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ゲッカビジン  作者: 織坂一
64/75

64.難


 最早互いが何を考えているかなんて判らない。だけれども2人して思う。

 またこうして2人で呑めて良かった、と。


「え?」

 あれから2時間程店に居座って、適当に酒を酌み交わして、マスターから「酔っ払いは帰った帰った」と店を追い出されると、杏癒はマイに誕生日を迎えた挨お祝いの言葉を一言伝えては店を出る。


 ただ、2人して会わなかった間に起こったデートの話は一切しなかった。

するとすれば仕事の愚痴だとか、主に杏癒の今書いてる小説の話だとかの話ばかり。そして店を追い出された後の帰り道の別れ際で、佐伯はこう言った。

「ですから、その掌編小説は電子書籍で販売されてるんですよね?是非とも読みたくて。」


 そう。最近掌編小説を書いていると言えば、佐伯はそれを読みたいと言い出したのだ。

しかし読書家である佐伯はまだ杏癒が書いた本を1冊足りとも読んだ事はないのだが。そう伝えると、杏癒はデビュー作を持ってくると言ったが、それと並行して読みたいと言う。


「是非ともその文面での柴田さんの死生観や愛の定義を読みたいので、帰ったら早速買って読んでみるとします。嗚呼、それと……。」

「デビュー作の方ですよね?それもまた明日持っていきますよ。」

 明日。突然ではあるが、こうして本を読む側と書く側で話をしたいと言ったのは佐伯の方。

まぁこれも今日大分酔っ払った2人には話せない様な話題なのだが。

「じゃあ、明日の午後2時辺りにまた井の頭公園で構いませんか?」

「ええ、判りました。ではお休みなさい。」


 そう言っては2人は別々の帰路を辿るが、杏癒は今日の出来事で完全にこの蟠りが腑に落ちたとは言えなかった。



どうも、織坂一です。


なんとも今回は微妙な始まり方で変なオチで申し訳ありませんでした。

本当は前回でくっきりさせるべきはずだったのですが、これも今回の話の重要なポイントだったので……。


この佐伯の「本が読みたい」発言は何故こうも出たのかが数話後に判るのですが、泥沼に足を突っ込んでますので、一難去ってまた一難と言った具合で最初の二行が必要になった訳です。


さてこんな言い訳はさておき、そろそろ8章も大詰め!向かうはラストなので、どうか次回もお楽しみに。

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