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ゲッカビジン  作者: 織坂一
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7.蠢くざわめき 中編1

「あ、そう言えば名前はなんて言えばいいですか?」

「ん、そうだなぁ……(めぐる)でいいよ、翔で。君はなんと呼べばいい?」

「私の事は愛花って呼んで下さい。にしても翔だなって珍しい名前ですね。」

「だろうねぇ」


翔とはたった今適当に付けた名前だが、時々本名を隠す時に杏癒はこの名前で通していた。

杏癒が気にしているコンプレックスを見事に付いてくる様子に腹は立つが事実なのでこう怒った所で仕方無い。

どうせ今夜一晩だけの相手、玩具に過ぎないのだから。軽く俯いていると横にいる愛花は「ねぇねぇ」と声を掛けてきた。

「お腹空きません?」

「あー……少しは。」

「だったらどっか食べに行きません?私、奢りますから。」

「否、やっぱいいって……」

何故こうも断ったのか1つだけ理由があった。

どうみてもこの愛花という娘は杏癒より歳下だ。

どうも歳下に食事などを奢らせるのは何だか嫌なので極力避けたいが、まぁ望むのなら仕方無いかと溜息を吐いては苦笑して呟く。

「私が奢るんならそれでいいけど」

「え?いいんですかぁ?」

そう言って腕を掴んでは擦り寄る相手を見ては杏癒はこの時彼女が確信犯だと言う事に気付く。最初は出来る所まで押して、一線引いては下がると相手を試す。これで相手が自分にとって良い答えを出したのならこうして寄ってくる。とても判り易い構図に杏癒は心内で盛大に溜息を吐く。こんな事では更に虚しくなるだけだ、と。ならばあのイタイ友人と遊んでいた方がマシであっただろうが、今後悔しても遅いと同時にまた自分に言い聞かせる。

 どうせ一晩だけの相手だ、と。


「んぐ……」

「食べづらいんですかぁ?」

あの後2人が入ったのは偶々あったファーストフード店で、愛花も文句は言わなかった為、二丁目を抜けずにその儘歌舞伎町寄りのこの店で軽く夕飯を済ませていた。今は頼んだダブルチーズバーガーを杏癒が上手く食べれずに愛花がどこか苦笑しながら心配している最中だった。暫し無言が続き、なんとかダブルチーズバーガーを食べ終え、紙ナプキンで口端を拭おうとしたその時に愛花が身を乗り出しては杏癒の口端を拭う。

「翔さん子供みたい」

「よく言われるよ」

そう苦笑で返すと、何故か互いに笑う。そんな中、杏癒は「あ」と声を漏らす。

「そう言えば愛花ちゃんは帰り大丈夫なの?まだ短大生だって聞いたけど。」

ここに来るまで2人はぽつぽつと身の上話をしながら店に入り、注文を待っていた時も話は弾み、杏癒は色んな事を愛花から聞いていた。

彼女は短大生で実は既に同居人もおり、レズビアンである事は自覚しているのだが、親には言ったら縁を切られる可能性があるからいえないし、友人にも理解者がおらず、そのストレス発散にこうして時々イベントに参加しては色んな人に声を掛けていると言う。

確かに今日はいいかもしれないが、明日は木曜日で今は午後9時。当然明日も学校であろう。

であればあまり遅くまで遊び歩いて同居人の方にも心配は掛けさせない方がいいだろう。



どうも、織坂一です。

愛花が登場して話が進みましたがなんか嫌な流れになってきました。

そもそもこの愛花ちゃんはほぼ捨て駒のキャラみたいな感じです。しかし杏癒も思った通り「所詮、一晩限りの相手だ」というのは杏癒自身がおかしな恋愛をしている所為でもあるのですが。


の前にこの「ゲッカビジン」というのは昨今増えてきたネット恋愛の不安定さを逆手に取らせて書いたもので、「こんな恋愛もあるのでは?」という訳で、実際に「儚さ、残酷さ」を現す為にもこうして新宿二丁目でのイベントも使わせていただいています。(ちなみにイベントが開かれることや様子は全て実際にある事です)


まぁ嫌な感じになってきましたが、これはそのフェイクです。

この先、愛花がどう動くかでこの先がどうなるか決まってきます。なので次回もお楽しみに。

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