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ゲッカビジン  作者: 織坂一
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47.幸せの裏に潜む影


 夜、と言っても正確にはまだ6時前だ。夕餉はどうやら7時以降らしく、それまでどうするかと考える必要など無かった。

ただ、ぽつりぽつりと互いの事を話し合っていて、いつの間にかテーブルで向き合う形ではなく、何故か佐伯は肩に寄り添う美穂を支えていた。そんな時だった。

「ねぇ、温泉はどうしましょう?一応温泉目当てでこの宿を選んだんだけど。」

「なら入らないと損ですね、まだ夕食まで時間はありそうなので入ってきますか?」

「そうね。そうしましょ」

「なら準備でも……」

「ねぇ、依人さん。折角だから混浴にでも行かない?」

「え?」


 美穂の突然の言葉に佐伯は一度固まると、顔を赤くしては思わず美穂から距離を取ってしまう。その様子を見ては美穂はくすくすと笑う。

「冗談よ。流石に初めての旅行でそんなに焦る必要もないし、この先依人さんが幸せにしてくれるんでしょう?」


 そう言われると数時間前に自分が言った言葉を思い出す。

――これからお付き合いして行く上で僕は僕なりに貴女を幸せにしますから、と。

 ならばどこにも焦る必要などない。結局1人恥かいた佐伯は咳払いをしては俯いては言う。

「……はい。」


 そう言って入った温泉は格別であった。佐伯は温泉などには全く無知であるが、確かテレビでは疲労回復と精神安定に酷く効くと言う。

 確かにここから見える紅葉は未だ赤くないとは言え、その黄色と赤のグラデーションが酷く美しかった。そしてここから見える街並みもまた荒んだ佐伯の心を落ち着かせた。


 最早自分と美穂の付き合いはネットではなく、こうしてリアルで付き合えるのだ。

ゆくゆく関係が良くなれば親にも紹介など出来るだろうし、今日1日彼女と過ごして見てガラリ、と彼女の印象が変わった。


 何せ出会うまでどこかお固くて気の強い感じが漂う女性で、佐伯も話が合うからと言うちっぽけな理由から惹かれあったものの、それだけは変わらなかったが、実際に会ってみればその差はあまりにも酷かった。

決して悪い意味ではなく、いい意味で、だ。


 行動力があるのは確かに変わらないが、そんな中で小さな気配りを忘れないと言うのは昨今の若い人で見る事はあまりない。

美穂も同じく同年齢な為、それは尚更。そして甘えてきた時の彼女の態度と香りがどうしても忘れられそうにない。

「結婚、かぁ……。」

今の今まで忘れていたが、自分達は今まで多少の齟齬はあったものの恋人同士ではなく、婚約者なのだ。であれば結婚という視野は大きく広がる筈だ、と1人佐伯は心内で頷いた。


 ふぅ、と一息吐く。

ああ、これだけ幸せだったのは何時以来だっただろう?そう考えている時だった。

「佐伯さん」

 聞き覚えのある声 そしてもう2度と耳にしたくないと思ったその声に思わず意識を取り戻しては、バッ、と周りを見渡すが、周りには誰もいない。


どうも、織坂一です。


今回から佐伯パートではありますが、ちょっと事情が事情な為、長くなりますね……。だって旅行だもの。

しかし今回はタイトルの通り、正に「幸せの裏に潜む影」ですね。


ぶっちゃけ、杏癒のアドバイスがなければ佐伯はあのまま女々しい男だった為、どうしても婚約者である美穂と過ごしていても仲の修復の起因となった杏癒は切り離せません。あまりにもここの所は自分の外道っぷりが表に出てますね……。


次はちょっと杏癒パートも入ってしまうと思いますが、まだまだ4つの恋は展開中なので、次回をお楽しみに。

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