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ゲッカビジン  作者: 織坂一
49/75

49.君になんか迷う夢をみてる


 違う、と思ってはもう何枚目になるか判らない便箋をゴミ箱へと放り投げる。

指輪と最悪もし指に嵌められなかったら首にでも下げて欲しいとチェーンを購入して渡す物は全部揃えたし、後は何かと考えたら手紙であった。


 記念日には毎月メッセージを送っている杏癒だが、せめて残るのならば直筆で想いを綴るのも悪くないと思ってシンプルなチェック柄の便箋を購入し、早速書いてみるもこれは案外大変な大事業だった。

 

 既に明後日にはもう渋谷で落ち合ってデートをしようと言う約束を取り付けてしまったので、余計である。

字が汚いとか、こうじゃないと試行錯誤して既に30分は過ぎている。

 杏癒は小説家ではあるが、詩人ではない。だから上手い事を何1つとして書けないのだ。

せめてこれが小説であれば、とでも思うが、流石に小説を送りつけるのは恥ずかしいし職業上の延長線めいていて嫌だった。


「はぁ……」

 仕方無い、と思ってはドイツ語の辞書を取り出す。

詩も小説も駄目なのであれば、ここはもういっそ散文を書くしかないと腹を据える。また気取ってる様に見えてしまうかもしれないが、毎月送る記念日を祝うメッセージに対し何時も喜んでくれているので、きっとこれも喜んでくれるだろうと自分に言い聞かせる。


 ただ、後でもう1枚別に翻訳の紙を潜ませないとな、と心内で呟いては書き始める。


 ――拝啓、愛しの貴女へ。永遠に貴女を愛する私が綴りたいのは感謝と貴女への愛。

永久不変はないけれども、ないなら作り出せばいい。不変と言う言葉は嫌いだが、それでも私は愛せる分だけ貴女を愛します。


「あー……もう。」

 これを書いて更に自分に嫌気が射してくる。

 やはり自分は詩人にはなれないな、と文句を呟きながら。



どうも、織坂一です。


今回は杏癒パートですが、彼女もようやくデートに入る下準備に入りましたね。

もうご存じの通り、杏癒はかなりなロマンチストであり、ナルシストな部分があるので非常に色々こじらせてます。(美月の事件然り)


しかし彼女も一応ウブなので、一言で言えばヘタレな旦那です。なので嫁さんに尻に敷かれてるタイプですが、まぁこの後はどうなるかお楽しみに。


……ちなみに今回のタイトルは終盤での伏線なので覚えておくと判りやすいかも?

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