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第38話 告白

平成が明日で終わりますが、もしこの主人公が現代日本に居たなら、システム改修のデスマーチ中だったでしょう……w

(大きな会社システムは事前の準備は怠らないがテストが間に合わない、小さな会社システムは対応が後手後手に回って元号の切り替えに間に合わない)

 善司とハルがお風呂から上がってリビングに行くと、ニーナとホーリから今日は一緒に眠りたいと申し出があった。それを快諾して、一度部屋に戻ってから来ると言った2人を待っていると、ドアを小さくノックする音が聞こえてきた。



「どうぞ、入ってきていいよ」


「「……しっ、失礼します」」



 2人は奴隷商から持ってきた寝巻きに着替えていて、肌着が透けそうな薄手のネグリジェを身に着けている。そして肌着も凝ったデザインのもので、大きな覚悟をして善司の部屋まで来たことが伺われた。



「2人ともベッドにおいで」


「「……はっ、はい」」



 ニーナとホーリはおずおずとベッドの上にあがり、緊張した顔で善司の方を見つめる。お互いに繋がれた手は強く握られていて、誰が見ても相当無理しているのが丸わかりだった。



「あー、その、なんだ。

 まずは落ち着いて話をしようか、俺も2人に聞きたい事があるし、ここを背もたれにして座ろう」


「……すっ、すいません、ちゃんと覚悟して来たんですけど」

「……扉の前まで来たら緊張してしまって」


「2人とも、こんな事は初めてなんだろ?」


「「(こくん)」」


「焦らなくても大丈夫だから、時間をかけてゆっくりと慣れていこう」



 ヘッドボードを背もたれにして2人を両隣に座らせ、掛け布団を腰のあたりまで引き上げる。善司が腰に手を回して引き寄せると少しだけ体を固くしたが、2人はそのままもたれかかるような姿勢になり、肩に頭を乗せて目をつぶっている。


 しばらくそのままの姿勢でいると、徐々に緊張が(やわ)らいで力が抜けてきたのが感じられた。



「落ち着いてきたか?」


「……はい、もう大丈夫です」

「……こうしているとすごく幸せです」


「こういった事は片方が頑張るだけじゃだめだから、お互いに気持ちを確かめ合いながらゆっくり進んでいこう」


「……やっぱりゼンジさんは優しいです」

「……私たちここに来てよかった」



 ニーナとホーリは頬を赤く染めて、少し泣きそうになった顔を見られないように、善司に抱きつくように密着している。



「今日一日過ごしてみてどうだった?」


「……こんなに楽しくて充実した一日は初めてでした」

「……イールちゃんやロールちゃんと話すのは楽しいし、ハルさんも優しくてご飯がすごく美味しい」


「そうだろ、ハルの料理はとても美味しんだよ。

 おかげで外食じゃ満足できなくなったし、毎日作ってくれるお弁当も楽しみなんだ」


「……ゼンジさんが奴隷商で言ってた事が良くわかりました」

「……あの料理を食べてしまうと、そう思ってしまうのも仕方ありませんね」



 すごくいい笑顔で嬉しそうに話す善司の顔を見て、ニーナとホーリの緊張もすっかりほぐれてくる。



「この家に来てからしっかり食べてくれているし大丈夫だと思ったんだけど、こうして改めて聞かせてもらえると安心できるよ」


「……それから、一緒にお買い物が出来たのがすごく嬉しかったです」

「……好きなものを買えるなんて初めてですし、宝物も出来ました」

「……ゼンジさんと一緒に歩いたり、手を繋いでもらったり」

「……よろず屋さんで抱きしめてもらえたのも嬉しかった」


「「……生涯忘れられない一日になりました」」


「そんなに喜んでくれたのなら、今日は出かけた甲斐があったな」



 体を横にして善司の胸元から覗き込むような姿勢で微笑んでいるニーナとホーリの頭を撫でると、2人は頬ずりをして甘えてくる。その姿は小動物のようでもあり、非常に愛らしいものだった。今まで甘えた事が無いと言っていた2人が、自然にこうした行為が出来るようになった変化に、善司の心は大きく満たされていく。


 同時に、これだけ自分に対して親愛をストレートに向けてくる2人を絶対に手放したくない、そんな気持ちも芽生えていた。



◇◆◇



 そのまま頭や背中を撫でたり抱きしめたり、甘やかな時間を過ごしていたが、善司はずっと2人に感じていたある疑問をぶつけてみる事にした。



「2人に変な事を聞いてもいいか?」


「……はい、何でしょうか」

「……ゼンジさんにならどんな事でもお答えしますよ」


「俺の勘違いかもしれないんだけど、もしかしたら2人はお互いの考えてる事がわかるんじゃないかと思ったんだ」


「「……っ、どうして、そんな事を?」」



 一瞬言葉が詰まったが、ニーナとホーリは緩んでいた表情を引き締めながら、善司の方を見上げる。



「時々お互いを見つめて確かめ合ったり、普通に話している時も必ず2人で視線を合わせてから、一拍置いて喋り始めるだろ?

