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ゲッカビジン  作者: 織坂一
73/75

73.手首に巻かれたそれの意味 前編


 死んだら、残された家族や友人、恋人の嘆きは当人に届く事はないが、「嘆く」と言う事だけは判る。

 ただその嘆きが一体誰の為にあるのか判らないだけであって、嘆きは等しく嘆きだ。ならばこの言葉もあながち間違いではないだろう。

 

 そう、佐伯はとうとう求めてしまった。

妹を傷つけた茶髪の悪魔を傍らに、その死の先にある生と幸福を求めてしまった。

この白く細い結束バンドはその互いを縛り付ける為の約束だ。

「……仮令世界が終わったとしても、生き続けて下さいね。」

 僕の中で、と佐伯は心内でそう付け足した。


 そして、この夜と滑稽な喜劇も幕を終幕であるのもまた確かだ。


 壊れた女は夢を見ている

ここがどこだか判らない。だが、自分の目の前には煙の様なもしくは靄の様な物が自分の視界を覆っている。そしてその向こうには誰かが見える。

 長い黒髪の少女は一体名前はなんと言ったか、だが女にとっては大事な人だった気がする。そして”世界”は暗転する。


――青い海。奥には赤い点が浮かんでいる。まるで斑点の様に。そしてそれは海の青色に溶けていく。

「綺麗……」

 そう呟くと、何故か佐伯の顔がすぐ側まであって、彼は愛おしそうに微笑んで口をパクパクさせているが声は聞こえない。だが、言っている事は確かに判った。

 そうですね、本当に綺麗だ。

「僕達の最期に似つかわないぐらいに。」

「――!」

 

 こうして壊れた女は目を覚ます。すると意識は既にあって、勝手に身体は動いていた。

「? どうかしました?」

「佐伯さん……?」

 ふと掌に変な温かみを感じたから目を移すと、自然と2人は手を繋いでいた。何時からだったかは覚えていない。


どうも、織坂一です。


いやいやここまで来ましたか!さて終わりは近いですよ皆さん!(今ここで言うべき事じゃない…)

さてさてこの杏癒が見ていた夢ですが、これもまたラストで「おお!」とさせる伏線の為、この話もあまり深い所まで話せませんね。


ですが途中で購入した結束バンド…これもキーポイントです。物語の裏側というかこの文章を見た瞬間「佐伯、お前こうする為に買ったんか!?」という反応にはもちろんなると思いますが、忘れてはいけないのが今回のタイトルですよ。

「手首に巻かれたそれの意味 “前編”」ですから後編ももちろんあります。


果たしてこの結束バンド……一体何に使うのかは次回をお楽しみに。

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