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パープルタウンの人々  作者: むらさき毒きのこ原作 秋の桜子著
9/10

それでは、私は失礼いたしやす

「各選手、一斉にスタートしました!」


 いよいよ、きのこ少年のプライドをかけた大一番が始まった!敗北すれば、彼の呼び名は


「マシュゥ、マシュゥのお部屋は、マッシュルーム」


 となるのだ、多感な年齢の少年からしたら、とんでもない事、なので、全身全霊をかけての戦いだった。


「今年のレースは、波乱の展開の予想がしますよ、赤井さん、どう思われますか?」


 ロック氏が送り、ふきのとう氏が映像化している小型のスクリーン映像を時なに見やりながら、ハニー氏は、解説を始める。


 屋上から出来るだけ、広範囲に眺めつつ、言葉を発していた彼は、赤井氏が答えようとしたとき、それを遮る大声を出す。


「きのこ君が!『あの街路樹消えろ!』」


 きのこ少年とメモリーBが、激しいデットヒートを展開し、コースを微妙にズレ、車道と歩道の境目の街路樹に、接触しそうになったのだ。


 シュォン!『その街路樹』が即座に消滅をする。


「ラーメン店、黄色いハンカチ店の前一帯!」


 即座に赤井氏が、的確な場所を伝える。そしてその声は、事務局に届く、取る途端慌ただしくなる。


 えー!街路樹?の下には植え込みあった所?と慌てる海村氏、まてまて、えーとここだろうと商店街の事なら何でも知っている、鳴海氏が地図を指し示す。


「あるある、確かケヤキので下には紫陽花があった」


 え、えーと、えーととサラサラと覚えている消滅された場所を、思い出しながら、スケッチを取る海村氏。


 激しいレース展開なのだろうか、次々に流れてくるハニー氏の『消えろ!』が続々入ってくる。


「コーナー、花壇消えろ!コース内のすべての縁石消えろ!パン屋消えろ!角の花屋のワゴンきえろ!」


「交番前の花壇、ベーカリーポッポや、フラワーショップ、冬の華」


 赤井氏のフォロー、後の任務の為に体力を温存すべく、よしよしと、それを眺めているかませ氏、


 縁石と花壇のフォトならばある、とふきのとう氏が出してくる。


 的確に場所を伝える鳴海氏、街のスケッチを描き続ける海村氏……怒涛の事務局だった。


 ×××××


 風を切りと表現するより、風を起こしながら猛スピードでレース展開真っ最中の、先頭を行く、訳ありの少年少女。


 伴走しているロック氏は、落ち着け二人と声をかけるが、通じない……これは危険か、と判断した彼は、今野氏に、知らせを風に乗せ送る。


 屋上にざわと吹く風が、そこに居合わせた者にそれを伝える。


「コーナーの観客とゴール周辺一帯、術かけに行ってきます!」


 駆け出して行く彼……


「幅寄せしてくるな、メモリーちゃん!」


「マシュゥも、さっきしたやん!」


「勝負に勝つなら、僕は何でもやるもん!」


 熱くなってる二人は、ブレーキの存在はすでに忘れているらしい、コースは極力直線なのだが、このままゴールに突っ込むと、とんでもない事になりそうだった。


  「二人とも!落ち着け!ゴール迄もう少しだ!少しスピード落として!」


 ×××××


「もうそろそろ、ゴールだね、リーリエ、ゴールテープの準備するよ」


 (まお)氏が、愛妻リーリエに触れれば、半分に分かれる加工がされている、白いテープを取り出すと、その片方を彼女にわたす。


「どうやら、きのこ君か、メモリーちゃんね」


 スクリーンに写し出される映像を眺めながら、指定の位置に立つ二人。


 そしてのんびり待っていると、今野氏が路地裏の道を慌てて駆けて、ここに表れた。そして観客の皆に、ここから離れるか、もふもふになるか、大声で聞く。


「どうしたの、今野さん」


 テープ!無しなし!危ない!突っ込んでくるから!あの二人が、で皆さん逃げるか、どうしますか?と切迫感溢れて聞く。


「もふもふで!お願いしまーす!」


 そこに居合わせた観客達が、嬉しそうに声をあげる。実はこのレースで、もふもふになることが、一種の名物になっているのだ!


 もう!変わり者ばかりだなぁ、と今野氏は観客を『もふもふぬいぐるみ』に変身させると、猫さんも、逃げる!と声をかけると離れた場所へと、ダッシュする。


 慌てて追う夫婦。もちろんしっかりと手を取っているのは、言うまでもない。


 そこに激しいデットヒートを繰り広げ、文字通り、突っ込んで来る二人。


「ゴールだから、ブレーキかけろぉー!」


 ロック氏がせめてもと、向かい風を構築すると彼等に浴びせる。


 ドオッ!と二人並びに伴走している、ロック氏にも流れてくる。


「ダメかー!」


 それに影響を受けたのは、構築した本人のみ、二人は関係なく進む!そうして……


「ゴール!ってー!止まってー!」


 離れた位置から猫氏の声が上がる、が、制止もむなしく、そのまま二回戦に突入する二人、


 そのまま疾風怒濤の如く去って行った……


 ×××××


 おでんやコスモスでは、この結果をどうしますかと、ヤンヤ、ヤンヤと大騒ぎになっていた。


「どんなこんなも、勝負はついてますんで……」


 アイアンが、旅支度の装いで店のおくから出てきた。手にはずっしりとした、ボストンバッグを下げている。


 はぁ?勝負がついてる?二回戦に入ってるだろう!と詰め寄る異形のお客に、静かに掛け表を見せる。


 そこには、一枠から順次書いてあるのだが、最後にちいさく『最終枠決着つかず』に秋の桜子の名前が書かれていたのだ!


「それでは皆さん、これにて終わりとさせていただきやす……」


 唖然としているお客に、涼しげな笑顔を、向け、深々と一礼すると、彼は出発の時間が来てやすんで……と地下へとつながる道を降りて行った。


 掛け金総取り、だったのは言うまでもない。それにかけていたのは、彼の妻ただ一人だったのだから……



 そんな事など、知らぬ二人は激しいレースを、続けていた。


「マシュゥになれやぁ!」


「きのこ!きのこって呼ぶんやぁ!」


 きのこ君……メモリBに毒されてきてるかも知れない……


 そして二人の決着は、神のみぞ知るのだった。

 















 























次で最終話でーす。

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