 それを見ていると、言葉にしなくても感じるものがあるんじゃないかと思ったんだ」


「「・・・・・」」


「ゼンジさん、凄いです」

「お母さんも気づかなかったのに」


「やっぱりそうだったのか」


「こんな能力を持っている私たちが気持ち悪くないですか?」

「普通の人には出来ない事ですし怖くありませんか?」


「いや、別にそうは思わないよ」


「でも、影で何を言われてるかわからないんですよ」

「こうして話していても、裏では酷い事を言ってるかもしれません」


「今はそんな事をしていないのはわかるし、普段喋ってる時も内緒話をしてるんじゃなくて、お互いの気持ちを確かめあってる程度の意思疎通だと思ってるんだ。

 それにニーナとホーリは、理由も無しに人の事を悪く言ったりするなんて絶対しないと信じてるから、怖かったり気持ち悪かったりは無いかな」



 その言葉を聞いたニーナとホーリの瞳がうるみ始め、善司に覆いかぶさるように抱きついてきた。座っていた姿勢がずれて、そのまま押し倒されるような格好になってしまったが、涙を流し始めた2人を抱きしめて、頭や背中を優しく撫で続ける。



「名前をちゃんと呼んでくれるだけでも嬉しいのに」

「私たちの事を、こうやって見てくれる人がいるなんて」

「今まで生きてきて、こんなに嬉しかった事は無いです」

「ゼンジさんに出会えてよかった」


「俺もニーナとホーリに出会えて良かったよ」


「「ホントですか!」」


「イールやロールそしてハルが、2人と出会ってからとても楽しそうにしているのもあるんだけど、やっぱりこうして可愛い子に慕ってもらえるのは男としてすごく嬉しい」


「ゼンジさんに可愛いって言ってもらえた」

「胸の奥が暖かくなってドキドキする」



 ニーナとホーリはお互いの顔を見てうなずく、それは昨晩2人で部屋に戻ってから、ベッドで話していた事の結論が出たからだ。



「ゼンジさん、私たちはあなたの事が好きです」

「まだ誰かを愛したり愛されたりって良くわからないけど」


「「ゼンジさんの事を想う気持ちは誰にも負けません」」


「俺もニーナとホーリの事が、家族や子供としてじゃなく、女性として好きだ。

 俺自身も気づいてなかったけど、奴隷商で会った時に一目惚れしていたんだ。

 今では2人を誰にも渡したくないと思ってる」


「「嬉しい……ゼンジさん」」


「俺はハルと結婚しているし、イールやロールにも将来結婚して欲しいと言われてる。

 そんな男でも構わないか?」


「ハルさんやイールちゃんやロールちゃんと、同じ人を好きになれたのはすごく嬉しい」

「それに、3人からも自分の気持を素直に伝えるように言われたから」



 善司の部屋に来る前に、ニーナとホーリはハルから自分に遠慮しないで気持ちをぶつけるように言われていた。イールとロールにも昨夜、部屋に遊びに来た時に同じ事を言われている。2人は今まで知らなかった気持ちを確かめるために善司の部屋に来たが、それは明確に好きという形で固まっていた。


 そして善司は一日一緒に行動した後、こうして3人だけで話をしてみて、奴隷商で会った時すでに一目惚れしていた事に気づいた。最初は、その神秘的な雰囲気や、身の上話を聞いて同情してるのだと思っていた。しかし思い返してみると、2人の姿を目で追っていたり、ハルやその娘たちに抱くものと同じ独占欲が出てきた事で、それを自覚した。



「愛したり愛されたりというのは、自分たちの歩んでいける速度で、ゆっくりと身につけていこうな」


「「……はい」」



 そうして3つの影がゆっくりと近づき、そして一つに重なった。



◇◆◇



 互いの気持ちを確かめ合うような口づけを交わした後、改めてベッドの上で横になり、ニーナとホーリは腕枕をしてもらっている。嬉しそうに胸元に頬を擦り寄せて甘える2人の頭を、善司は優しく撫で続けていた。



