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ゲッカビジン  作者: 織坂一
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61.再会


 いかがなものか――とこのバーテンダーであり店長の男は思った。


 前まで自分の店の常連だった女が突然ある日理解者と言う名目で男を連れてきた。

話を聞いてみれば本当に十年来程付き合ってるぐらいに親密な仲の様にも思えるその2人はどうやらお互いに腹の探り合いをしている様で、見ているこちらがもどかしかった。


 恋人ではなく婚約者が2人にはいるらしいが、どんな事情であれ、そんな薄っぺらい事情を掲げた他所の人間より、この2人が結ばれた方が幸せだと人生の経験論が語る。


 しかし何があったのかある日突然2人ともこの店には来なくなった。2人に何かあったとは彼女らが来なくなって1週間した辺りから悟ってはいたのだが、やはりそれは本当で、今こうして久々にここにきた2人はまた親密そうに酒を酌み交わしている。


 ただ何時もと違うのはカウンター席ではなく、本当に奥の方のテーブル席で、他の客に紛れて何か話しこんでいるが、今日は親密というより、どこか変だった。

一体なにがあったのやら。否、何もなくともこんな店で従業員を無視して話す時点で最早いやらしい。

そう思いながら、カウンターで静かにグラスを拭く作業へと再び取り掛かった。


 正直、杏癒の足取りは重かった。

通い慣れた筈の道がまるで迷路の様に思える。それこそ果てのない迷宮の様に。

けれどもそこには――店のドアを開けた瞬間に迷宮の案内人はもう既にそこにいた。

「いらっしゃい、杏癒ちゃん。随分と久しぶりだねぇ、元気してた?」

「う、うん。元気してたよ。今日はなんだか賑やかだね。」

「そりゃあね。今日はマイちゃんの誕生日だからマイちゃんに惚れてる人達ばっか。後で杏癒ちゃんも一言言ってあげたら?それと、あそこ。」


 そう言ってマスターは奥のテーブルの方を指指すと、そこには1人静かに酒を呑むサラリーマンの姿が見える。そう、あのシルエットは間違いなくあの人だ。

「1時間前ぐらいから、杏癒ちゃんと約束してるからって来たんだよ。取り敢えず早く行っておいで。」

「う、うん。」

 急かされた為、深呼吸をする暇もなく、足を踏み出して席に向かうも、やはり言葉が出ない。

そう黙っていれば佐伯が立ち上がる。

「お久しぶりです、柴田さん。急な呼び出し失礼しました。さ、座って下さい。」



どうも、織坂一です。


ここからは第8章で、事態は急速に動きます。

なので見やすい為にも慎重にやっていきますが、まだまだ長いのでどうかお付き合い下さい。


さてさて今回はまぁ再会と言う事で何も重い事はありませんが、実はこれは修正してあるんですね。

提出した原稿の本文では店に赴く足取りが重い男の正体と迷路の様だという比喩は佐伯自身にありました。

つまり、佐伯に会うのは足取りが重いし、迷路の様なというのは佐伯の心情を察しての事に表現させて貰ったのですが、やはりここは緊張感を持たす為に足取りが重いのは、久々にマスター達に顔を合わせて前の様に笑っていたのを思い出すのが辛いから…と修正しているんですね。迷路というのはこのバー自体を示しています。


折角マスターがあれだけ上手い切り出しをしたので、雰囲気重視という事で、今回は佐伯も杏癒の本心もまるっきり無視の前夜です。


なので少し判りづらいですが、どちらにせよ、解釈は読者の皆様にお任せ致します。

さて次から語らいですが果たしてどうなるのかは次回のお楽しみに。

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