歌は彼女の専門である鯨偶蹄目つまりクジラやイルカといった種類の生物の鳴き声とは一致しなかった。
もちろん、海の中で声をコミュニケーション手段として用いているのはクジラやイルカだけではない。しかし、あれほど複雑かつスピーカーで拾えるほどの音量を出せる生物は現状クジラぐらいしか考えられなかった。
「彼曰くだ、コウモリダコの鳴き声に類似しているらしい」
「コウモリダコ? それって確か深海に生息する頭足類よね? 光を放つのは知っているけど鳴き声?」
「ああ。学名は【吸血イカ】。タコなのにイカとややこしいが、そもそも分類としてはイカとタコの祖先でな。深海に適応した姿で今でも謎が多い生物なんだが」
「そもそも鳴き声があるなんて初めて聞いたわ」
「ああ。最近の調査でどうやら光以外に鳴き声でコミュニケーションを取っている事が分かった。その鳴き声と類似性があるらしい。光届かない深海で、音を使うのは確かに合理的なんだ」
目の前の暗闇の世界。生物達は適応し様々な姿でこの一見すると死の世界で生きている。コウモリダコもその一種で、イカのような姿で赤黒い表皮に、触手が十本。触手はそれぞれが皮膜で繋がっており、まるでスカートを履いているような姿だ。大きな特徴は、頭部にある耳のようなヒレで、それを前後に動かし、泳いでいる。サラが初めてそれを見た時はアニメーションでみた空飛ぶゾウ、ダンボのようだと思った。
また、深海生物にしては珍しく視力が発達しており、光を放つ方法を多彩だった。触手や体表を光らせるだけではなく、墨に発光物質を混ぜ放出し外敵の目をくらませるといった行動も確認されている。
しかし、音? サラにはそれが違和感があった。
「ロジャー。仮にあの歌がコウモリダコが発していると仮定して、あの歌の音量から推定される大きさと既存のコウモリダコの発見報告と一致しないわ。せいぜい大きくても30cm程度の生物にあれほどの音を出せるとは思えないわ」
「そうなんだよ。2mは越える大きさでないと、理屈が合わない。だが、理論上は可能なんだ。俺もにわかに信じがたいがね」
「どういうこと?」
「それは――いや、ちょっと待て。どういうことだ?」
サラがロジャーの声を聞きながら、目の前の水深メーターを確認する。既に、ここは水深800m。およそ人智およばぬ光なき世界。ロジャーの声が途切れる。
「どうしたの?」
「ーーいや、嘘だ。こんなのありえない! サラ。すぐにクレマンを引っ叩いて戻ってこい!」
「どういうこと!?」
「Fuck、こんなデータ信じられるか!、サラ! ようやくあのウスノロ警察共からデータが来た! 行方不明と言われたダイバーの死体が見つかり、検死解剖の結果が来たが……ありえねえこんなの。どうやら共通点が見付かったそうだ」
「共通点?」
「脳の一部が変質していたそうだ」
「脳が?」
「ああ。特に、感情を司る部分が大きく変質……いやこう言おう、損傷、していると」
「感情?」
「理性と言い換えてもいい。それがぶっ壊れているんだ、どいつもこいつも」
「わけがわからないわ」
「とにかく、詳しい事はあとだ! すぐに帰ってこい!」
ロジャーに緊迫した声が不安を煽った。隣ではクレマンが歌に取り憑かれている。サラは、クレマンのヘッドホンを無理やり外した。
「何をする!?」
「ロジャーからの報告! 責任者である貴方も聞くべきよ!」
「報告がなんだ! もう少しで聞けるんだ!」
そこで初めて、いや、薄々気付いていた事実をサラは認めた。クレマンは狂いはじめていることを。
「貴方は何を言っているの!? ジャックを救う為にここまで来たのでしょ? でもやはり来るべきではなかったわ! あの歌は、危険よ!」
「危険? 何を馬鹿なことを。あれは、福音だよ」
クレマンの血走った目、恍惚の表情を見て、サラは彼も行方不明になったダイバーと同じだと気付いた。
スピーカーから途切れ途切れになったロジャーの声がコックピットに響く。
「サラ! あの歌は、撒き餌だ! 行っては――」
そこで、ブツリとロジャーの声は途切れた。クレマンの手が、スピーカーのスイッチから離れる。
「サラ。あの歌は、人類に与えられた赦しなんだ。君も聞きたまえ。人は、更に高次元に進化できるのだ」
