表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パープルタウンの人々  作者: むらさき毒きのこ原作 秋の桜子著
5/10

名を変わりし二人のストーリー後編

 メールが一件入る『古城ロックサイクリング』店の経営者『古城ロック』氏はそれを開いた。


『今夜 商店街の清掃作業のため、巡回を頼みます 鳴海』


 それは、この商店街を取りまとめている、商工会会長である『割烹居酒屋 鳴海』の経営者『鳴海』氏からの連絡だった。


 清掃作業ねぇ、何があったのかな?


 古城ロック氏はそれを読むと、何処か嬉々とした様子で、少々早いが店を閉めた。


 そしてある特殊な材質で作られた『メモリーカード』を取り出して来ると、上着のポケットに無造作にいれ、愛車にヒラリとまたがり、風を切り店を後にする……


 ×××××


「おーとなは!はっきり言わん」


「はっきりって、何のこと?メモリーちゃん」


「あっははあ?何の事かなぁ?さぁ!それよりもクッキー食べたら?リーリエが作ったんだよ」


 マスターの(まお)氏が、二人に菓子皿に盛った焼き菓子を勧める。彼はメモリーBを監視するために、二人のそばにいる。


『イベール ミネット』の店内で不服を述べつつ、じゅるじゅると果物のスムージーを飲んでいるメモリーB、


 きのこ少年も、同じくそれを飲みながらやはり気になるのか、勧められたクッキーをつまむと彼女に問いかける。


 何でもないよおよぉ!きのこ君、メモリーちゃんもお菓子食べて!食べて!と彼女の口をふさごうと、頑張る猫氏。


 言えるわけ無いだろう、メモリーちゃん……猫さん頼む、きのこ君をまもってくれと、その場に居合わす大人達は、念を送っている。



 ――「大人の話があるから、ちょっとこれ飲んでてね!」


 とリーリエに、大人の常套句を使われた事に、彼女は不服らしい。店の奥でぶちぶち文句を言っている。


 まぁまぁ、メモリーちゃん、こっちのは今度お店に出す新製品だから、味見してよと頑張る夫を眺めつつ『大人の話』を切り出すリーリエ



「それで、ハニーさん、探してるのは私?それとも彼?」


「いや、二人共の感じがしたな」


 そう、見つかったか、とため息をつくリーリエ、偶然出会い道々話を聞いていた海村氏は、どうするかと聞いてきた。


「どうもこうも……知っての通り、私立場も地位も棄てて、彼と逃げたのよね、今思えばきちんと『下茂塚組』を壊滅させとけば良かったのだけど、皆に迷惑はかけられない、今夜中に出ていくわ……」


 この街好きだけど、迷惑はかけられない。と寂し気に微笑む。


「どうして、出ていく事無いだろう?悪い事をしたわけでも無いのに」


 ハニー氏が問いかける。


「ここではね、以前は色々手を染めた事もあるのよ。まぁ家業を継いだのが、運のつきなのだけど」


 そう、『リーリエ』本名『下茂塚ユリ』氏は、別の街の夜の世界を牛耳る、その道の女総代を務めていたお方。グループトップのお人だったのだ。


 あー、時間が無かったから逃げたのがミスだったと、落ち込む様子のリーリエ


 ……ん?どうしたんだ?何があったのか?


 チラと聞こえてきた話の内容と、愛しの妻の儚げな姿を目にした猫氏は、相手をしていた二人から目を離した。


 その隙をつき、メモリーBは面白くないので、行動に移す。ぴょこんときのこ少年の側へと可愛く寄ると、彼の耳元へささやく。


 内容は、もちろん彼女の知る範囲の『Hな大人の世界』そして聞くきのこ少年は『未知なる世界』なのは言うまでもない。


 ヒソヒソと小悪魔が天使を陥れるように、話を進めて行くメモリーB。そしてそれに気づかぬ大人達は、切なる問題の話を進めていた。


「出るって、行き先は?それに上手く逃げても、追われる限りは、落ち着かないのでは?」


 海村氏がそう言うと、ではどうするの?奴等は説得は通用しない、力が全てだから望むものは奪いとる!そういう『世界』なのよ、と答えるリーリエ。


「ならば『清掃』すればいい、会長には連絡したから、もう動いてくれてると思う」


 落ち込むリーリエに、この店の専属歌手である、ハニー氏がにこやかに声をかけた。それに、職場が無くなるのは困るからね、と言葉を足す。


「清掃って、ご迷惑かけられない、ハニーさん、職場ならこのお店を、退職金がわりに貰ってくれたら……」


「おおおー!そんなことするのぉー!」


 リーリエが全言わぬ内に、覆い被さる様にきのこ少年の声がする。


 しまった、忘れてた、と満足そうな様子の小悪魔に目を向ける猫氏。


 こうしてきのこ君は、少しだけ、大人の世界を知ったのでした。


 ×××××


 ――そしてその頃、宵闇の商店街を今宵の『清掃』作業の為に、古城ロック氏は颯爽と商店街を愛車で、情報収集の為に風を切りながら駆け抜けていた。


 ふん、紛れてるね『余所者』清掃対象者ね。見る現実を胸にしまった、特殊なそれに記憶させて行く……


「へー!面白くなりそう!ではフォトショップへと行きますか!」


 楽しいパーティーがはじまる予感、不敵な笑顔で、そう言葉を風に乗せると、彼は目的地へと向かう。



『神谷ネコ丸氏』そして彼らのかつての主を探す、うろんな男達の姿は、迫る夜に事を起こすのか、密かに数が増えつつあった。


 今宵、何かが始まるパープルタウン、その時は近い。







































評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