40.哄笑
佐伯の言葉を聞いては思わず杏癒の口から笑いが漏れる。
そして風船が弾けたかの様にその場に哄笑だけが響いた。
「判ってるんじゃないですか、やっぱ!これが笑わずにいられないでしょう!?貴方は私が妹さんを襲った犯人だと確信してる!だったらそう切り出せばいいのに、そんなに冷静でいられる自信は貴方にはないでしょう!?」
「貴女は……」
ついに杏癒が本性を現す
目的の為ならば手段は問わず、それと引換えの代償も今ここで捨てて、全ての責任を負うことさえ躊躇わなかった。
「貴女という人は……っ!」
最早佐伯も怒りを隠せなくなった。
確証も得た、そして妹が言っていた茶髪の悪魔はその儘自分の前で笑っている。
「何故です?貴女と言う人が自分の弊害を削除してまで何をしたいのですか!?」
佐伯の慟哭を聞いては、ピタリと笑い声は止む。そして次に杏癒から出た言葉はあまりにも非情すぎた言葉だった。
「言いましたよね?私。アイツに手を出す奴には……って。貴方は根っからの善人だし、その思いやりを掲げている以上私の考えなどそれこそ犯罪者のソレと変わらないでしょう?でも柴田杏癒という女はこう言う女なんですよ。例え彼女が喜ばなくとも、たった2人でいる為に。それだけの為に手を汚す……既に人間として手遅れなんですよ、色々と。ですが」
「……何ですか?」
「でも、佐伯さんの優しさに感謝しますよ私は。だって本当に憎かったら私が犯人だと重要参考人として警察に差し出せばいい。それをしなかったのは自惚れたくないですけど、少しでも私を信じていてくれてたんですよね?貴方の理解者である柴田杏癒はこんな人間じゃない、って。だからこうして怒りを押し殺しても今こうしてる……本当に不器用な人ですよ、佐伯さん貴方は。」
一瞬佐伯は戸惑った
この女は何を言っているのか?と
先程まで正に神話にでも出てくる様な悪魔の本性を持った女が何故自分の内側の話をしているのか?
何故判っているのか?すると杏癒は今度は哄笑ではなく小さく笑う。
涙を溢しながら。
どうも、織坂一です。
完全に杏癒のターンですが、正直私もこのシーンを書いていて不快感で一杯でした。(色んな意味で楽しかったのもありますが)
後、後々に判ってきますが、杏癒はかなりの勘違い女です。
佐伯を「優しい」と言っていますが、彼も中々エゲつない事をしている人間ですし、偏屈的なので優しい人とは程遠いのですが、恐らく杏癒にとっては優しい…つまりは都合のいい男とも取れますが違うのですね、これが。
このシーンを書いた時、ここまで杏癒がおかしいのは婚約者への一方的な愛情であって、明らかに自分の独善です。
しかし泣いているという事は彼女も彼女なりに佐伯との関係を終わらせたくない一心ですが、これもまた自分勝手な行動ですが……。
最初このゲッカビジンは綺麗なスタンスでいこうかと思ったのですが、書いているうちに泥臭くなっていく一方だったので、もう自分でも開き直って、泥臭い重い話でいこう!という諦めの声がしばしば。
ではこの後杏癒は一体どうなるのか?佐伯との仲はどうなるのか次回をお楽しみに。