今まで聞いたことないようなクレマンの声に、サラの肌が粟立つ。思考が現状に追い付かない。
「クレマン……貴方……」
サラが続きを言おうとした瞬間、スピーカーから音が発せられた。
ロジャーからの通信が切られ、その代わりに船外に付いている、水中マイクの拾う音が流れる。
「ああ! 神よ!」
クレマンの慟哭の叫びと共に、スピーカーから歌が流れ始めた。
それは、再生された音声データよりも遥かにクリアで、そして、おぞましい歌だった。
ガラスの牢獄に押し込められた、女の叫び、そんなイメージがサラの脳内に浮かんだ。
「聞いてはいけない!!!」
サラがそう叫びながら、耳を塞いだ。サラは潜水服のポケットにある耳栓を取り出し耳に嵌めた。それをクレマンは止めることなく、ただ、虚ろな表情のままアクリル板越しの深海を一心に見つめていた。
サラが、クレマンの耳を塞ごうと手を伸ばした。その時、視界に端に光と影が映った。
それは、まるで影絵のようだった。
ビーグル2の外、そこは、深海でありえないほどの光で満ちていた。その光を切り取るように、人影が見えた。
それがうねうねと踊りながらこちらへと接近している。
サラは、伸ばした手を中空で留めたまま、その滑稽な白黒映像に釘付けにされていた。
ああ、まるで昔の無声映画だ。サラは目の前の光景をそう感じた。
光の中、踊る人影が視認できるほどの距離に近づいた。
海中なので、分かりづらいが、どうやらかなりの速度で接近していたらしい。人影は見る見るうちに大きくなりそしてーービーグル2に激突した。
アクリル板にべたりと張り付いたソレはーー
「……!!! ジャック!!!」
サラが悲鳴の代わりに上げた声が、その答えだった。
それは、膨大な水圧で潰されたジャックの死体。
「ああ。君もまた導かれたのだな……ジャック……」
クレマンの羨望にも似た表情と声に、サラは気付かない。
「私もいこう……」
クレマンが、コックピットのコンソールへと手をのばす。そう、コックピット上部にある扉を開ければ、それで終わりなのだ。なんて簡単なのだろう。
クレマンにもはや理性など残ってはいなかった。ただ、あの歌の元へ。それしか考えらない。
彼は、持っていたPCを手放し、扉の開閉スイッチへと手を伸ばした。
その次の瞬間に、彼の意識は飛んだ。
「ハア……ハア……!」
クレマンが持っていたPCを奪い、本人の頭へと振り下ろしたサラが息を荒げた。
明らかにおかしい彼の行動を止めるにはそうするしかなかった。
白目を向いて倒れたクレマンの代わりに操縦桿を手に取ったサラの眼前、アクリル板越しのジャックの死体が、不意に離れた。
背を向けたジャックの死体に、赤黒い、何かが張り付いていた。
それは、ジャックの死体から離れると、浮上せんとするビーグル2の前に浮かんだ。
それは、全長2mほどのコウモリダコだった。ただ、それは、サラが知っていると姿とはかなり違っていた。異常に発達した頭部には大きなヒレがあり、20cmほどもある不気味で青い眼球で潜水調査艇を見つめていた。1m以上を越すスカートのような触手と皮膜がふわりと揺れている。
辺りが明るいのは、発光物質の含んだ墨を撒き散らしたからだろう。
「うそ……」
サラの呟きが漏れた。それは、彼女にとってありえない光景だった。そもそもコウモリダコは成長してもせいぜい30cmほどで、あれほどの大きさにはならないはずである。
「ありえない……」
サラは、上昇の準備を始めた。明らかに目の前の生物は危険だ。サラは、船外マイクのスイッチを切った。その後耳栓を外し、地上との通信をオンにした。
「ロジャー!!!」
「サラ! 無事か! いきなり途切れたぞ! 大丈夫か! どうなっている!」
「すぐに上昇するわ! ありえない、2mを越すコウモリダコがいるわ! 化物よ!」
「早くその場から離れろ! あの歌は絶対に聞くな! あれはただの音じゃない……あれはーー」
ロジャーの声に急かされるように、サラはビーグル2の上昇プログラムをスタートさせた。
まるで、それが分かっていたかのように、眼前の怪物はゆったりと触手を広げた。
