表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲッカビジン  作者: 織坂一
42/75

42.2人の幕


「いいです。全てを貴女の口から聞けたので満足しましたから、今回の事は警察には言いません。貴女が重要参考人として呼ばれない様に僕が尽力しましょう。」

「……どうして?」


 スッ、と杏癒の頬に一筋の涙が伝う。

 そして弱々しい声でぽつりと呟いた。

「どうしてですか?私は全て捨ててここに来たって言うのにどうして光を見せるんですか?貴方は私が憎くないんですか?」

「憎いですよ、正直警察に突き出してさっさと貴女の事なんて忘れてしまいたいぐらいに。……でも何故こう言ってしまうのか自分でも判らない。だから一言だけ取引きを受け入れて下さい。」

「取引き……?」


 すると佐伯は最後に杏癒に精一杯に無理に作った笑顔を一瞬だけ見せて

「もう2度と僕の目の前に現れないで下さい。本当に貴女と一緒にいると僕はおかしくなる。……でも1つだけ我儘を言うならば、もう1度あの店でもう一杯貴女と呑みたかった。では。」

そう言っては最後、ただ杏癒に見せた物は酷く寂しい背中だった。


「……これで、良かった……?」

 誰も居ない場所で杏癒は小さく呟く

全ての罪と罵倒を受け入れる事を覚悟していたのならば理解者である佐伯を失う事さえ覚悟していた。

 こうして別れを告げられる事も想定内だ。

なのに何故こんなに胸が痛んで、今にも呼吸を忘れてしまうぐらいに苦しいのか。

「嫌だなぁ……本当に。」

 思わず自分の愚かさに笑ってしまう。

 自分が勘違いしていたたった1つの事。

 あの佐伯依人と言う人が優しいなんていう幻想を抱いて本当に馬鹿馬鹿しいと思う。

あの人が自分に情けをかけたのは理解者故だったからだ。痛いぐらいに気持ちが判るから理解者としてかけた最後の情け。

 決して優しさなんかではない。

「馬鹿みたい」

呆気ない一言は今頬を撫でた風と共に消えた。


どうも、織坂一です。


ようやく杏癒と佐伯の話に幕がおりました。

佐伯の方は結構前から杏癒と一緒にいると、自分がおかしくなるのは薄々自分でも勘づいていたので、まぁこういう幕引きも必要かな?と


では次からはどうなるのか?と思いますが、また佐伯の独白から次の話に繋がって行きます。

なのでまたまた次回をお楽しみに。


この作品を読んで評価の他にも何かありましたら、感想など是非!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