「……誰かに甘えるっているのは、こんなに幸せな事だったんですね」

「……それにすごく安心できて、気持ちが落ち着きます」


「2人にはこれまで出来なかった事をいっぱい体験してもらいたいから、何でも遠慮せずに言ってみて欲しい」


「……じゃぁ、早速お願いがあります」

「……私たちにも、ハルさんやイールちゃんやロールちゃんみたいな話し方をして欲しいです」


「わかったよ。

 ニーナとホーリも敬語じゃなくても構わないぞ」


「……ゼンジさんは年上のすごく尊敬できる人ですから」

「……この家にある魔操器を双子でも使えるようにしたのは、全部ゼンジさんのおかげだって聞きましたし」


「こうやって話したり触れ合ったりしていても、他の人と何一つ変わることはないのに、魔操作だけ出来ないっていうのは絶対おかしいからな。

 そんな理不尽な仕組み(バグったシステム)は、どうしても受け入れられなかったんだよ」


「……やっぱりかっこいい」

「……それに素敵」



 2人は今まで体験した事のない熱を体の中に感じ、熱い吐息を吐きながら善司の腕に抱かれていた。



「……私たちからも質問していいですか?」

「……ゼンジさんの事が知りたいんです」


「あぁ、何でも聞いてくれ」


「……ゼンジさんは外国から来たと聞いたんですが、その国の事が知りたいです」

「……今まで出会った事のない不思議な感じの人だから、すごく興味があります」


「あー、その事か……

 実はな、外国と言ってるのは変に思われないための方便で、本当は別の世界から来たんだよ」


「……別の世界ってすごく遠いところですか?」

「……それとも、こことは別の大陸?」

「……でも、この大陸しか人が住めないって聞いた事があります」

「……氷に閉ざされた大陸があったり、砂ばかりで草や木も生えない不毛の大陸があるって言われてますね」


「そんな所じゃないんだ、文字通りこことはまったく違う世界から飛ばされてきたんだよ」



 そうして善司は地球の事や日本の事を、ニーナとホーリに聞かせていく。最初は何を言っているのか良くわからない感じの2人だったが、次第にこの世界とはまったく違う生活様式や価値観に興味を持ち始め、次々と善司に質問を投げかけていった。



「……そんな世界があるなんて凄いです」

「……私たちも行ってみたい」


「驚いただろ」


「……でもゼンジさんが、こうして私たち双子と向き合ってくれる理由がわかりました」

「……それにハルさんと、あんなに愛し合っている理由も」


「双子が魔操作できなかったのは、魔操という技術が生まれた時に、検証の出来る環境が無かったからだろうし、双子を産んだ女性が呪われてるとか不幸になるなんて言うのは、過去にたまたまそんな事があった程度の迷信だと思ってるよ」


「……そこまで言い切ってしまえるのは、この国に住む人たちには驚きしか感じられないと思います」

「……でもゼンジさんはこうして、暖かくて幸せな家庭を作っていますから、どんな事でも信じられます」


「俺の事を信じてくれるのは嬉しいけど、盲信はしないようにな。

 俺だって間違う事はあるし、俺に言われたからって全て従う必要はない。

 間違ってる時は違うって言って欲しいし、嫌な事ははっきり言って欲しい」


「「……はい」」



 ニーナとホーリには今までこんな事を言ってくれる人は居なかった、母親は口答えせずに自分に従えと言う人だったし、奴隷商でも主人には逆らうなと言われていた。


 ずっと不思議な雰囲気と考え方を持っている人だと思っていたが、さっきの話を聞いてその全てが納得できた。それを知ってしまった今は、少し残っていたわだかまりや不安も消えて、ニーナとホーリに残されたものは、善司とこの先もずっと生きていきたいという気持ちだけだった。


 そして2人は少し真面目な顔をして話し始める。



「……私たちの全てをゼンジさんに捧げたいです」

「……だから、これからもずっと一緒に居られる(あかし)が欲しいです」


「わかったよ、これから誓いの儀式を始めよう。

 2人とも、ベッドの上に座ってもらえるか」


「「……はい」」



 全員で起き上がり向かい合わせに座ると、善司はその耳元で何かを(ささや)く。


 それを聞いた2人は、顔を真っ赤にしながら嬉しそうな笑顔を浮かべ、そのまま同時に抱きついた。




 そうして3人で過ごす初めての夜が更けていった。


昔ちょっとした思考実験をしたことがあって、例えば一日の長さが地球の1.2倍あったら、15歳でも地球時間だと18歳になるはずという(笑)


一日が48時間の異世界なら9歳でも合法じゃないか!(ぁ

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◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

新しく連載も始めています

いきなりドラゴニュートの少女の父親になってしまった主人公が
強化チートを使いながら気ままに旅する物語
色彩魔法

【完結作】
異世界転移に巻き込まれた主人公が
魔法回路という技術の改造チートで冒険活動をする物語
回路魔法
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