それは、まるでラッパのような形状だった。
先ほどと比べ体積の数倍膨らんだ頭部が後ろになり、スカートのような触手と皮膜が外に向かうにつれ広がった。
「まさか!」
サラの呟きと同時に、その化物は異常に膨らんだ頭部が縮んだ。
次の瞬間、つんざくような音がビーグル2を襲った。
音とは、つまり波である。
特に水中では、空中とは違い、音は大きな力と成りえる。
波が大きければそれだけで、それは凶器となる。
その音波は、衝撃波を伴いビーグル2を揺らした。
咄嗟に耳を塞いだサラだったが、衝撃波に煽られたビーグル2が大きく回転する。
サラが回転によってかかるGに必死に抵抗しながら姿勢制御プログラムを実行した。
ビーグル2の各部にあるノズルから水が噴出され回転を抑え、徐々に回転が止まりつつあった。
サラがコンソールから顔を上げた。そこにはーー
光が薄れつつある薄暗闇に、無数のコウモリダコが群れをなし、こちらをただ、じっと見つめていた。
大きさはバラバラだった。2mを越す物もいれば、30cmほどの物もいた。
それらは、感情の映らない大きな青い瞳でただ、ビーグル2、いやその中のサラを見つめていた。
サラは、かつてないほどの恐怖を感じた。
ああーーまるで、原住民に囚われた開拓民のような気分。
さきほどの衝撃波によりエラーをビーグル2のメインシステムがいくつも吐き出すのを尻目に、サラはその光景から目を離せないでいた。
コウモリダコ達が一斉にさきほどの個体と同じ、ラッパ状に姿を変えた。そして、その頭部が膨らんでは縮みを繰り返していた。
無音の世界に、突如、歌が流れた。
エラーのせいだろうか? なぜか切ってあった船外マイクが、勝手にオンになった。
しかしマイクも壊れているのだろう、その歌はとぎれとぎれだったが、光景と相まってサラを魅了するには十分だった。
光の雲が漂う深海で奏でられる、シンフォニー。
ゆっくりと螺旋を描きながら上昇するビーグル2を見送るような葬送曲。
サラの目の前を、小型のイルカの群れが通り過ぎた。
目玉が飛び出し、腹と口から内臓を漏らしながらも下へと下へと泳ぐイルカ達。
それらに、一斉に喰らいつくコウモリダコを尻目に、ビーグル2は光の世界へと向かっていった。
☆☆☆
【聖パトリック病院 特別病室】
無音の室内に、クレマンが眠っていた。手術の麻酔がまだ残っているのだろうか、まだ意識はない。
その側に、サラが座っていた。
病室の窓の空は快晴。
ああ、今日はなんて良い日なのだろうか。サラは空を見ながら今までになく神に感謝していた。
病室の扉が開く。
「やあサラ。来ていたのかい」
「ロジャー。気になったからね」
ロジャーが、相変わらず、軽薄そうにサラにウインクをした。サラはなぜかそれが今日は嫌にならなかった。
「クレマンの手術、成功したんだろ?」
「ええ。脳の腫れていた部分を切除したそうよ」
「君は、大丈夫だったのかな?」
「私は大丈夫。なぜかしら」
ロジャーが椅子を取ると、サラの隣に置き、座った。
「君の報告にあったコウモリダコ、いや新種だろうね。それについていくつか分かったことがある。聞くかい?」
「ええ。対価は?」
「今夜一緒にディナーなんてどうだい? 臨時収入があってね」
「いいけど、シーフード、特にタコとイカはやめてよ」
「じゃあステーキにしようーーさて、例の新種、いや【ローレライ】は」
「ローレライ?」
「君が第一発見者だからね。ドイツ由来にしたのさ」
「嫌な名前」
サラはそういうとしかめっ面をロジャーに見せた。まだ、夢に見るあの光景。
「まずは、ダイバーの行方不明事件だが、ほぼ、【ローレライ】のせいだろう。あれは、おそらく、コウモリダコから進化した種なんだろうね。そもそもタコやイカといった頭足類は、脳が異常に発達している生物だ。寿命が短いせいで、認識されないが、長い種がいれば、あのような進化をしても不思議じゃない」
「一体何が原因なの?脳の異常は【ローレライ】のせい?」
「ああ。あのあと、脳科学研究の知り合いにあの歌の調査を依頼したんだ。もちろん、幾重にもフィルタリングをかけてね。そうしたら、驚くべき事実が分かった。あれには、一種の周波数が含まれていて、脳の一部を損傷させるそうだ」
