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パープルタウンの人々  作者: むらさき毒きのこ原作 秋の桜子著
4/10

名を変わりし二人のストーリー中編

 夕方が近い時間、緩やかにその店は夜の装いに姿を変えて行く。


『ピアノバー イベール ミネット』昼間は『カフェ 冬の子猫』として営業している。


 優雅に、ショパンの雨だれを、演奏しているのは、この店のマダムである、リーリエ、その傍らでグランドピアノに、もたれながら耳を傾けるのは、彼女の夫であるマスターの(まお)


 彼は、目を閉じその演奏を聞いている、時折甘い視線を交わし会う、相思相愛の二人……


 そしてやがて彼は、彼女と出会った時の事を思い出していた。


 ×××××


「これに懲りたら、人のオンナに手をだすな!ホスト野郎が!」


 一人の輩が、誠実そうな一人の青年を吊し上げ、身ぐるみ剥がすと路地裏のゴミ箱へと突き飛ばした。


 無様に転ぶ彼。慌てて近づこうとする、若い女性に、輩は、さぁ行くぞ!と、いやがる彼女を引っ立てて、その場を離れた。



 ――どうしてこうなるの、御先祖様のばか野郎……


 薄れ行く意識の中で、彼は思った。ホストじゃねーし、ばか野郎……


 彼は思った。どうしてこうなるの、道を聞いたから、答えただけで、何で、あのねーちゃん付いてくるんだよ。ツレの男置いて、何で付いてくるんだよ。


 コンビニしかり、バーガーショップしかり、何で女子が、寄って来るのだよ、嬉しいけど、トラブルもやってくるから、困るんだよ……それに一人でいい、俺は……


 何故に、彼は無意識の内に女性が集まるのか、

 それにはきちんとした理由があった、


 それは彼の御先祖様だ。彼の御先祖様は、どんな女性も落とせるオーラを放つ『伝説のホスト 紫薔薇(パープルローズ)』別名『紫の君』と呼ばれし男だったのだ。


『神谷ネコ丸』この名を持つ、一族の男性は多かれ少なかれ、そのオーラを持って生まれて来ると言われている。


 しかしそれは、彼にとって迷惑千万、ホストを職業としていない、子孫の彼は訳のわからない男女のトラブルに巻き込まれ、この様な状態に、巻き込まれるのは、日常茶飯事だからだ。


 ……しとしとと、冷たい雨が降ってきた。


 あちこち痛い、野郎に身ぐるみはがされた、一文無しだ、もうどうでもいいや、と投げやりになった彼は、そのまま眠りについた。



 ………「ふーん、彼がそうなの?何だか、ボロにヤられてるけど……」


 女の声?何だろう?寝てる間にどっかに運ばれた?頭がガンガンする中で、彼はうっすらと目を開けた。


「姉御、たしかにそうです。ようやく探し当てましたよ。街中の路地裏全てを探し回り、ようやくお探し致しました」


 黒服の男達が、彼等のトップと思われる女性と話をしている。


「ここは、何処ですか」


 赤いベルベットのじゅうたんの上で、転がっているままに、彼は状況を把握しようと、恐る恐る声を上げた。その様子日常茶飯事気がついた男達の一人が、しゃがみこみ彼に声をかける。


「ここは『志茂塚組』が経営している『ホストクラブ ラ ローズ ヴィオレッド」の支配人室だ、神谷ネコ丸君だね。ようやく出会えて嬉しいよ」


 気が付けば、身体に毛布を掛けられていたらしく、それごと手を貸し起こしてくれる、黒服の男は自負は店の支配人と言った。


 ……何だろう?お水のお姉さんには、極力近づかない様にしている『志茂塚組』って『やー様』ではなかったか?


「あ、あのそうですけど、会えて良かったと、は、あの、その」


 しどろもどろになりながら、どういうことか聞く、かつての『神谷ネコ丸』氏、そんな彼に支配人と名乗る男は、


「君の御先祖、この職業では神とされてるお方なのだよ。君の事も調べたよ。素質は充分、ここで是非に!働いて貰いたいのだけどね、君を『助けた』私達の恩に報いてねぇ」


 とやんわりと脅してくる支配人、それに同調する従業員と思われる此方も黒服メンバー達。


「え、働くって、その、どういう意味ですかね、その……」


 まさか、ホストか?御先祖様と同じ道?聞くところによると、御先祖様、モテすぎて同僚の妬みを受け、日々半裸でゴミ箱って聞いてるのだけど……


 神谷ネコ丸氏は、しばし考え出来ることなら、穏便にお断りしたいのだが、それは出来ないであろう取り巻く空気に、途方にくれたその時、先程の女性の声がかかった。


「お前達、かたぎの兄さん何だから、もう少し良いようがあるでしょう?」



 ×××××



「あの時、君が助けてくれた」


 (まお)氏こと『神谷ネコ丸』はピアノを弾く妻に声をかけた。なあに?昔の事を思い出したの?と手を止めずに、聞く彼女。


 甘い空気が二人を包み、彼は彼女の背へと移動すると、優しく抱き締める。音が止み、ふふと笑う彼女。


 幸せな二人の空間、さらにあまーい時を迎えようとしたその時、店のドアベルが、カランと音てながら、開くと共に、二人を目にした子供の声が二人を襲う。


「こんばんはぁー!何してるのぉ?」


「マシュゥ、聞くのは野暮!まだ何もしてない 」


「きのこだよ!メモリーちゃん、じゃぁ今から二人は、何かするの?」


「うん、する、雪崩れ込みと私はみた!」


 雪崩れ込み?って、何するの?と入り口で、興味津々に二人を見ながら、メモリーBに聞くきのこ少年。


 うぁあおう!メモリーちゃん、知ってるの?と慌てる、イラストレーター海村氏。


 きのこ君、知らなくて良いよう、まだ知らなくてって、メモリーちゃん、知ってるの?と彼もそう聞くハニー氏、二人に対して美少女メモリーBは、


「フフフ!大人の世界の!バッチリ、あんなこと、こんなこと、知ってる」


 と胸をはり、宣言をする。大人の世界?あんなことって、なに?とお年頃なのか、知りたいきのこ君。


 静かだった店内が、にわかに騒がしくなり、それはこれからの事を暗示しているかの様子………


 しかしそれはまだ誰も知らぬ少し先の話。今どうするのか、対応するべき問題は、


 ねーねー!猫さんと、リーリエさんは、何しようとしてたの?メモリーちゃんが言ってた事なの?とあどけなく聞いてくる少年の事。


 その質問に対し、どう答えようか、頭を悩ます夫婦の姿がそこにあった。























































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