「たかが音で? 信じられないわ」
「音響兵器って知らないか? 実際まだまだ運用の目処はたってないんだが、それに近いメカニズムだ。【ローレライ】は極めて高い知能を持っており、群体で行動している。そしてそれぞれで音を共鳴させ、あの歌を構成しているんだ。あの頭部に水を貯め、噴出する際の音を、あの触手と皮膜で反響させて広げるんだ。ホーンみたいなもんだ。それにより、生物、特に高度で複雑な脳を持っている者が影響を受ける」
「イルカや、クジラ……そして人間ね」
ロジャーは席を立つと、壁際に設置しているコーヒメーカーへと向かった。
「サラもコーヒーいるかい?ーーさて、その影響が厄介でね。脳の極めて重要な場所を損傷させるんだ。それによって何が感じなくなると思う?」
ロジャーが手際よくコーヒーを二杯分入れる。コーヒーの良い香りが部屋を包んだ。
「あの行動から察するに、恐怖かしら」
「ビンゴ! そう、恐怖がなくなるんだ。ただそれだけじゃあない。それだけではなく、あれは脳内物質を刺激する作用もあるんだ。つまり、ドラッグみたいなもんさ。また、あの歌が、無性に聞きたくなる」
ロジャーが入れたコーヒーをサラに手渡した。
「さて、恐怖がなくなり、理性が吹っ飛んだジャンキーが、起こす行動は?」
「また聞く為に動く、ね」
「そう。ダイバー達は、遊泳中にあの歌を聞いてしまい、脳を損傷。理性を失い、再び聞きたいが為だけに、深海に向かう。まさに【ローレライ】の思うつぼだ」
「私、上昇中にイルカの群れを見たわ。じゃあ彼等も」
「ああ。本来は、そうやってイルカやクジラを深海におびき寄せて餌にしているんだろうな」
「じゃあ、ジャックとクレマンも?」
「ああ。本来は水中で聞かないと効力はないはずなんだ。音ってのは水中ではかなりの影響力があるのは身をもって分かっただろ?ただ、あの二人は条件が悪かった。ジャックは、徹夜明けの状態で、クレマンは何度も繰り返しで聞いてしまったせいだ。脳が疲れている状態で聞く方が効果が出るそうだ。クレマンは、色々と抱えていたみたいだからな」
サラがゆっくりと両手で持った、コーヒーを飲んだ。苦い味が意識をクリアにする。クレマンは、確か絶対音感の持ち主だったはずだ。なるほど、より音の影響を受けやすかったのだろう。
「そう……じゃあ事件が起こる前のソナー異常は、やはりあの歌のせいなのね」
「ああ。そうだろうね。あれほどの音だ。ソナーに異常が出て当然だろう。おそらくだが、これまで表舞台に出てこなかったのは、生息域が限られていたからだろうな。それこそ光ささぬ深海でひっそりと暮らしていたのだろうが……ここ最近の気候変動が深海に影響を与えないわけがない。いや、逆かもしれないな、深海が変わり、地上が変わった」
「つまり?」
「これからも被害が出る可能性がある」
「タコバスターズでも深海に派遣する?」
「それを考えるのは上の仕事だ。ソナーの異常なんて軍が把握していても不思議じゃない。現に、こちらは気付いてないと思っているだろうが、既に軍関係者が病院の周りに張っている」
ロジャーが肩をすくめた。サラはゆっくりとコーヒーを見つめた。黒い水面があの深海を思わせた。
「ま、今はこんなところだな。しかし、【ローレライ】ね……音で人を操って死に向かわせるなんてまるでおとぎ話だ」
「人魚じゃなくてタコなのが皮肉だわ」
「深海は未知が潜むというが……やれやれ仕事が増えそうだ」
「私はもう二度と深海なんてごめんよ。タコなんて見たくないわ」
「そりゃそうだ」
サラはなんだか久々に笑えた気がした。
さて、クレマンの意識が戻ったら何を話そうか。
何より、今日はどれだけ良い肉とワインを頼んでロジャーを困らせようかを悩んでいた。
☆☆☆
【日本国 東京都 新宿 クラブ“アビス”】
新宿にとあるクラブがあった。会員限定で、有名なDJが密かに運営するクラブ。
スモークとライトが交差し、重低音がグラスを揺らす。
客が酒とドラッグが溺れる、社会の闇の底。
DJが虚ろな目でマイクにがなり立てた。
「今夜は、とっておきがあるんだ。聞いてくれ。曲名はーー」